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文字起こしⅡ【時事キャッチ7】(後半のみ)「芸能という闇」と「日本の劣化」 20.06.27

投稿者:miyadai
投稿日時:2020-07-02 - 20:24:22
カテゴリー:お仕事で書いた文章 - トラックバック(0)
【時事キャッチ vol.7】(休憩を挟んだ後半)文字起こしⅡ(Ⅰから続く)

「芸能という闇」と「日本の劣化」 |阿佐ヶ谷ロフトA 生配信|2020.06.27(日)
石丸元章  :GONZO作家
めりぴょん :ライター/阿佐ヶ谷ロフトAイメージガール
宮台真司  :社会学者/東京都立大学教授
(文字起こし:立石絢佳 Twitter @ayaka_tateeshi)

(Ⅰから続く)



めりぴょん: それこそ、昨日、元オウム真理教の上祐さんと話していて、いわゆる「上祐ギャル」って呼ばれていた人たちがいるじゃないですか。当時の文献とかいろいろ読んでみても、「上祐ギャル」の生態について詳しく書かれたものって、すごく少ない、あるいは無いに等しいんですね。なんでかというと、95年以降に流れていた空気として、「上祐ギャル」みたいなものって不謹慎なわけじゃないですか。「上祐ギャル」の生態なんか分析したら、きっと抗議殺到だったと思うんですね。


宮台:■それも歴史を補足すると、サブカル系って94、5年に「不謹慎」「時代遅れ」「社会の要らないモノ」になったんですよ。80年代後半に、素人AVブームが起こり、素人読者ヌードブームが起こり──an・anを舞台にしてね──、ジュリアナ東京のお立ち台ブームが起こり……。これって全部「男の視線を参照しない」動きだよね。だから僕は『サブカルチャー神話解体』(1993)に「自己関与化=視線の無関連化」って書いた。その果てに援助交際が出てきた。だから援助交際を見つけたときにも、「とうとうそういう話になっちゃったわけか」っていう感じで、驚きがなかったの。ところが、一見すると「性の上昇」があった。みんなはそう思った。でも実際には「性からの退却」があったんだね。
■そんなこんなで、事情を知らない人は、性がものすごい盛り上がった時代だと思った。他方で、サブカル系がオタクに結びつけられて(オタクが人口に膾炙した連続幼女誘拐殺害事件=宮崎勤事件が1989年)、性愛界隈に乗り出せない臆病者たちのマスターベーション界隈だってことになった。僕が援交を朝日新聞で暴露した93年秋から急にそうなった。だから僕は申し訳なく思った。当時、コアマガジンでも、親会社の白夜書房でも、サブカル系の編集者が突然めっちゃ差別されるようになって、エロ雑誌を編集しているヤツが、めちゃめちゃ偉いってことになった。ところが、95年の地下鉄サリン事件で上祐史裕の露出が増えて、「上祐ギャル」のブームが始まった。これって全員サブカル系だったんだけど、サブカル系雑誌は無視したんだよね。その意みで「上祐ギャル」はサブカルへの差別的な眼差しを後押ししたわけ。ところで「上祐ギャル」の一部には僕の追っかけもしているヤツもいたのね(笑)。

めりぴょん: ははははは(笑)! そうなんですか!? 衝撃の事実!

石丸: 「上祐ギャル」が「宮台ギャル」だった!?

宮台:■そういうのもいたのよ(笑)。

めりぴょん: 今はじめて知った(笑)。そもそも「宮台ギャル」がいたんですか?

