MIYADAI.com Blog

MIYADAI.com Blog
12345678910111213141516171819202122232425262728293031

Written

モダンフェイズ・システムズのウェブサイトはこちら

白装束報道の背後にあるアーキテクチャーに注目せよ!

投稿者:charlie
投稿日時:2003-05-16 - 15:20:00
カテゴリー:お仕事で書いた文章 - トラックバック(0)
■今回付録CD-ROMに収録した「丸激」(1)は5月3日にアップロードしたもの 。前半は白
装束集団・パナウェーブ研究所について。後半は4月30日に私が証人出廷した松文館猥褻
裁判について。後半は私のホームページ(2)に譲り、前半について紹介する。


【情報ハレーションに要注意】
■七年間キャラバンを続けて来ていた白装束集団が突如脚光を浴びた。きっかけは、この
集団と、タマちゃん捕獲を企図した「タマちゃんを思う会」との関係を報じた『週刊文春』
の記事。以降何でもありの取材合戦となった。
■収録番組以降に得た情報を補足する。警察庁は、昨年の香川県鉄塔倒壊事件との関連や、
白装束集団に某教団の信者が複数潜り込んでいることから、この集団に注目して来た。某
教団が北朝鮮との関連を深めているのが背景だ。
■対北朝鮮関係が微妙になったとき、国民の目を逸らす撹乱行動がなされる可能性がある
ということらしい。警察庁との関係が深い『文春』だから、今回のリークの背後に「タマ
ちゃんを契機に表沙汰に」との警察庁の意思が働いていると見るのが自然だ。
■ところが「メディア狂想曲」で事が大きくなりすぎ、公正証書原本不実記載なる事実上
の「別件」で全国一斉捜査に入らざるを得なくなった、というのが関係筋の見方。だが皮
肉にも「メディア狂想曲」で警察庁の危惧の意味が分かりやすくなった。
■実際「メディア狂想曲」によるハレーションで、個人情報保護法案や有事関連法案や出
会い系サイト法案といった、本来国民の注目が最も集るべき問題が見事に飛んだからだ。
それこそが警察庁の狙いかと疑いたくなるほどだ(笑)。
■実は、情報から人々の目を逸らせるべく情報を伏せる古典的戦略に代わって、最近注目
されているのが別情報の集中豪雨でハレーションを起こす戦略なのだ。今回のイラク戦争
で米国が従軍記者を数百人規模で認めたのも同じだ。
■ベトナム戦争時に戦場からの報道が厭戦気分を招いたとの反省から、湾岸戦争では政府
が情報チャンネルを絞って情報パッケージ化を狙った。だが情報飢餓感が政府批判に結び
ついた反省から、今回「従軍記者戦略」が採られた。
■狙いは三つ。第一に兵と同じ釜の飯を喰わせて連帯意識を醸成。反軍的報道の動機を削
ぐ(アメ)。第二に情報漏洩などが記者自身の命に関わることを周知。反軍的報道の動機
を削ぐ(ムチ)。第三にこれらバイアスの下での情報洪水でハレーションを起こす。
■第三点については、メディアにスピード(ライブ性)を競わせてデプス(分析の深さ)
を抑止する戦術が採られた。スピードへの関心はデプスへの関心を覆い隠す。まさにハレー
ション。私たちは時にはスピードへの関心を抑制すべきだということだ。
■レッシグを思い出そう。威嚇的命令ではなくアーキテクチャーを使ったコントロールこ
そが今日的だと彼は言う。人々に自分は自由だと思わせながら、最終的にはシステム設計
者の思い通りに操る方法だ。これに抗う力を持たねばならない。

【レイヤーの深さと関係妄想】
■さて旧オウムは毒ガス攻撃を受けているとコスモクリーナーを設置した。パナウェーブ
は電磁波に脅かされていると白装束を纏った。共通して「目に見えず偏在するもの」の脅
える。社会からの全域的離脱を目指す「脱社会的」宗教(カルト)の特徴だ。
■毒ガスだ、スカラー波だといった科学アイテムに言及する点も共通する。ラエリアンの
持ち出すクローンを含め、科学アイテムを引き金に拡がる関係妄想が現代的カルトの依り
代になる。拙著で述べたが(3)高度技術社会に伴うブラックボックス化が背景にある。
■レッシグは前述のアーキテククチャーをレイヤー概念で表示した。コンテンツの下にコー
ドのレイヤー。コードのレイヤーの下に電子工学的レイヤー。コンテンツレベルで自由な
人間のごく一部しかコードレベルで自由でなく、…以下同様。
■レイヤーの存在は(制御する人/される人の分化は)不可避だ。だがレイヤーの深すぎ
るシステムの不透明さは、それがもたらす便益がいかに大きかろうと一定確率で必ずこの
種の関係妄想をもたらし、一部が必ず脱社会的宗教の形を取る。
■前回、グローバライゼーションを背景にエネルギー安全保障の観点から、そしてシステ
ムの社会的コスト意識を高める観点から、レイヤーを深くし過ぎないEU的な戦略を語っ
た。ある種の関係妄想を抑止する観点からも、同じ戦略を語れるということだ。

1)ビデオニュース・ネットワーク(http://www.videonews.com/)。
2)ミヤダイ・ドットコム(http://www.miyadai.com/)の「message from
Miyadai」の頁。
3)『終わりなき日常を生きろ』ちくま文庫。