■連載の第八回です。前回は「選択前提とは何か」をお話ししました。「選択前提」とは選択に論理的に先行する条件のことで、さらに「選択領域」と「選択チャンス」と「選択能力」に分けられました。それぞれ不自由とは何かを考えると理解しやすいと言いました。
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さきごろ、朝日文庫(朝日新聞)から、『美しき少年の理由なき自殺』の文庫改訂版がでました。
最近のネット自殺を詳細に分析した新しい章が追加されていますので、ご一読ください。
あと、最新の「マル激トーク・オン・デマンド」は、鈴木宗男衆議院議員を招いてトークしました。
なかなか興味深い展開になっておりますので、ご覧ください。
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■連載の第六回ですが、前回までに「社会システム」概念を理解するの必要な知識をお話
ししました。第一回は「社会とは何か」、第二回は「一般理論とは何か」、第三回は「シ
ステムとは何か」、第四回は「秩序とは何か」、第五回は「社会システムとは何か」です。
■全体を復習します。「社会」とは私たちのコミュニケーションを浸す暗黙の非自然的な
前提の総体です。それを明るみに出すのが社会学ですが、中でも「一般理論」は、特定の
文脈に縛られないよう、できるだけ多様な主題を、できるだけ限定された形式で扱います。
■社会学の一般理論として有力なのは「社会システム」理論です。「システム」とは複数
の要素が互いに同一性のための前提を供給し合うループです。多細胞生物の個体が死ぬと
臓器や細胞も死滅するように、全体の同一性維持なくして部分の同一性維持はありません。
■同一性を「秩序」と言い換えられますが、あるマクロ状態に含まれる「ミクロ状態の違
いによって区別された場合の数=複雑性」が小さく、存在確率の低い状態です。システム
は、要素間の交互的条件づけという内部メカニズムの、永続的作動で、秩序を維持します。
■「社会システム」は要素や関係の同一性は、物理的記述によっては与えられません。火
星人が初めて野球を観察する場合、物理的記述を重ねても、意味を知らないので野球の記
述に至れません。社会システムの意味や関係の同一性は、意味によって与えられるのです。
■正確に言うと、社会システムの秩序定義に必要な、マクロ状態に含まれる「ミクロ状態
の違いによって区別された場合の数」は、恣意的な示差性・二重の選択性・否定性保持と
いった意味の機能が与える「選び直し」の可能性を前提に、初めて数えることができます。
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■連載の第五回です。前回は「秩序とは何か」でした。秩序とは、複雑性が相対的に低い状態でした。複雑性とは、与えられたマクロ状態に含まれる、ミクロ状態の違いによって区別された場合の数です。秩序とは、場合の数が少なくて生起確率の低い状態のことです。
■色だけ違う白玉と黒玉を十個ずつ入れた瓶をシェイクしたとき、遠くから見てグレーに見えるように混ざったマクロ状態と、上に白玉、下に黒玉ばかり集まったマクロ状態では、後者が秩序立っています。そこに含まれる場合の数が少なく、生起確率が低いからです。
■日常語では、進化した生物のように込み入った構造をもつ秩序を複雑だと言います。これは記述に必要な情報量のことで、システム理論では複合性に当たります。複合性の高い(日常語では複雑な)秩序ほど、場合の数が少なくて生起確率が低いので、複雑性は低い。
■社会学は定常システム概念を採用しますが、無限波及的均衡が秩序を構成する均衡システムと違い、定常システムは要素間の交互的条件づけという内部メカニズムの永続的作動で、確率論的にありそうもない状態を維持します。内部的作動による秩序維持と言います。
■定常システムは、内部的作動を永続させることで、システムと環境との間の複雑性の落差──環境よりも複雑性の低い状態──の維持という課題に応えます。内部的作動による境界の維持というダイナミズムに注目するところが、定常システム概念の認識利得でした。
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■社会学の基礎概念を説明する連載も、第四回を迎えました。前回は「システムとは何か」を説明しました。システムとは、一定の環境の下で、複数の要素が互いに他の要素の同一性のための前提を供給しあうところに成立するループ(の網)のことでした。
■こうした概念化によって、環境に開かれることで内部的に閉じたシステム、あるいは、環境に開かれることで上方ならびに下方に開かれたシステム、さらには、システムの全体的作動があって初めて同一性を維持できる部品、といった観念が与えられました。
■この種のシステム概念は、ロボットと違って「一度バラして組み立て直すと元通り動く」ということのない生物有機体を記述する目的で、70年代以降に洗練されました。以前のシステム概念は、太陽系を要素間の均衡として記述するような、質点力学的な枠組でした。
■古い機械論的な枠組を均衡システム理論、新しい有機体論的な枠組を定常システム理論と言います。前者は、初期状態の設定以降は外部とエネルギーや物質の出入りがなくなる孤立系の状態を、フィードバックを通じた無限波及の結果として記述するものでした。
■後者は、対流や流体の渦のように、外部とエネルギーや物質の出入りがある中で相互依存する要素からなる全体の同一性が保たれるような、非孤立系の秩序を記述します。前者を採用する経済学と違って、社会学は後者すなわち定常システム理論を採用するのでした。
■さて、秩序を「無限波及の落ち着き先」という観念と互換的に用いる(ゆえに秩序概念に固有の負荷がない)均衡システム理論と違い、定常システム理論では今まで無定義で使って来た秩序概念自体が問題化します。そこでは統計熱力学的な秩序概念が用いられます。
■前回予告したように、定常システム概念と統計熱力学的な秩序概念を同時に理解して初めて、70年代以降の社会学が、定常システム理論に依拠することの認識利得を、正しく理解することができます。そこで今回は「秩序とは何か」を分かりやすくお話しいたします。
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