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■マル激トーク・オン・ディマンド 第480回(2010年06月26日)
まちがいだらけのマニフェスト選挙
ゲスト:浜矩子氏(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_480_pre.asx

 参院選が24日、公示され、各党ともマニフェストを通じて政策を訴えている。また、菅首相がマニフェスト発表会見で消費税率引き上げに言及したために、マニフェストとは別に消費税引き上げの是非が、選挙の主要な争点となっているようだ。
 マニフェストは各政党が重要だと考える政策をまとめたものだが、それは日本や世界の現状をどう認識し、どのような対策を打つべきだと考えているかを示すものにほかならない。各党による今日の日本の診断書であり処方箋である。
 各党のマニフェストは一様に、日本の現状について経済の停滞や長期デフレに言及した上で、その処方箋として、「強い経済」や「デフレ克服」、「目標経済成長率」などを提示している。
 しかし、エコノミストの浜矩子同志社大学大学院ビジネス研究科教授は、各党のマニフェストが提案する政策はまちがいだらけだと指摘する。そもそも診断書の部分、つまり世界や日本の現状認識が誤っているからだと言うのだ。
 浜氏は、現在、日本を覆うデフレは需要が供給を下回る通常のデフレとは異なる「ユニクロ型デフレ」とも呼ぶ現象だと言う。これは、グローバル化によって地球規模の安売り競争が起きた結果、モノの値段の低下が人件費を押し下げ、人件費の低下がモノの値段を押し下げるという悪循環を指す。ユニクロ型デフレの下では、経済が成長したとしても、貧富の格差が増し、貧しい人々の生活はますます貧しくなる。貧しくなった人々はますます安い商品に群がらざるを得なくなるため、更にユニクロ型デフレの悪循環の深みにはまっていくのだ。
 浜氏は、こうした状況の下では、政党が経済成長を公約に掲げ、約束通りの経済成長が達成されたとしても、日本企業が中国などの新興国と安売り競争を続ける限り、人件費は下がり続けるし、格差は広がり続け、現在のユニクロ型デフレ状況は変わらないと言う。各党が今の日本経済の最大の問題と位置づけるデフレは、別の問題から生じている、という主張だ。そうならば、その根本問題に手当をしない限り、いつまでたってもデフレは解決しないことになる。
 根本問題への取り組みが結果的に経済成長にもつながるだろうと浜氏は言う。そのためにはまず政治が、経済成長を吹聴するだけでなく、根本問題に対する処方箋を提示しなければならない。では、いたずらに経済成長を謳うのではなく、政治が経済や社会に対して本当にできることは何か。
 浜氏はそこでカギとなるのが地域主権だと説く。まず政府が地域に権限を委譲した上で、地域に住む市民がお互いの顔が見える範囲で自分たちの問題に対する解を見つけそれを実行していく以外に、現在の日本社会が抱える問題を解決する方法は見あたらない。仮にセーフティネットの強化が必要という結論に達したとしても、それは国が一律に行うセーフティネットではなく、地域ごとのニーズを地域自らが考えて実行に移していくことが重要になる。政治にできることがあるとすれば、そうした枠組み作りくらいだろうと浜氏は言う。
 政治が経済や社会を変えることはできない、反対に経済や社会が政治のあり方を決めるのだと主張する浜氏と、各党の参院選マニフェストの問題点、さらにはマニフェストには載っていない参院選の真の争点は何かを議論した。



<今週のニュース・コメンタリー>

・野球賭博を生んだ相撲界の拝金体質と閉鎖性



<関連番組>

■インタビューズ(2010年06月19日)
民主党マニフェスト、新経済成長戦略をどう見るか
熊野英生氏、飯田泰之氏、高橋洋一氏インタビュー
http://www.videonews.com/interviews/001999/001484.php

■プレスクラブ(2010年06月21日)
9党党首討論
http://www.videonews.com/press-club/0804/001486.php

■プレスクラブ (2010年06月16日)
自民党と民主党が17日夕、マニフェストを発表へ
http://www.videonews.com/press-club/0804/001479.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2010-06-27 - 07:36:37
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第476回(2010年05月29日)
在沖米海兵隊の抑止力とは何なのか
ゲスト:孫崎享氏(元外務省国際情報局長)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_476_pre.asx

