戦略なき対米協調で足元を見られる日本──三層の知恵で巻き直せ
【外交の本義は「高値売り」にあり】
■日米関係を考える場合、初級・中級・上級の三層があります。まず初級から。日本の安全保障にとって米国は重要だと言われますが、米国にとっても日本が不可欠です。日本という拠点なくして米国の国際戦略はあり得ません。外交の本義とは、相手に足元を見られず、自らの振舞いを高く売ること。なのに「米国なしでやっていけない」「米国に見放されたら大変」とホザく自称右が溢れます。愛国者の風上にも置けない輩です。米国や中国が、良い国か、信頼できる国か、は別にして、米国に対して中国カードを、中国に対して米国カードを切れるようにして、自分の選択を「高値売り」する。それが外交の初歩です。
【対米追従に本来存在した「含み」】
■中級は歴史編。日米安全保障体制の根幹をなす安保条約は、敗戦後、乏しい国力を経済復興に傾注すべく、米国に基地を貸与する代わりに本土防衛を約束させる吉田茂の戦略から生まれます。冷戦体制深刻化を背景に、米国は48年以降、日本に再軍備を求めます。米国の言うがままでは屠られるので、米国が与えてくれた憲法を逆手に取って、再軍備を拒否。そのままでは本土防衛が手薄になるので基地を餌に本土防衛を確約させようと。しかし当時の外交交渉の拙劣さゆえに双務性が実現できず、片務条約になります。今でも米国は本土防衛を確約しているとは言えず、守るかどうかは日本次第という態度を貫徹しています。だから日本は「思いやり予算」や「日米地位協定での主権剥奪」という屈辱に甘んじています。
■吉田茂の戦略の本懐は「今は恥を忍ぶ」というもの。(1)経済復興が急務で、かつ(2)冷戦体制がある限りでのものだということです。国力を回復し、冷戦が終われば、安保は役割を終え、自立が課題になるとの「含み」がありました。ちなみに冷戦下では、米国の覇権追求エゴと、西側諸国を共産主義から守る利他行動が一致するのです。
■吉田の本懐を継承したのは田中角栄まで。角栄は高度経済成長達成後に誕生した最初の首相です。彼がロッキード疑獄で「刺され」た後、恐怖心もあり、対米追従は「含み」を欠いたベタなものになります。地位協定にしろ安保見直しにしろ「米国が許すはずがない」「お殿様が望むはずがない」とホザくヘタレの自主規制が横行します。小泉に至って対米追従は更に戦略を欠いたものになり下がります。足元を見られているから自衛隊派遣も当然視され、米国に恩を売れません。英国議会で追求されたブレア首相に「小泉の方が腰巾着だ」と嘲笑される始末。戦略的オプションを欠いた国は、外交的主権を行使していると言えません。主権の実質をなすフリーハンド維持に腐心せず、ダルマ状態を放置する輩が、保守を名乗るアホさに、赤面します。
【追従するなら尚更米国を徹底研究せよ】
■最後は上級。米国や中国のように、重要な戦略的パートナーたり得る相手との外交では、相手の徹底研究が必要です。例えば米国の近代主義はアソシエーション主義(トックビル主義)という特殊なもの。地域社会を含めたあらゆる集団は目的を同じくする者の集まりで、米国社会にはそうしたアソシエーション(結社)が多数存在する、これが民主主義の要だ、との発想です。
■共通のプラットフォームを踏まえた上で、各人の目的に基づいて自由に結社を作り、多様な社会を営む。でもこれは「プラットフォームを踏まえない者、敵を同じくできない者を抹殺せよ」という発想と表裏一体です。プラットフォームに乗れる者は幾らでも自由に振えるが、プラットフォームに少しでも触ればブッ殺す。強迫神経症的な思考です。多くの国や民族は、共通プラットフォームに乗れるか否かはさておき、コミュニケーションを続けることで、利害においても自明性においても、互いが互いにとって不可欠な状況を事実的に作り出せ、との知恵に従います。迫害された清教徒が建国した米国だけが、国際標準から見て奇天烈で極端なメンタリティです。
■プラットフォームさえ踏まえればいい米国社会は非常に流動的です。人種や文化を問わず仕事ができるように「マニュアルと役割」で標準化された米国流のサービスは、世界中に持ち出せます。米国流の大規模店舗の展開でローカルショップが次々潰れます。こうした過剰流動性を容認すると、巨大資本で社会はどこも同じく地均しされ、人も物も入替え可能化するので、諸外国は米国を強く警戒します。日本だけが丸腰でファミレス・コンビニ的なものに席巻されてきました。
■米国は神を頼るから過剰流動性に耐えられ、過剰流動性ゆえに不安ベースとなり、不安ベースゆえに神を頼ります。そうした循環のない日本では、米国流に耐えうる強靭さがないクセに、最後の砦となる生活世界を米国流によって破壊されてきました。その結果、過剰流動性で、何かというとオタオタするヘタレが量産されています。ヘタレどもは、米国のオンブにダッコを諸外国から嘲笑されているのに、ことあるごとに「断固たる措置」と噴き上がる。醜悪な光景です。
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