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「」 速水由紀子氏インタビュー with宮台真司<後編>

美少年を「支配したい」女たちの心理は?
「支配される」存在としての美少年はいかにしてつくられるのか?

 前編では、「支配される」存在としてのジャニーズ系美少年の特異的な魅力と、彼らを「支配したい」という女性たちの心理について速水さんに語って頂きました。

 続く後編では、アイドル現象を中心に話が発展していきます。男性アイドルの低年齢化はどこまで進むのか? ジャニーズ系美少年の成熟とは何か? そしてジャニーズ系美少年が生み出される「必然」とは何だったのか?

 それでは、まず、宮台氏と速水氏による「芸術とエロ」論争をご堪能下さい。 【編】


■ 「芸術とエロ」の境界は?

P 次にお聞きしたいのは、男性アイドルの低年齢化がどこまで進むかということです。今、中学生くらいまで来ていると思うんです。それが小学生くらいまで進むのかなって。

速水 小学生になると、通称"ショタコン"ともいうけど正確には、「ぺドファイル(小児性愛)」。男のぺドファイルとおんなじ。法律違反であり、もう病気です。

 それで、女の人の方もね、そういう病気をすごい自覚していて、女のほうが自覚が大きいのね。何でかというと、男の場合、ロリコンっていう一つのオタクカルチャーが蔓延しちゃって、市場が成り立っちゃった。だから、オタクのなかで、自分がぺドファイルであるってことに、そんなにも罪悪感をおぼえなくていいっていうシステムになっちゃっている。

 でも、女の場合は、比率が少ないから、その分違和感も大きくて、私は他と違うんだわ、病気なんだわって意識がものすごく大きい。で、絶対それは出さないよね。たとえそうであっても。

 私がすごい面白かったのは、インターネットで「××ちゃんのページ」っていうのがあって、美少女のね。もう、死んじゃった女性写真家が、10歳だか12歳だかの美少女のヌードをね…

P ああ、昔いましたね。たしかK・S…

速水 そうそう。

宮台 それ、有名だよ。

速水 それで、そのHPをやっているのも女の人ならば、そこに来るのは男もいれば女の人もいるんだけど。たぶんね、そのHPをやっている女性カメラマンも、美少女が好きなカメラマンなんだと思う。だってね、見てもらえばわかると思うけど、児童ポルノ規制で、途中からヌードを出せなくなっちゃったの。

 で、その写真を削除した代わりにね、彼女の撮ったヌードの黄金比率、このからだのどこが美しいのかって、ミリ単位まで計って、えんえんとそれやってて。しかも、その写真集が撮られた場所まで行ってきました。この場所の、この砂の、この山の、ここにまゆちゃんが座っていましたって。信じられなーい、ここまで?って。オタクの男でも、ここまでやる人はいないよーって思って。

宮台 え、それ女の人なの?何歳?

速水 30歳くらいの人。でね、このHPはそういう趣旨のHPではありませんって最初に書いてあるんだけど、見たら…(笑)。で、しかも、私の甥のなんとか君、まだ5歳なんですけど、かわいい私の天使を紹介しますとか言って、裸で、顔入りで出してるんだけど、それはやっぱり、そういうふうに撮ったとしか思えないわけ。あー、やっぱりね、女性の場合はこういうふうにするしかないんだなと思ったの。そこまで隠すしかない。でも、隠してもバレバレなんだけど。

 それで、そこにリンクしてるページっていうのが、「美少女人形」とか「美少年人形」とか作っている人がいて。要するに、等身大のヌードのフィギュア。すごく気持ち悪いの。マネキンみたいにすごいリアルで、いろいろ、胸から腰から。で、あと、ネットアニメの、ぷにぷに何とかっていうのにリンクされていて。結局、こういうところにつながっていっちゃう。女の人でね、そういう趣味もってると、そういうところでどうにかするしかない、ものすごく特異な世界だなって思ったんだけど。女のぺドファイルは、やっぱり男よりキツイです。