 普天間飛行場の移設先として「最低でも県外」を公言してきた鳩山首相が、最後に「辺野古」を選ぶしかなかった理由としてあげた唯一の理由が、「米海兵隊の抑止力」だった。
 28日に日米間で合意した共同声明でも「沖縄を含む日本における米軍の堅固な前方のプレゼンスが、日本を防衛し、地域の安定を維持するために必要な抑止力と能力を提供すること」と明記され、米軍が沖縄に駐留することの必要性の根拠を抑止力に求めている。
 しかし、鳩山首相も日米共同声明も、抑止力の中身については、何ら具体的に明らかにしていない。
 日米の安全保障問題に詳しく、外務省ではもっぱらインテリジェンス(諜報)畑を歩んできた元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、米海兵隊の抑止力論を、「まったく的外れな主張」だとして一蹴する。
 海兵隊は有事の際に真っ先に戦闘地域に派遣される急襲部隊であり、「抑止力とは何ら関係がないというのは軍事の常識」だと孫崎氏は言う。また、鳩山首相が名指しであげた朝鮮半島情勢への対応についても、もともとその役割は在韓米軍が担うべきもので、沖縄に海兵隊を配置する理由になどならない。
 こう論じる孫崎氏は海兵隊のみならず、そもそも在日米軍自体が、今日抑止力を失っているとまで言う。
 軍の抑止力は、核兵器に対する抑止力と通常兵器に対する抑止力に分かれる。しかし孫崎氏によれば、中国の軍事的な台頭によって、もはや米国が中国と一戦を構える意思を失っている以上、在日米軍は核に対する抑止力も通常兵器に対する抑止力も、いずれも提供できていない。仮に尖閣諸島などをめぐり日中間で紛争が生じてもアメリカ軍は動かないだろう。ましてや、米本土を核攻撃する能力を持つ相手に対して、他国を守る目的でアメリカが核を使用することなどあり得ない。だから孫崎氏は在日米軍の抑止効果は、もはや存在しないも同然だと言うのだ。
 では、なぜアメリカは、抑止効果の無い海兵隊員を沖縄に配置し続け、新たな基地の建設を強硬に求めるのか。孫崎氏は、アメリカの海兵隊が沖縄にいることの最大の理由は、年間6000億円にものぼると言われる日本の米軍駐留費支援にあると言う。いわゆる思いやり予算だ。
 日本は海外に駐留するアメリカ海兵隊の99%を国内に抱え、しかも、在日米軍の駐留経費の75%を思いやり予算として負担している。ドイツの30%と比べてもこの数字は圧倒的に高い。つまり、アメリカは世界のどこの国よりも日本に海兵隊を置いた方が経済的に好都合であるという理由から、地域の抑止力などとは無関係に、単に世界中に海兵隊を派遣するためのホームベースとして、海兵隊の基地を日本に持ち続けたいというのが、アメリカの本音だと孫崎氏は言うのだ。
 こうなると普天間移設をめぐる迷走は、どうやらアメリカの言い分を鵜呑みにした鳩山政権の独り相撲の感が否めない。しかし、それでも孫崎氏は普天間問題はまだ終わっていないと言い切る。なぜなら、期せずして鳩山政権が沖縄県民の反基地感情に火をつけてしまったからだ。今後、辺野古移設計画を進めようにも激しい抵抗や妨害活動に遭い、基地の建設が不可能になる可能性は低くない。
 孫崎氏は、地元の反対が非常に強い場合、アメリカは辺野古への基地建設をごり押しはしないだろうと言う。なぜならば、アメリカは、反基地感情を刺激し過ぎることで、それが嘉手納など、アメリカ軍の海外戦略の生命線にまで飛び火することを最も恐れているからだという。嘉手納などに比べればアメリカにとって普天間問題は小さな問題であり、それが少しこじれたくらいで日米関係が損なわれることもないし、問題が他の基地へと波及することは、アメリカは決して望んでいないからだ。
 8ヶ月前にマル激に出演した際に孫崎氏が持論として展開した「日米関係において日本はすでにアメリカに対して対等以上の関係にある」と考え合わせると、結局今回の普天間移設をめぐる迷走は、交渉巧者のアメリカにしてやられたというだけのことだったのかもしれないという気さえしてくるではないか。
 日本がアメリカを失いたくない以上に、アメリカは日本を失いたくないと主張する孫崎氏と、米海兵隊の抑止力や、それを理由に辺野古への移設に踏み切った鳩山政権の意思決定のあり方などについて議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・インターネットを政府の規制下に置く放送法改正が衆院を通過



<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第471回(2010年04月24日)
交渉の全てを知る守屋元次官が語る普天間移設問題の深淵
ゲスト:守屋武昌氏(元防衛事務次官)
http://www.videonews.com/on-demand/0471480/001417.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第440回(2009年09月12日)
シリーズ・民主党政権の課題2
「対等な日米関係」のすすめ
ゲスト:ゲスト:孫崎享氏(元外務省国際情報局長)
http://www.videonews.com/on-demand/431440/001228.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第385回(2008年08月16日)
なぜ日本には米軍基地があるのか
ゲスト:ケント・カルダー氏(ジョンズ・ホプキンス大学大学院教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0381381390/000788.php

■プレスクラブ(2010年05月28日)
鳩山首相、普天間移設問題で28日夕に会見
http://www.videonews.com/press-club/0804/001445.php

■プレスクラブ(2010年05月28日)
福島社民党党首会見、北沢防衛相会見、岡田外相会見
http://www.videonews.com/press-club/0804/001446.php

■特別企画
迷走する普天間基地移設問題
http://www.videonews.com/special_okinawa/index.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2010-05-30 - 11:48:44
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 番組をご覧いただければ分かるように、僕が従来反復してきた「既存製造業が中国と戦いやすくなるように身軽にする小泉=竹中的な『構造改革』と、どのみち中国に追いつかれる産業から中長期で比較優位を維持できる産業領域にシフトする『産業構造改革』では意味が違う」という物言いは、野口悠紀雄教授のご研究に直接・間接の影響を受けたものです。その野口悠紀雄教授に、最近の御著書での主張群を中心とする持論を、存分に展開していただきました。


