【首都大学東京での、来年度学部ゼミのシラバス】
2014年度(来年度) 学部ゼミ シラバス
★授業方針・テーマ
【現代社会論】
(1)近代西欧政治思想史、(2)近代日本政治思想史、(3)戦後日本政治思想史、を年度をまたいで一巡する形でゼミを運営する。昨年度(2013年度)は⑴を学んだので、本年度(2014年度)は、前期で⑵を、後期で⑶を学ぶことにする。
★習得できる知識・能力や授業の目的・到達目標
社会学理論を修得するには歴史と思想史の知識が不可欠である。あらゆる理論には時代や社会の文脈が刻印されているからだ。理論の意義を評価するにも時代的文脈や社会的文脈の参照が欠かせない。ところが最近は歴史的・思想史的常識を欠く学生が目立つ。以前は一年でリカバーできたが、最近では無理になったので、複数年度にまたがるプログラムにならざるを得ない。ただし参加資格も成績も単年度完結。諸理論と歴史的背景をカップリングして理解できるようになること—理論を学ぶ資格を獲得すること—が目標である。
★授業計画・内容
【前期】大川周明を理解する
A級戦犯として起訴後、精神疾患を理由に免訴された大川。単なる大東亜戦争への煽動者と見做せない。戦後日本の保守や右翼とは何かを考える際、大川を避けて 通れない。
日本的保守とは何か。シンクレティズム的寛容か。二元論的天皇原理主義か。原理主義を却ける大川の議論は、都市型保守へのシフトで原理主義化しやすい昨今、一瞥に値する。
「イスラム的」の概念で亜細亜的寛容さを代表させようとする大川の枠組は、米国の喧伝でイスラムを原理主義だと錯覚しやすい昨今、イスラム性の本質を理解する際に役立つ。
【後期】吉本隆明を理解する
高度成長期、古いものが消えゆき新しいものがせり上がる中、光(近代)と闇(前近代)は互いに隣りにあると感じられた。江戸川乱歩や川端康成を生んだ戦間期1920年代に似る。
学園闘争の中で多くの者が、近代の建前の裏に厳然と存在する日本固有の風土について、マルクス主義や近代政治学など19世紀にルーツを持つ近代思想では覆えないものを感じた。
思想的乾きの中、柳田民俗学と精神分析学の関係、キリスト教論と仏教論の関係を踏まえた吉本を読むことは解放だった。戦間期20年間と戦後20年間を比較すべく、吉本を読む。
★テキスト・参考書
【前期】大塚健洋『近代日本政治思想史入門』『大川周明』、大川周明『米英東亜侵略史』
【後期】小熊英二『〈民主〉と〈愛国〉』、吉本隆明『転向論』『共同幻想論』ほか諸著作
★成績評価方法
ゼミ報告をした者にのみ成績評価をおこなう。ゼミ報告のクオリティとゼミでの発言頻度やその内容を評価して成績をつける。
★特記事項
なし
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