宮台:■いたんですよ(笑)。

めりぴょん: 客層かぶってたんですかそこ。

宮台:■かぶってますね。それは理解できるじゃん。

めりぴょん: 言われてみればめちゃくちゃわかるんですけど(笑)。

宮台:■援交ブーム以降に、サブカル女子の一部がゲテモノ系になったの。援交で出会うオッサンを「カワイイ」って形容する流れね。上祐カワイイじゃん、宮台カワイイじゃんってなった。90年代末の「死にかけ人形ブーム」もその流れ。「ゲテモノ教団のイケメン広報」ってことで、当時の上祐はサブカル少女にとっての輝きだったわけ。僕も似た文脈にハマったのね。オウム少女──オーマーって言ったけど──には宗教的コミットメントは全く無かった。それが95年の現象。傍から見ていると、そのことが「サブカル差別」に拍車をかけたんだね。「結局サブカルってオウムを翼賛するんだ」みたいな。
■ってわけで、「自己関与化」や「視線の無関連化」つまり性愛的期待の低下という意味で、80年代後半からエロが衰退したんだけど、その現れとして「性愛インフレ現象」としての援交ブームが93年から起こり、宮崎勤事件以降のオタク差別もあってサブカルの地位低下が起こったんだけど、最後っ屁のようにサブカル少女の「オーマー」化が起こって、かえってサブカルの地位低下に拍車が掛かったという流れ。97年以降は、援交ブーム終焉と結びついた性愛系の地位低下で、オタク系への差別がなくなったけれど、それでも「サブカルの復権」はなかったんだよ。例えばサブカル雑誌って形では復権してない。それは理由があってね。共同性の問題だよ。サブカルって共同性を支える場が必要なの。95年からインターネット化が進んだでしょ? 85年に歌謡曲ブームを支える「お茶の間」が消えて、92年まてにバンドブームが象徴する「教室」も消えた。ところが、ネット界隈だと、サブカルを支えるプラットフォームが細分化されてバラバラになるんだよね。結局、サブカル系の隆盛を支えてきたのは「同じものを愛でる仲間にそれなりのボリューム(大きさ)がある」という共同性なんだね。
■僕は、75年にコミケをはじめた米沢嘉博と親しかったので、コミケがどういうふうに変遷したのかって歴史を知っているけれど、初期と違って、今のコミケって、仲間意識がゼロだよね。あれはテーマパークになっちゃった。例えばディズニーランドには何の共同性もないよね。だからワンフェス(フィギャアの祭典「ワンダー・フェスティバル」)の主催がゼネラルプロダクツから海洋堂に移った(=岡田斗司夫が主導権を手放した)92年夏から起こっていたことだよね。そこに、95年からのインターネット化がかぶさる。ネット化はリアルな祭り場の共同性を衰退させるから、一方で80年代後半から始まっていた性愛的なものの衰退を加速させ、他方で90年代前半から始まっていたサブカル的なものの抑圧からサブカル系が復権するも抑圧したんだね。そんな流れだと思う。

めりぴょん: 「上祐ギャル」と「宮台ギャル」の客層がかぶっていたっていうところを聞いて思ったのは、上祐さんっていうのは、今でこそ認識としてはカテゴリーでいうと犯罪者カテゴリーじゃないですか──対談しといて翌日に言うのもなんですけど──。

宮台:■しかたがないよ、犯罪者なんだから。

めりぴょん: 当時はいわゆるサブカル男子カテゴリーというか、そういう分類だったってことですか?

宮台:■オウムがサブカルだったんです。

石丸: そうそう、オウムがサブカルカテゴリーだから。

めりぴょん: はあ~。その観点は、正直言うと無かったんですよ、私は。オウムは犯罪カテゴリーだと完全に思っていたので。

宮台:■それは学研『ムー』の効果だって言われている。95年の地下鉄サリン事件の少し前からは「オウムショップ」なんてのも各地にあった。

石丸: だって(『ムー』のオウム広告で教祖麻原が)空中飛んじゃうんだから。これはもうサブカルとか『ムー』とか。

宮台:■「上祐ギャル」以前に、そういうオウムショップに押し寄せていて、オウムグッズをいっぱい買っていたわけ。これが「オーマー」ことオウム少女のルーツだよね。

石丸: 自分なんて買いに行ったもん、山のように。

めりぴょん: 買いに行ったんですか(笑)。

石丸: ダンボールにいっぱい買っちゃった。それで事件が起きて、えらいことになったなと。

めりぴょん: お二人は最近流行っている『鬼滅の刃』ってご存知ですか?


宮台:■中学生がよく読んでるよね。

めりぴょん: あの『鬼滅の刃』って、家族が殺された主人公が仇とるために鬼退治に行く。序盤で主人公が鬼退治に行くために修行する場面があって、その修行の内訳が、山の中にでっかい岩があって、その師匠みたいな人から「気を込めて、呼吸を集中させれば岩を斬れるようになるんだ」とむちゃくちゃなことを言われて、刀で岩を斬るようになるまで2年くらいかけて、岩を斬れて、やっと鬼退治の修行に出れるっていう話なんですけど。私はそれを見て、「めちゃくちゃオウム真理教じゃん」って思ったんですね。それを昨日、上祐さんに聞いたんですけど。そしたら「そう感じるかもしれないんだけど、サブカルチャーの中にずーっとそういう流れはあった。修行とか努力とか積み重ねによってパワーを得て、超能力を得るってシナリオはずっとあって、80年代からずっとあったその流れの中で、オウムが超能力開発みたいなキャッチフレーズでみんなを集めたんだ」と。つまり『鬼滅の刃』がオウム的なのではなく、むしろオウムが『鬼滅の刃』的なんだって話になったんですね。それを聞いてストンと腑に落ちたんですよね。