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■マル激トーク・オン・ディマンド 第475回(2010年05月22日)
なぜ日本経済の一人負けが続くのか
ゲスト:野口悠紀雄氏(早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_475_pre.asx

 08年の金融危機から世界経済が着実に回復へと向かう中、日本だけが取り残されている。経済危機の震源地だったアメリカが、2007年から2011年までの間に3.6%の成長を見込む一方で、日本はその間2.7%ものマイナスの成長となっている。これは他の先進国と比べても特に低く、日本一人負けの様相と言ってもよい。
 かねてより日本経済の構造問題を指摘してきた早稲田大学大学院ファイナンス研究科の野口悠紀雄教授は、この最大の理由は、日本経済が依然として輸出依存型製造業中心の古い構造から抜け出せてないからだと言い切る。
 たしかにリーマンショック後の金融危機における日本企業の傷み方は、アメリカ以上に大きかった。企業利益の落ち込みは、米国企業が3割だったのに対し、日本は7割以上にも及んだ。
 2002年以降の日本の好景気は、アメリカの消費拡大に伴う自動車などの輸出増に大きく依存していた。そして、アメリカの自動車販売の好調ぶりは、経済危機の原因とされたサブプライムローンなどの住宅ローンと密接に関係していた。多くのアメリカ人が、住宅価格が値上がりを続ける中で、住宅を担保にしたローンで自動車を購入していたからだ。これは住宅価格が暴落すれば一気に萎むバブルに過ぎなかったと野口氏は言う。
 経済危機は各国を等しく襲うが、製造業の占める割合が高い日本は、経済危機で輸出が冷え込むと、たちまち設備過剰となる。しかし、製造業の設備過剰は簡単に解消することができないために、日本経済の回復が遅れているのだと野口氏は指摘する。
 一方、危機の震源地のアメリカの回復が早かった理由は、アメリカがすでに産業構造の改革に成功しているためだ。野口氏によれば、アメリカは70年代、80年代に日本の工業製品が大量に入ってきたことで、脱製造業化を余儀なくされた。その過程で貿易摩擦や失業などの痛みは伴ったが、現在は製造業の比率が日本の半分ほどしかない脱工業化経済を達成している。
 組合が強く政治力のある自動車産業だけは、構造改革に失敗したため、金融危機で致命的な痛手を受けているが、脱工業化の結果生まれてきた金融業やIT産業など世界の先端産業の成長が、アメリカ経済の回復を支えている。製造業を守り、経済構造改革に失敗した日本と、既にそれを完了していたアメリカの差が、ここに来て両国経済の明暗を大きく分けていると野口氏は言う。
 90年代以降、韓国、台湾、中国などの新興国が次々と工業化し、賃金の安いそれらの国と製造業で競争しても勝負にならないことは明らかだった。ちょうど日本から攻め込まれたアメリカが脱工業化を図ったのと同じように、そこで日本は脱工業化・産業構造の転換を図る必要があったが、日本は金融緩和、円安、緊縮財政で輸出依存型の製造業を保護する政策をとった。
 要するに古い産業構造を延命させたということになる。その間政権の座にあった小泉内閣は、構造改革政権と呼ばれることが多いが、野口氏はこれを言下に否定する。小泉・竹中路線は構造改革などではなく、むしろ旧来の産業構造を守る政策だったと、これを一蹴する。
 日本経済が復活するためには、真の産業構造改革が必要だが、それはまさにアメリカが経験したような、厳しい痛みを伴うと野口氏は言う。日本人が自らの手で痛みの伴う構造転換を図れないのなら、日本は一度廃虚にならなければ、新しいものは生まれない。
 そう言う野口氏が提言する、日本経済復活のための処方箋は苛烈だ。しかし、将来世代のためにもいま大転換をしなければ、日本の未来はないと言い切る。
 日本経済が生き返るためには何をすべきか、日本の進むべき道はどこにあるのか、構造改革論の大御所と称される野口氏と議論した。



<今週のニュース・コメンタリー>

・口蹄疫は適正な対策でも感染拡大が止まらない異例の事態
・小沢一郎氏に再度不起訴処分で意義が問われる検審制度
・ネット選挙運動解禁議論は依然迷走中



<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第473回(2010年05月08日)
日本経済の現状とベーシック・インカムという考え方
ゲスト:飯田泰之氏(駒澤大学経済学部准教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0471480/001428.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第464回(2010年03月06日)
PIGS問題は本当に対岸の火事なのか
ゲスト:井堀利宏氏(東京大学大学院経済学研究科教授)
http://www.videonews.com/on-demand/461470/001375.php

■ニュース・コメンタリー (2010年05月01日)
小沢一郎氏に検察審査会が起訴相当の判断
ゲスト:郷原信郎氏(元検事・弁護士)
http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/001423.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2010-05-24 - 05:16:42
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第474回(2010年05月15日)
「新しい公共」で国のカタチはどう変わるのか
ゲスト:松井孝治氏(内閣官房副長官)