 それにね、私、その「××ちゃん」のヌード見て、気持ち悪かったもん。生理的に。その、5歳の甥っ子の裸の写真も出してるんだけど。そういうふうにね、子どもを顔出しでインターネットに出すってことは、性欲の対象としてさらされることをいちおう「いいよ」っていう風に言ってるわけ。私は、それはやっぱり許せないと思う。

宮台 その甥っ子の話は別にしてさー

速水 それでも、そうなっちゃうの。最終的には。「××ちゃん」もそうなの。どんなに「天使の裸」とか言っても、みんなそういう目で見るわけ。だから私、年齢制限絶対必要だっていうのは、ぺドがね、あたかもぺドでないかのようにふるまうことによって、「天使」であるとか、「子どものきよらかな」微笑とかを、そういうみにくい目で見ないでーって言ったって、見てるんだから、そこを一線画さないと。

宮台 うん、それはね、ちょうど25年前に第1次ロリコンブームってあったのを思い出しながら聞いていたんだけど。そのころはK・Sもいたんだけど、ま、それは別にしてね。美少女雑誌ってあって、それは、後の投稿写真とは違って、あくまでも美学的な見地から。それをどう評価するかについては、意見が分かれることもあると思うけど、彼らには、「本音はエロだけど、建前は芸術」っていう二重性があったと僕は思うんですよ。で、見る人間も、本音はエロだけど、建前は芸術っていうパッケージの中で何かしてると思うんですよ。でもね、それがある分には、すごくいいと思うんですよ。真性ロリコンはね、それこそが本当のロリコンであって、幼児とセックスしたいとかは偽ロリコンでって。

速水 でも、その境界は曖昧なの。

宮台 第1次ロリコンブームの人たちは、その境界を守ろうとかなりがんばったんですよ。それ、重要な境目だと思うんですよ。「本音はエロ、建前は芸術」。そういうのありだと思うけど。

速水 でも、その境界は曖昧でしょ。私は反対。

宮台 反対してもしょうがない。

速水 わかった。私が反対する理由はね、HP一回見て。いいのもあるよ。でも、そこのリンクをね全部たどっていくと、ここは芸術、次はダッチワイフ、次はロリコンのめちゃめちゃサドマゾ、ってなるわけ。結局、リンクをゆるすってことは、あなたの要素が私にありますってことでしょ。

宮台 だから、それは本音がエロなんだよ。

速水 それは子どもの人権侵害しているでしょ。大人の側から見たら、芸術だのなんだの言ってるけど、子どもの側から見たら、芸術もクソもなくて、要するに人権侵害でしかない。自分の将来をそれによって、ものすごく左右されちゃう。性的な視線で12歳とか以下で見られた場合に、将来ね、性的なコミュニケーションをものすごく影響される。つまり、自分が子どものときそういうふうに扱われたとか、そういう視線で見られたとかあると、普通に異性と付き合えなくなったり、自分もロリコンのような関係じゃないとだめになったり。

 そうすると、向こうは芸術だとか言っても、それによって自分の人生ある種ものすごく偏ったものにされちゃう。それ、子どもにとって、人権侵害だと思う。だから私は、年齢制限はっきりして、それ以下は絶対だめってしないとやばいと思う。

宮台 それは、そう。賛成だよ。

■ ジャニーズファンの傾向

P 最近のジャニーズアイドルの雑誌への出方の特徴として、ヌードになるというのがあるんですけど、こういうのが載ると、ゲイのHPにも反応がありますね。ゲイにはKinki Kidsの堂本剛君に人気があると言われたりしますが、最近は、女の子のなかでも、剛君の方がいいって。

