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■マル激トーク・オン・ディマンド 第412回(2009年02月28日)
なぜ私はグローバル資本主義の罠に気づかなかったのか
ゲスト:中谷巌氏(多摩大学教授・ルネッサンスセンター長)
<プレビュー>
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ある著名な経済学者の「転向」が話題を呼んでいる。細川内閣や小渕内閣で改革の旗振り役を務めてきた中谷巌氏が、昨年12月、自ら「懺悔の書」と呼ぶ『資本主義はなぜ自壊したのか』を出版し、その中で自身が推し進めてきた改革路線の誤りを認めたうえで、グローバル資本主義の暴走を止める必要性を訴え始めたのだ。
今週はその中谷氏を招き、氏の「転向」の理由を聞いてみた。1969年、留学生として渡米した27歳の中谷青年が見たアメリカは、豊かな中流階級が幸せに暮らす希望に溢れる国だった。ハーバード大学でアメリカの最新の経済理論を学んだ中谷氏は、帰国後、日本社会をアメリカのような自由で市場原理が機能する国に改革するために奔走した。アメリカから帰国した中谷氏の目にその頃の日本は、系列や政官業の鉄のトライアングルなど古いしきたりに縛られ閉塞した経済のように映ったという。雁字搦めになった規制を取り払い、アメリカのような市場原理が機能する国に日本を改革することができれば、日本はもっと豊かになれると考えた中谷氏は、細川内閣の「経済改革研究会」や小渕内閣の「経済戦略会議」などに参加し、「アメリカ流構造改革の急先鋒」となった。そして、実際に数々の自由化や規制緩和を実現させた。
しかし、中谷氏は次第に、改革の負の側面に気づき始める。レーガン政権以降、新自由主義的な政策を推し進めてきたアメリカでは、かつて中谷氏が羨望の眼差しで眺めていた豊かな中間層は消滅し、貧富の差が広がっていった。そして、同様に改革を進めた日本でも非正規労働者が全労働者の3割を超えるなど格差が広がり、かつて一億総中流と呼ばれた社会から安心や安全が失われていった。やがて中谷氏は、市場原理に委ねれ
ばすべての問題が解決するという経済学の理論を実際の社会に適用しても、人々は決して幸せになれないことに気がつく。
そもそも氏が体験した豊かなアメリカは、自由な経済活動によって作られたものではなく、むしろ政府による長年の社会福祉政策や所得再分配政策の生んだ結果だった。にもかかわらず、なぜか中谷氏を含む多くのアメリカ留学経験者はそれを誤解し、新自由主義や市場原理至上主義の信奉者となっていた。
今日、中谷氏は、豊かなアメリカを蝕み、日本固有の豊かな社会基盤も奪いつつあるグローバル資本主義という「モンスター」を、何とか阻止しなければならないと主張している。そして、そのために、霞ヶ関の中央官僚の数を3分の1に縮小する「霞ヶ関3分の1プロジェクト」の必要性などを訴えている。
なぜ日本のエリートの多くが、アメリカの豊かさの源泉を誤解し、市場原理主義者となってしまうのか、誤解に基づくものとはいえ、中途半端に改革を推し進めてしまった日本はこれからどうすればいいのか、そして、われわれはこの先グローバル資本主義というモンスターとどう付き合っていけばいいのかなどを、中谷氏とともに議論した。
<今週のニュース・コメンタリー>
・総務省が放送局と制作会社の取引ガイドラインを策定
・オバマ増税が市民セクターへ意外な影響
・「おくりびと」アカデミー賞受賞の背景
<関連番組>
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アメリカ型格差社会で日本は幸せになれるか
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