<プレビュー>
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 党のトップ2人を巻き込んだ政治とカネの問題や、迷走を続ける普天間基地移設問題などで、支持率低下に喘ぐ鳩山政権。しかしこの政権が最重要課題として地道に取り組んできた課題がある。「新しい公共」だ。
 鳩山首相が、昨年10月の所信表明演説や今国会の施政方針演説の中で打ち出した概念で、これまで政府や行政が独占的に担ってきた公共的な機能を、民にまで広げ、何でも政府に頼るのではなく、市民同士が協力し、支え合っていける社会を構築しようというもの。
 鳩山首相のスピーチライターとして、首相の一連の国会演説を起草した松井孝治官房副長官は、国会演説を用意するにあたり、首相自身が一番訴えたいことは何かと問うたところ、迷わずに「新しい公共」と「地域主権」の答えが返ってきたという。
 松井氏は「新しい公共」を、国家よりも社会を重視する「民主党のDNA」とも呼ぶべき基本理念だと説明する。また自身も官僚出身でありながら、一部のキャリア官僚だけが公共を担い、それを議論しうるといった官僚のエリート意識や特権意識には現役時代から疑問を抱いてきたと言う。官僚を頂点とする明治以来の中央集権体制に基づく日本の統治構造を根底から変えたいという思いが、鳩山首相にも松井氏自身にもあると松井氏は言う。
 近代以前には、人々は国家に依存することができなかったために、様々な形で自助の仕組みを構築していた。しかし、近代に入り、とりわけ後発工業国だった日本は、市民を国家に帰属させるために、得てして市民社会から自助機能を奪い、国家が公共的な機能を独占するようになった。つまり「新しい公共」とは、長年「官」が独占してきた「公」の機能を、その本来の持ち主である「民」へ奉還することを意味していると松井氏は説明する。
 また「公」の「民」への奉還には、行政のスリム化というメリットもある。何でもかんでも政府が担うことで肥大化した行政組織から、本来は民が果たすべき「公」の機能を切り離すことで、より効率的な政府に生まれ変わる一助ともなると松井氏は言う。
 では、「民」と一言で言っても、誰が「新しい公共」の担い手となるのか。松井氏は、それはNPOであり、地域社会であり、企業であり、一人ひとりの個人であり、そして政府でもあると答える。これまで政府や行政の中に偏在していた公共領域が、担い手と担い手の間にまたがり、お互い役割を分担し、協力しながら担うのが、松井氏が説く「新しい公共」の姿だ。 
 とはいえ、これからの新しい公共の担い手の中心的な存在となることが期待されるのは、NPOなどの市民セクターを置いて他には考えられない。しかし、日本はこれまでこの分野への手当てが明らかに先進国としては後手に回っていた。
 NPO先進国の英米では、政府も顔負けの慈善事業や公益事業を行うNPOの活動を個人や企業から幅広く集められる巨額の寄附金が支えている。個人寄附のみをとっても、米国は20兆円、英国は1.5兆円で、2600億円という日本のそれを大きく上回る。
 新しい公共のあり方を話し合うために今年1月から首相官邸で定期的に開かれている「新しい公共円卓会議」では、既にNPOへの寄附に対する優遇税制措置の拡充が合意され、政府税調でも2011年度から認定されたNPOに寄付をした個人に対しては、50%の税額控除を認める方針が決定している。
 こうした優遇税制は、税金の使い道を一定の範囲内で個人に委ねるという税制政策の大きな転換を意味している。伝統的に寄附文化の弱い日本で、税制を優遇するだけで本当に寄附が増えるのかという疑問も少なからずある。また制度が悪用されたり、税収が減ることのディメリットも考えられる。しかし、松井氏は多少のハードルやリスクがあったとしても、公益的な活動をする市民セクターを支援することの意義は、それを大きく上回ることを強調する。
 鳩山政権の「新しい公共」は、国のかたちや私たちの社会をどう変えることになるのか。「新しい公共」の思想的背景から具体的事例まで、官房副長官としてこのテーマを担当する松井氏と議論した。



<今週のニュース・コメンタリー>

・くい打ち桟橋方式は本当に環境に優しいのか
・パロマ元社長の有罪判決の影響



<関連番組>

■インタビューズ(2010年05月15日)
郷原信郎氏(弁護士・名城大学教授)インタビュー
http://www.videonews.com/interviews/001999/001434.php

■インタビューズ(2010年05月15日)
桜井国俊氏(沖縄大学教授)インタビュー
http://www.videonews.com/interviews/001999/001433.php
投稿者:miyadai
投稿日時:2010-05-17 - 16:08:42
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第471回(2010年04月24日)
交渉の全てを知る守屋元次官が語る
普天間移設問題の深淵
ゲスト:守屋武昌氏(元防衛事務次官)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_471_pre.asx