速水 そうそう、いまNo.1ですね。ジャニーズ系で一番人気。性格がこっちの方がはるかに良さそうな感じ。

P 今、堂本光一君ファンの子が、アンチ光一君ってことで流れてくるのあるみたいですね。

速水 例の「乱交」事件以降?そう。あー、やっぱり、この人はセックスとかしちゃいけなかったと思う。トイレにも行っちゃいけない。そういう、昔の美少女に向けるまなざし、みたいなね。王子様でなくちゃいけなかったのに、あの事件で、一気に普通の男ってことがわかっちゃったから。でも、まあ、逆に言えば彼にとってはよかったんじゃない?普通の男になれて。ねえ、性欲があっちゃいけないっていうのは…アイドルとはいえきついすぎる。

P ファンの人気の傾向を見ると、小原君は、割と上の年齢層に人気があるんですよね。No.1はKinki Kidsの堂本剛君。あと、だいたいパターンがあるみたいですね。女性が複数のタレントを好きになる場合、キムタク、光一君、滝沢君っていう、ライン。あとは、中居君好きだったらキンキ両方好きになるとか。同じ女性でも、「降りてくる」って言いますか、好きなタレントが美少年じゃなくなっちゃうと次の美少年、というふうに同じラインを探す傾向があります。

 あと、ジュニアファンにも2タイプあって、年上系の「美少年支配したい」というのと、「クラスのお友達的なノリ」。ジャニーズJrの人気って、その二つのタイプによって支えられているのかな、というイメージがあります。

速水 Kinki Kidsの二人あたりは、いわゆる美少年を支配したいっていう年上系の層ではなくて、10代前半から後半の女の子がもつ王子様に対する「あこがれ」だと思う。まだ、あんまり男の子に性的なものを感じたくないけど、あこがれとして、理想像を持っていたいっていうマスの数、そういうのやっぱり多いから。このKinki Kids二人まではそうだと思う。

 昔だったら、宝塚が普通の平凡なアイドルでよかった。女装のハンサムとか、いろんな要素が入っていて。しかも、やおい漫画における、美少年と美少年がエッチをしているのを見ると、なぜか女の子は興奮するっていう図式があるでしょ。女の子と男の子じゃ、ダメ。でも、非性的な男の子と男の子がえっちをしているときれいに見える。自分もその中に入りたい。きれいな方に同化したい、というのがあるのよ。そうすると、やっぱりジャニーズしかない。美少年と美少年とがえっちして変じゃない、きれいっていう図式がなくちゃいけないから。

P それは、女の子には昔から「非性的なものに対するあこがれ」があったということですか?

速水 だから昔は、そういう対象、選択肢が少なかった。宝塚に行くか、同性の先輩に行くか、あるいはもう全然かけはなれた「トシちゃん」的なね、自分の身近にはいないけど「あこがれる」アイドルへ行くか、しかなかった。

 ところが、だんだん、対象とするものが、(ま、宝塚は相変わらずあるけれども、)中性的な美少年とかいろんなバリエーションが出てきた。そうすると、仮託する対象も、あ、私ってこれもありだわ、とか、なるじゃない。例えば、漫画の世界でも、最初は、『ベルサイユのばら』でも、オスカルすてきとか、フェルゼンすてきとか。「ベルばら」の時代は、あの中の誰かしかいなかった。アンドレか、フェルゼンか、オスカルか、の3人。で、私はこれ、私はこれ、って選択できたわけ。男装の麗人を好きになるか、男っぽい男、男っぽいハンサムか。アンドレっていうのは、今で言うなら、支配できる年下の美少年。そういうふうに、どれかに出来たわけだけど、今は、もっと複雑化して、同じアンドレでも、10歳年下だったり、美少年だったり、反町隆史的な容姿をしていたりとか、いろんな選択肢が出てきた。

 で、ジャニーズは、微妙に時代を反映しているというか、ニーズにこたえて商品を提供している。トシちゃん・マッチが出てきた時代と、今のジャニーズJrの時代と、出てくる人たちが違うでしょ、受動的な要素、繊細な要素、不良的な要素をプラスして、少しずつマイナーチェンジしている。それは、経営陣のものすごい才覚だと思う。