宮台:■あのね、たとえば『巨人の星』(『少年マガジン』で1966年から連載)っていう梶原一騎脚本の漫画。「大リーグボール1号=バットに吸い寄せられる魔球」とか「ダイリーグボール2号=消える魔球」ってまさにそうじゃん。あれ魔法なんだよ。その魔法を獲得するまで、星飛雄馬がどれだけ血の汗を流したかが描かれていたわけ。

石丸: 練習という名の修行だから。


宮台:■そう。同時代に『サインはV』っていう少女漫画(『週刊少女フレンド』1968年から連載)があって、テレビ実写シリーズ(TBSで1969年から)にもなったけれど、「稲妻サーブ」っていう魔球があったよね。血の滲む修行の末に獲得する魔法だったよ。

石丸: 『柔道一直線』なんて、階段ごろごろ転げ落ちて、それが稽古なの、修行なの。『空手バカ一代』なんかもそうですよね。

宮台:■そうなの。スポコンものブームが終わってからは『アストロ球団』(『少年ジャンプ』1972年から連載)が「血の汗で獲得した魔球」をギャグ扱いしていたけど、ジャンプはその後も「強い敵が現れる→修行して勝つ→もっと強い敵が現れる→もっと修行して勝つ」っていうパターンをギャグ込みで反復してきた。『キン肉マン』(『少年ジャンプ』1979から連載)とか『ドラゴンボール』(『少年ジャンプ』1984年から連載)みたいにね。それをオウムが、ギャグ抜きのマジガチで、受け継いだってことだよね。

めりぴょん: 本気でやっていたっていうのが、まぁ、面白いっていうか(笑)。

石丸: それ(上祐史裕氏とめりぴょんのトーク)は今、アーカイブで見れますね。

めりぴょん: すみませんなんか、宣伝みたいになっちゃって(笑)。よろしくお願いします。

石丸: ということで、今回もぼちぼち時間なんですけども、先月から1ヶ月。次回には選挙の結果も出たりしたりとか。コロナの動きとかもこれからまた移っていくと思うんですけども。いかがですか。

めりぴょん: 私はなにかすごいことが起きて、都知事選の結果がめちゃくちゃなことになったら面白いなって思ってますけど。あまり無いでしょうけどね。変な人が当選してほしいなと願いつつ、暮らしていきたいと思っております。めちゃくちゃになってほしいんで、東京都が。

宮台:■選挙で勝つはずの希望の党が小池の一言で百からゼロにポシャった事件みたいなのがあったりするのが、最近の政治のやや面白いところではある。ただ僕が選挙なんかに関心がない理由は、今日の話で、もう皆さんにはお分かりいただけたと思うんだよね。まぁ僕にとっては社会がどうでもいいものになってるってことです(笑)。

石丸: 今後、河合案里さんがメンヘラだから、喋らなくていいことまで喋っちゃって、誰も想像してなかったような大事件に発展する、まさかの家宅捜索が行われたりとか。

宮台:■「メンヘラ」って本当にキーワードだね。「メンヘラ」と「スピッちゃうヤツ」っていうのがキーワード。安倍もどう見てもメンヘラだろ? 社会から闇が消えた代わりに、個人の内面にギャグ以上にショボイ形で闇が移転した。闇った言ったって、所詮はただの劣等感だったりするから、まぁ笑える。

石丸: そうですね。こんな騒動のときに自宅でコーヒー飲んでたんですからね。あの感覚はメンヘラですね。

宮台:■完全にメンヘラだね(笑)。

石丸: ということで、今日はありがとうございました。この放送は2週間アーカイブで見れるということです。何度かくり返してご覧になってください。

めりぴょん: よろしくお願いします。

石丸: 宮台さん今日はありがとうございました。

めりぴょん: ありがとうございました。


宮台:■ありがとうございました。

めりぴょん: ご視聴いただいたみなさまも、ありがとうございました。