 普天間移設交渉のすべてを知る男が、ついに重い口を開いた。
 鳩山首相が5月末までの決着を約束した普天間移設問題は、依然迷走を続けているが、沖縄とアメリカの双方を満足させられる解決策が事実上あり得ない状況となった今、この問題が政権の屋台骨を根幹から揺るがす事態はもはや避けられそうにない。
 そもそもなぜこのような事態に立ち至ったのかについては、鳩山首相を含む与党民主党の未熟さやブレに非があったことは論を俟たない。
 しかし、自民党政権下で4年余の長きにわたり防衛事務次官を務め、そもそも普天間移設問題の発端となった1995年の沖縄少女暴行事件以来、最前線で沖縄とアメリカ政府との交渉に当たってきた守屋武昌氏は、昨年まで安全保障情報へのアクセスが制約される野党の座にあった民主党が、この問題の複雑さや怖さを理解できていなかったとしても、それを責めることはできないと同情的な立場をとる。
 それは、「防衛省の天皇」の異名を取るまでに日本の防衛のトップに君臨した守屋氏にさえ、「結局最後まで自分は沖縄に手玉に取られた」と言わしめるほど、この交渉がいかに複雑かつ手強いものだったかを、氏自身が身をもって知っているからに他ならない。
 10年以上も普天間移設交渉に関わってきた守屋氏は、交渉の困難さをしみじみと語るが、中でも驚愕の事実として氏があげるのが、一旦キャンプシュワブ陸上案で決まりかけていた普天間の移設案が、地元沖縄の自治体や経済団体がアメリカ政府を動かすことで、ひっくり返されてしまったことだった。
 守屋氏は当初から、沖縄県内に米軍基地を新設することなど、沖縄県民が許すはずがないとの前提に立ち、普天間の移設先は既存の米軍基地内しかあり得ないと考えていた。そして、嘉手納基地統合案、嘉手納弾薬庫案などを経て、キャンプシュワブ陸上案というものが浮上した。基地の新設にあたらず、しかも海の埋め立てによる環境破壊も伴わないもっとも合理的と思われたこの案で、日本側がほぼ固まりかけていたその時、突如守屋氏の元に、現在の辺野古沖案の元になる、海の埋め立てを前提とする別の案が、アメリカ側と地元沖縄からほぼ同時に提示されたという。
 いくら守屋氏と言えども、地元沖縄と米政府が共に推す案に反対できるはずがない。実はこの案は米軍基地との親交が深い沖縄の自治体や経済団体が、基地の司令官らを説得し、現場の司令官らの要望に応える形で、米政府が正式に推してきた。地元住民との融和を優先する米政府の弱みをついた見事な交渉術だったと守屋氏は苦笑するが、日本政府がベストと考えていたキャンプシュワブ陸上案は、このようにいとも簡単にひっくり返されたのだった。
 こうして、日本政府は困難が伴うことを知りながら、沖縄県の経済団体とアメリカ政府が推す辺野古沖案が、L字案、V字案などの変遷を経て、最終合意案となっていく。
 もともとこの案は埋め立て工事を伴うために、地元の土建業者が潤うという背景があることはわかっていた。しかし、より大きな問題は、この「辺野古沖」案が、いくつもの無理筋を含んでいることだった。そもそもこれでは基地の新設になり、一般の沖縄県民の反発は必至だった。しかも、埋め立てを伴うため、環境団体などの反対運動に拍車がかかるのも目に見えていた。
 基地の新設にあたるこの案を、沖縄の一般市民が歓迎するはずもない。現行案への根強い反対運動と環境破壊への懸念は、当然のことながら、野党時代の民主党議員たちの耳に入ってくる。そして、この問題の怖さも底深さも知らない民主党は、政権獲得を前に「県外」などというナイーブな公約を打ち上げてしまう。
 鳩山政権が抱える難題の解決方法について「沖縄への思いは人一倍強い」と言う守屋氏は、本当の意味で沖縄の人の利益に叶う対応とは何かを今あらためて考えるべきだと言う。
 沖縄には基地で潤う人と基地に苦しむ人がいて、これまでは主に基地で潤う人が沖縄を動かしてきたと守屋氏は言う。しかし、氏の試算では年間6000億円を超えるという公共事業等を通じて彼らに配分してきたお金を、これからは基地で苦しんでいる個人に直接手渡すような政策が必要だと守屋氏はいう。
 その一方で、防衛当局のトップを務めた守屋氏は、安全保障面でこの問題を甘くみてはいけないと警鐘を鳴らす。
 沖縄は東アジアからインド洋に至る、今やグローバル経済の中心とも言うべき大経済圏の中心的な位置にあり、周辺には数々の不安定な要素が存在する。そのどこかで紛争が起き、経済活動が影響を受けるようなことがあれば、世界経済が壊滅的な打撃を受けることは必至だ。95年に普天間返還を決定した当時、北朝鮮の核開発を東アジアにおける最大の脅威と考えていたアメリカは、9・11以降沖縄の地政学的重要性の認識を新たにしている。そのアメリカは、グローバルな安全保障のためにいち早く展開できる海兵隊を一定規模で沖縄に配備することが必要だと考えているし、それは、アジア全域が望むことでもあると守屋氏は言う。
 鳩山政権は泣いても笑っても5月末までには、一見解が存在しないかに見えるこの連立方程式の答えを出さなければならない。その難問を解くカギを、守屋氏との議論の中に探してみた。



<今週のニュース・コメンタリー>

・明石歩道橋事件で初の強制起訴
 検察役を務める安原浩弁護士に聞く
・郵政民営化法案のどこが問題なのか
 町田徹氏(経済ジャーナリスト)
・記者クラブアップデート
 検察が記者会見開放を決定