 例えば昔だったら、"お気に入り"は北公次だった。でも、今の"お気に入り"は稲垣吾郎とか。この二人の根っこは同じだよね。イケてなくて、暗くて、でも受動的で…。でも、根っこは同じでも、その出し方、演出の手法を変えてるよね。稲垣吾郎は文学少年で、ちょっとイケてないけど、フレンチ男っぽいキザさがある、みたいな。でも、北公次の場合は、サワヤカに「公ちゃんです」っていう単純なものだったでしょ。そのへんの、演出の微妙な分け方で、女の子のニーズにマッチしたものを出している。ある種、マエストロかも。

■ 「男はココロ」の時代は終わった

P 速水さんが取材された女性たちは、雑誌やTVを頻繁に見るんですか?

速水 うん、小原君が好きなら小原君の出てるのを。「8時だJ」っていうTV番組。でも、あそこまでギャグつまんない番組って…なんも笑えないよね。っていうか、滝沢君とか、ジョーク言ってるつもりでも、おもしろいとこ殆どないよね。

P でも、会場でみんな笑うんですよね。爆笑してます。

速水 あれって、会場のノリとしては、滝沢君が言ってるから笑ってあげなきゃっていうのあるよね。面白いこと言ってるんだからって。Kinki Kidsの剛君が言ってるんだから笑ってあげなきゃ、っていう義務感みたいのあるよね。母性愛みたいな。

P 本当の能力じゃなくって、彼らがやってるから盛り上げてあげようってノリがありますよね。

速水 そう、それ。やっぱりメリットあるじゃない?、美少年は(笑)。

 だから、今、もてる、もてないって、すごくうるさくみんな言うようになったけど、やっぱり、もてるもてないのメリットがくっきり分かれちゃったから、みんな、その落差をみんなひしひしと感じる時代になっちゃった。

 昔は、そうは言っても、男はやっぱり性格だよねとか、人間性だよねとか、仕事だよねとか、そういうエクスキューズがあったけど、今は、そうは言っても顔とかルックスだよねとか、美少年じゃないとねとか、もう露骨になってきちゃったから、よけい、そのメリットのない方がメリットのなさをつくづく思い知っちゃう、つらい時代でしょうね。昔は、「101回目のプロポーズ」みたいな「ココロだよ」っていう図式があったけど、それがなくなっちゃったの。武田鉄也の演じた主役みたいに、ガッツが売りの人たちにはきつい世の中だよね。

 今の女の子の会話聞いてると、もう、モロそうだもん。プリクラとか見せてもらって、「今付き合ってるの誰?」「これー。かっこいーでしょ」って。もう、「かっこいい」ばっかり。「この子はね、何々やってて、こうなんだけど、いいやつなんだよ」っていうの、一人も出てこない。そういう世の中なんだ。かなしいと言えば、かなしい…。

■ 美少年の成熟――受動性から能動性へ

宮台 キムタクに代表されるようにさあ、受動性から能動性へと卒業していく。生き延びたわけでしょ、彼は。成熟していった。

速水 昔、キムタクは「あすなろ白書」でブレイクして。でも、その前は、単なる美少年だったから、年上の女に支配されたりだとか、やおい的な美少年好きに好きになられたりだとか。でも、今キムタクは、同世代から人気があるでしょ。同世代、あるいは、20代、彼と成長してきた世代に人気が出てきたから、かなりそれは成長した証拠。

P キムタクは、女子高生にはあまりファンはいないと思いますね、たぶん。

速水 そうですね。

宮台 堂本光一と堂本剛だと、剛の方が生き延びるよね、当然ね。

速水 性格的にね、いい奴って感じ。成長するでしょう。

宮台 で、光一君みたいのはどう?

