衆議院青少年問題に関する特別委員会のための配布資料
みなさん、おはようございます。
本日(5月8日)これから、衆議院の参考人質疑に出席してまいります。
テーマは、出会い系サイト規制法案(通称)についてです。
以下に、当日配布資料をアップロードしておきます。
それでは。
2003.05.08
衆議院青少年問題に関する特別委員会のための配布資料
東京都立大学人文学部助教授
社会学博士(東京大学)
宮台真司
1)分かりにくい
(1)「“出会い系サイト”1の範囲」が分かりにくい。
・メッセージ取り次ぎ型でなく、単純BBSでも書き込み次第では出会い系に。
・“出会い系”になりえない書き込み可能サイトが存在しないという過剰な包括性。
(2)「未成年者を加罰する2法理」が分かりにくい。保護対象への加罰は法理として矛盾。
・国連の「子供の権利委員会」の18歳未満売買春禁止の勧告理由を再確認。
・売買春合法化、青少年3の性行為合法化にも拘らず、青少年売買春が禁止される理由。
・交渉力の未熟・問題解決能力の未熟・高額対償ゆえの異常行為の反復、の防止。
・すなわち「青少年の健全な試行錯誤に必要な最低限の尊厳を保護する」という法理。
2)誤用・濫用の危険
(1)「なりすまし」によるでっち上げなどで個人情報が当局にすべて把捉される可能性
・児童を誘引する書き込みを電話番号やメールアドレスと共にアップロードする等。
・簡単なでっち上げで検証令状で過去から未来にわたる位置情報が把捉される可能性。
・政治家にとってとりわけ危険。この法律を許容する政治家に塁が及ぶ可能性あり。
(2)「なりすまし」によるでっち上げなどでサイト潰しが行われる可能性
・単に捜査対象となるだけでウェブサイトにとって大きな打撃
・でっち上げでサイト参加者の個人情報が当局に筒抜けになる可能性。
3)有効性に疑問
(1)規制によって別の手段が選ばれるだけで終わる可能性
・テレクラ⇒NTT伝言⇒ダイヤルQ2(伝言・ツーショット)⇒出会い系サイト、の流れ
・「街頭ナンパ」「中高生置屋」「テレクラ・伝言・ツーショット」が復活し、雑誌特集化。
(2)簡単に抜け穴を作れる可能性
・「27歳!」といった暗号化(!マークは、マイナス10歳を意味)
・クローズドなツーショット・チャットへの移行(すでに始まっている)。
(3)有効性に疑義があるのに、誤用・濫用の危険が大きいというアンバランス。
・最小化措置(目的達成のための手段最小化)という近代法の原則に抵触する可能性。
(4)有効性に疑問があるとして法律が拡大される危険
・ログの残らない「テレクラ・伝言・ツーショット」に網をかけるべく盗聴手法の導入など。
【注】
1)インターネット異性紹介事業者。第2条によれば、「異性交際を希望する者の求めに応じ、その異性交際に,ついての情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態においてこれに伝達し、かつ当該情報をの伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業」
2)第6条(児童に関わる誘引の規制)ならびに第16条(第6条に関する罰則)
3)性交合意年齢(日本の刑法では13歳)に達し、かつ18歳未満(日本では児童福祉法の保護対象)の者。青少年相手の買春は、性交合意年齢未満を相手とする買春(性虐待)とは別の法理が提唱されている。
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