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第459回(2010年01月30日)
なぜ普天間問題がこじれるのか
ゲスト:鈴木宗男氏(衆議院外務委員長)
http://www.videonews.com/on-demand/451460/001351.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第465回(2010年03月13日)
マル激スペシャルウィークin沖縄
http://www.videonews.com/on-demand/461470/001388.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2010-04-25 - 05:33:25
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第470回(2010年04月17日)
職業政治家には日本は変えられない
ゲスト:河村たかし氏(名古屋市長)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_470_pre.asx

 国政時代に度重なる民主党代表選への出馬などで話題を呼んできた河村たかし氏が、今度は名古屋でひと騒動を引き起こしている。昨年4月に歴代最多得票数で当選、市長に就任したかと思えば、市会議員定数と議員報酬の半減案や、市民税の10%減税、市の権限を地域住民に委譲する地域委員会の設立を定める条例案などを立て続けに提出し、市議会と真っ向から対立しているのだ。
 3月24日に閉会した名古屋市議会では、市長が提出した議員の定数と報酬を半減する条例案は73対1で否決された。賛成の一票は河村氏の元秘書だというから、市長の提案への事実上全会一致での拒否表明と言っていい。
 かと思えば、こうした議会の対応を不服とする市長は、支援者らとともに議会の解散請求(リコール)に必要な署名集めの意思を表明するなど、こちらもまた全面対決姿勢を強めている。
 そこで今週のマル激は、その河村たかし氏を名古屋市役所に訪ね、自らが「庶民革命」と名づける河村流改革の真意について話を伺った。
 かねてより議員のボランティア化が持論の河村氏は、そもそも議員が税金で身分保障されることに日本の民主主義が成熟しない根本原因があると主張する。議員は身分保障されると長く続けることが目的化し、いつまでも議員を辞めなくなる。新人が当選しにくい状況になるし、二世や三世や国会議員秘書、特定団体の出身者らが議会の多数を占めることになる。市民の政治参加への関心は失われ、投票率も下がる。
 それをいいことに、議会は民意を反映させるのではなく、自分たちが特権を享受するためのお手盛り予算を通し続けるようになる。つまり議員の職業化が、政治の腐敗を招くというのが、河村氏の主張だ。
 もともと国王のムダ遣いで重税をかけられるのを防ぐためにイギリスで議会が生まれたように、本来、議会の主要な役割は税金の使われ方をチェックすることだ。しかし、自分自身の身分が税金で保障され、特権化した議員は、税金をチェックする議員ではなく、チェックされる国王の側にいると河村氏は批判する。
 また、河村氏は無駄を無くすためには減税がもっとも効果的だと説く。民間企業と違い、競争相手のいない行政には、よりいいものを少しでも安くという競争原理が起こらない。そのため減税で人為的に下降圧力をかけない限り、いつまでたっても無駄は無くならないというのだ。
 しかし、河村氏の庶民市長としての真骨頂は、減税で市民に還元された税金がどう使われるかについての考え方だ。河村氏は、市民の手元に戻ってきた税金が、NPOなどの公益的な事業に使われることを期待しているという。政治のボランティア化も市民税還元も、最後は「自分たちの地域は自分たちでつくる」という、河村氏が考える地域主権の理念に結びつく。
 そして、その根幹を成すのが、地域委員会だという。地域委員会とは名古屋市を小学校区単位に分け、各地域の市民から選挙で選ばれた委員が市から割り当てられた予算を使って地域の運営を行う制度だ。すでに市内8つの地区でモデル事業が実施されているが、これをさらに拡大しようと市長が提出した条例案を議会は否決している。
 地域主権は「国のかたちを変える」と宣言して政権の座に就いた民主党が掲げる、重要な政策理念でもある。そして、民主党国会議員から名古屋市長に転じた河村氏が今、名古屋で直面している壁は、もしかすると今後日本が地方分権を進める際に、避けては通れない壁なのかもしれない。河村市長に名古屋プロジェクトの現状を聞いた。



<今週のニュース・コメンタリー>

・ネット選挙解禁で選挙はどう変わるか
 解説:大田貴昭氏(早稲田大学政治経済学術院助手)
・タイ騒乱の知られざる側面



<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第101回(2003年02月21日)
なぜ政治は機能しないのか
ゲスト:河村たかし衆議院議員(民主党)
http://www.videonews.com/on-demand/0101101110/000500.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第169回(2004年06月18日)
誰がインターネット選挙の実現を邪魔しているのか
http://www.videonews.com/on-demand/0161161170/000568.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2010-04-19 - 08:38:09
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第469回(2010年04月10日)
なぜ日本はデフレを脱することができないのか
ゲスト:高橋洋一氏(政策シンクタンク「政策工房」会長、嘉悦大学教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_469_pre.asx