速水 光一君は、あれでしょう。アルフィーの高見沢さんみたいな(笑)。ああいう"いつまでも白いフリルの王子さま"っていう道を行くか、途中で光一君自身がおれは変わらなきゃと思って変身するかしかないでしょう。徐々に変身かかっていくと思うけど。でも、今のところ、彼、番組ではそれが見られない。彼、いろいろお昼の番組で挑戦するやつあるじゃない?光一がやってる現場の職人っていう面白さ?落差?王子様がやるトラック運転手みたいな面白さしかないから。まだちょっと、そこから脱していないかな。

P 王子ではなくなりそうですね、もう少ししたら、たぶん。

速水 そう、王子様でなくならなきゃいけない。それとも田村正和を目指すっていう手もある。

宮台 それ、「資質」の問題だよね。キムタクにも、剛君にも、資質があるよね。

■ 成熟した美少年、キムタクの「資質」

速水 キムタクはね、何やってもセンスがいい。SMAPの中で運動も一番だし、料理も彼自分で作るから、うまいし。まあ、負けず嫌いだとは思うけどね。そういうところ、彼をずっと見てる人たちが、あ、これはただの美系じゃないんだ。自分がこうやりたいんだっていうのがすごい強いんだっていうのが、わかってくるのね。そうすると、ある種のリスペクトっていうふうに変わってくるから。そういうところをね、光一君も見出さないと…

P キムタクとか、人生語ってる記事とか、相談にのってる記事とか、読ませますよね。読んで価値があると思わせる。光一君は、それがないかなあ…。

速水 そう。キムタクのうまいところは、例えば、サーフィン雑誌の「Fine」とかにグラビアで出ちゃって、インタビューもしちゃうわけ。「Fine」ってカルトな雑誌だから、普通ナンバーワンの芸能人なんて出ないよね。でも彼は出ちゃうし、ネットでもね、波乗りいいじゃんとかサーフィンのこと書いたりするじゃない?ああいうふうにすると、あ、いい奴なんじゃんって、サーファーとかにも人気出てくるし。戦略的にうまい。自分で考えてプロデュースしているのかどうかは、ちょっとわからないけど。でも、意図的にやってるところもあると思うけど。

P 雑誌の記事ってほとんど、キムタクが作るらしいですね。編集者が企画を持ってくるんじゃなくて、全部これでやってくれって、自分で。

速水 彼、中田とお友達っていうのけっこう表に出してるよね。中田もそういう人でしょ。「アッカ」とか自分で編集して、自分のこと、全部自分でやって、ね、マネージメントされるのやだって言って。中田と近づくことによって、友達だってアピールすることによって、キムタクはすごくプラス面を受けてる。

 あと、宇多田ヒカルとの仲もすごいアピールしたし。その3人は3者関係を持つことによって、すごいメリットを得た。お互い、相乗効果で。今、彼に「たかる」人多いじゃない?イメージをあやかりたい。キムタク、ヒデ、宇多田ヒカルは「あやかりたい」っていう人がめちゃくちゃいるわけ。「カリスマ」の要素が自分はあるんだぞ、誰かに支配されているんじゃないんだぞって、常にアピールしてるし。

 この前のスマスマでもね、宇多田ヒカルが来た時に、宇多田ヒカルが「何つくってんの?」って、「カレーだよ、カレー」って。要するに、おれたち、ダチだからよー、こうやってタメグチきくんだよーって。あのへんは、もう、彼の天性の資質なのかな。

 自分で戦略を考えていけるかどうかっていうところが、アイドルがそこから脱するかの分かれ目。今までの、マッチとかトシちゃんとか、全部失敗してる。光GENJIも、失敗した。もう、どこに行っちゃったかわからない状態で、あれ見てたら、一時期わあって全国的に人気が出て、でも25歳になったときあれじゃあ、みじめだって思うよね。それ、ちょっと下で見ていて、頭のいい子だったら、じゃあそうならないように軌道修正しようって思うでしょ。キムタクは考えたと思う。