 現在日本が直面する最大の課題を問われれば、迷わずデフレの脱却と答える人が多いのではないか。雇用不安も財政赤字も、その根底には1990年代から始まったとされるデフレがある。しかし、なぜ鳩山政権はこの単純な命題を、一向に実現できないのだろうか。
 元財務官僚で、現在は自ら立ち上げた政策シンクタンク「政策工房」の会長を務める高橋洋一氏は、その原因はもっぱら日銀の無策とそれを放置する鳩山政権にあると言う。日本経済が明らかな需給ギャップを抱えているにもかかわらず、日銀は金融政策という最も基本的な施策を実施しようとしない。そして、鳩山政権はそれを放置している。鳩山首相はどうも、政府は日銀に対してそうした注文を一切つけてはならないものだと官僚から思い込まされているようだと、高橋氏は言う。
 他にも「官僚の書いた作文をそのまま出しただけ」(高橋氏)の成長戦略や、展望もないまま国営回帰を図る郵政改革法案など、ここまで鳩山政権が打ち出してきた政策、とりわけ経済政策には、疑問符がつくものが多い。高橋氏自身は子ども手当や高校無償化など、自民党時代の公共事業を通じた再配分から家計への直接給付の政策転換には一定の評価を与えると言うが、その大前提だったはずの予算の総組み替えも実現できていない。その結果が、戦後最大となる92兆円の予算であり、1946年以来となる国債発行額が税収を上回るという異常事態だった。
 高橋氏は鳩山政権のこうした体たらくを、政治主導が実現できていないために、官僚に手玉に取られている結果だと指摘する。
 そもそも鳩山政権が、総選挙で勝利した直後に「政権移行チーム」を作らなかったことが、ボタンの掛け違いの始まりだったと高橋氏は言う。いざ政権が発足すれば、日常の公務に忙殺されることはわかりきっていた。政権移行チームはそうなる前に、新政権の意思や優先すべき政策を明確に打ち出し、それに協力する意思のある官僚を枢要な地位に就ける意味がある。政権発足後に政務三役で役所に乗り込んでいっても、多勢に無勢で勝負にならないからだ。
 ところが鳩山政権の下、首相官邸を始め各省庁で働く秘書官や補佐官らは、いずれも自民党政権当時のままだ。これでは政権交代の真価は発揮できないし、政治主導など実現できるはずがない。
 もともと民主党はそのような状況に陥らないために、100人以上の国会議員を政府に送り込むことを公約していた。しかし、政権の枠組みを決める場所になる政権移行チームが作られなかったため、そのために必要となる国会法や内閣法の改正準備がまったく進まなかった。その結果が、「古い道具のまま新しいことをしようとする」(高橋氏)ようなことになってしまった。
 政権発足時の準備不足が全ての悪循環を生んでいると指摘する高橋氏は、その解決策として、民主党の若手に比較的多い官僚OBの政府への登用を進言する。彼らなら官僚の手口を熟知しているし、法案作成のノウハウも持っているため、官僚の策略を未然に防げるし、官僚に依存せずに法案の作成が可能になるというのがその理由だ。法案さえ作ることができれば、国会で過半数を持っている連立与党の立場は強い。
 とは言え、これとて小沢一郎幹事長の意向次第で、実現の可能性はおぼつかない。どうやら鳩山政権が抱えるガバナンス欠如の問題は、民主党という組織のガバナンスの欠如に、直接の原因があるのかもしれない。
 デフレを脱するための処方箋から政権運営のあり方まで、鳩山政権発足後の半年間に噴出した諸問題を高橋氏と総ざらいした。


<今週のニュース・コメンタリー>

・なぜ日本人がスペースシャトルに乗っているのか
・地裁が密約文書の開示を命令
 沖縄密約訴訟で原告全面勝訴 
・中国による邦人の死刑執行と日本の人権外交の限界



<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第464回(2010年03月06日)
PIGS問題は本当に対岸の火事なのか
ゲスト:井堀利宏氏(東京大学大学院経済学研究科教授)
http://www.videonews.com/on-demand/461470/001375.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第460回(2010年02月06日)
日本経済の復活のための処方箋
ゲスト:池尾和人氏(慶應義塾大学経済学部教授)
http://www.videonews.com/on-demand/451460/001356.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第393回(2008年10月11日)
民主党マニフェストと霞ヶ関埋蔵金
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0391391400/000796.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第383回(2008年08月02日)
われわれはどれぐらい本当の中国を知っているのか?
ゲスト:土井香苗氏(弁護士、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)
http://www.videonews.com/on-demand/0381381390/000786.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第256回(2006年02月23日)
日米偽装同盟はここから始まった
ゲスト:西山太吉氏(元毎日新聞記者)
http://www.videonews.com/on-demand/0251251260/000657.php