宮台 キムタクもね、彼はすごい非社交的人間で、人つきあいめちゃくちゃ苦手なんだよー。人と合わせることがすっごいストレスになるから、戦略半分、性格半分なんだよ。

速水 彼のトークって、誰かが「ね、木村君こうだよね」って言っても、「ええーー??」って。ね、いつもそのリアクションばっかだよね。おれは違うんだぜ、みたいな。まあ、あれはね、あの顔だから許される(笑)。やっぱ、そのバランスの兼ね合いっていうのは、重要。ルックスも良く、自分の分を良く知っている。いま、すごい美形だったら、ある程度変なほうがかっこいいしね。

P ほんと変わったなって実感するのは、80年代の「アイドル」は虚構で。今は、虚構かどうかもどうでもいいって感じで。キムタクにしてもふつうの人間になってしまっていて。

宮台 その「アイドル」の話だけど、ビジュアル系っていうのも、女子高生が一番嫌いなものらしくて。勘違いのビジュアル野郎って。あんたら何様だよって。

 バンドが何でカッコ悪いの筆頭に来るのかと言うと、ほんとに才能があって魅力のあるやつだったら、もうデビューして、ハタチ前後で有名になってて当たり前なのにね。25歳とかでバンドやってるってこと自体が、勘違い。おまえ、何様だよってね。あきらめろよって、ことらしいです。

■ 支配したい女の欲求を敏感に感じ取って…

速水 最近、ジャニーズ系、ジャニーズJr系というのは、支配したい女の欲求というものを敏感に感じ取っていて、それに合うパフォーマンスをうまくやる。

 例えば森田君っていうのは、年上の女にもてるタイプ。「森田君、どんなのタイプ?」って聞くと、「や、人妻っていうのに弱いんだよな」って。それで「じゃ、人妻じゃなくてきれいな子と、人妻できれいじゃない子だったら、どっち行く?」って聞いたら「いや、やっぱ、人妻だよな」って。うまーいって思って。きっと、これを見て森田君を好きになるPTAの主婦がいっぱいいるんだろうなって。そのへんうまいっていうか、彼、もともとそういう資質がある。ツッパリの、何て言うの? いわゆる年上に甘えて、わがまま放題言うタイプだから、お姉さまに好かれるタイプなんだけど、そういうのちゃんとわかってる。

 それと、滝沢君なんかも、「最近滝沢君買い物したの何?」「赤いドレス」「え?何だよ、それ」「ちょっとさ、ドラマでさ、ドレス着なくちゃいけないからさ、買い物行っちゃった」って。彼さあ、そういう言動のうまさをすごく心得てるなって思うよね。被支配の存在であるっていう。

■ 自分に「必然性」はある?

宮台 今さあ、現実に敏感じゃないとアイドルのこと論じられないっていうか。アイドルに詳しいと、むしろ現実に詳しいことになるっていう。アイドル論、いま一番、面白いよね。

速水 ジャニーズ事務所の嗅覚はすごいよね。平凡に見える少年たちの、潜在的な可能性を引き出す、って言うのかな。美少年好きのお姉さまとかにやらせても、そういう可能性はある程度わかるのかもしれない。でも、多分あれほどマーケティングの広がりはないと思う。絶対、あの事務所にしかわからない嗅覚っていうのがあるのね。

 趣味がそういう巨大な産業になってるんだからいいでしょ、って私は思う。あれは、一つの産業だと私は思ってる。たぶんね、経営者の美意識にマッチするのが、女の子の欲求にマッチする。

P それが少年じゃないとだめだから…。永遠に少年を追い求めないとだめなんですよね?

速水 いいじゃない?そういうジャニーズのシステムがあるんだから。自分のためのシステム。だから、今うけるのは、自分にそういう必然性があるからやるっていうもの。どんなカテゴリーであれ。だから、必然のあるものは濃いものになるし、みんなを巻き込んでいくものになるんだと思う。

P ありがとうございました。(了)


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