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投稿者:miyadai
投稿日時:2010-04-11 - 13:00:27
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第468回(2010年04月03日)
密約は本当に必要だったのか
ゲスト:春名幹男氏(ジャーナリスト・外務省密約有識者委員会委員)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_468_pre.a
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 これこそが政権交代の最大の成果なのかもしれない。
 岡田外務大臣は、自らの肝いりで立ち上げた日米密約に関する有識者委員会が、核の持ち込み、朝鮮有事の際の日本からの米軍の出撃、沖縄返還時の現状回復費の肩代わりの3つの密約が、日米間で交わされていたとする検証結果を、3月9日、発表した。
 特に日米安保条約改定時の核の持ち込みと、沖縄返還時の原状回復費の肩代わりの2つの分野では、「広義」との条件付きながらも、過去の自民党政権がその存在を言下に否定してきた密約の存在を政府が正式に認めたことは、戦後史の中でも特筆すべき出来事と言っていいだろう。
 有識者委員会のメンバーとして、密約の検証作業に携わったジャーナリストの春名幹男氏は、核持ち込みの事前協議に対する認識が密約に当たるかどうかをめぐり、委員の間にも意見の相違はあったが、春名氏自身は、これは事実上核の持ち込みを容認するものであり、明確な密約だったとの認識を示した。
 今回の検証作業で新たに発見された引き継ぎ文書などによれば、事前協議に対して日米間の認識に違いがあることは初めから双方とも理解しており、あえてその違いを「お互いに深追いしない」ことが記録されていたという。核兵器の存在を「肯定も否定もしない」アメリカのNDCD政策を知りながら、核の持ち込みついての事前協議の申し入れがないので、核の持ち込みはないと言い切ることが密約そのものであり、日本は国際的には非核三原則を謳いながら、実際は核の寄港や通過は黙認する非核2.5原則だったと春名氏は言う。
 1959年から1960年当時、安保条約改定交渉をめぐって国内は騒然としていた。国会は紛糾し、デモも毎日のように起きていた。とてもではないが、核兵器を搭載した艦船の日本への寄港を公然と容認できるような政治状況ではなかった。
 また、そもそも日米では核に対する感情や考え方が180度異なっていた。その原点は広島・長崎への原爆投下にあるとの見方を春名氏は示す。日本人の誰もが核の恐怖を脳裏に焼き付けた原爆投下は、米国にとって兵器としての核の有効性を確認するものだった。それ以後アメリカは、戦後の軍事戦略を核兵器を中心に組み立てていった。
 日本国民の核アレルギーは簡単に取り除けるものではない。しかし、冷戦下において東西両陣営の核開発競争が進む中、日本の安全保障の確実なものにするためには核兵器を戦略の中心に据えるアメリカの加護を受けるしかない。密約はそう判断した当時の政権の苦渋の決断であり、密約そのものは合理的なものだったと春名氏は言う。
 しかし、国会や国民のチェックを受けないばかりか、事実上国民を騙すことになる密約の妥当性を判断するためには、後世まで記録が保存され、それが一定の期間と条件の下で開示されることが不可欠となる。今回の密約騒動も、まずアメリカ側で機密が解除された密約文書が見つかったことがきっかけだった。
 ところが日本側の調査では、密約の証拠を裏付ける重要文書の多くが破棄されるなどして行方不明になっていることが判明した。3月19日の衆院外務委員会では東郷和彦元条約局長が、自らが整理し後任に引き継いだはずの密約ファイルのうち、最も重要な文書のいくつかが消えていることを明らかにしている。また、外務省が大量の文書を廃棄していたという情報を東郷氏が証言している。
 外務省は何を隠したかったのか。春名氏によると、情報施行前の文書大量廃棄は、各省庁でも起きており、外務省に限らないとはいうが、特に外交密約は文書が破棄されてしまえば、真実は永遠に闇の中に葬られてしまう。脱官僚、政治主導を標榜する民主党政権の岡田外相が、外交文書の保存・公開基準を定める省令の制定を急いでいることは評価に値するだろう。
 また、今回の密約調査で、政と官の関係にも問題があったことが明らかになった。高度な政治判断だったはずの外交密約が、いつの間にか官僚の引き継ぎ事項となってしまったために、説明責任を負いたくない官僚が、その証拠を隠滅するというようなことが起きてしまったからだ。仮に密約を認めるとしても、なぜそれが政治家から政治家へと引き継いでいくことができなかったのかは検証を要するはずだ。
 戦後史上初めて明らかになった密約の内容とその妥当性を、委員の1人として実際の検証作業にあたった春名氏とともに議論した。



<今週のニュース・コメンタリー>

・国松長官狙撃事件に見る公安警察の劣化
 報告・青木理氏(ジャーナリスト)
・自殺について警察資料から見えてきたもの
 解説・清水康之氏(ライフリンク代表、内閣府参与)
・普天間移設問題におけるアメリカの真意
 解説・神浦元彰氏(軍事ジャーナリスト)
・記者会見オープン化調査への疑問



<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第465回(2010年03月11日)
マル激スペシャルウィークin沖縄
沖縄密約と普天間移設問題の接点
ゲスト:我部政明氏(琉球大学法文学部教授)
http://www.videonews.com/on-demand/461470/001386.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第446回(2009年10月24日)
シリーズ・民主党政権の課題5
今、自殺対策は政治の出番だ
ゲスト:清水康之氏(自殺対策NPO法人ライフリンク代表)
http://www.videonews.com/on-demand/441450/001265.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第433回(2009年07月25日)
密約問題が示す無法地帯と化した日本外交の現実
ゲスト:河辺一郎氏(愛知大学現代中国学部教授)
http://www.videonews.com/on-demand/431440/001133.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第256回(2006年02月23日)
日米偽装同盟はここから始まった
ゲスト:西山太吉氏(元毎日新聞記者)
http://www.videonews.com/on-demand/0251251260/000657.php

■ビデオニュース・オン・ディマンド (2009年12月03日)
歴史の事実を伝えることが日本の将来に有益
吉野元アメリカ局長が沖縄密約の存在を法廷で証言
http://www.videonews.com/videonews_on_demand/0901/001297.php

■プレスクラブ (2009年07月13日)
核密約を否定した政府答弁は修正を
河野太郎 衆院外務委員長記者会見
http://www.videonews.com/press-club/0804/001117.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2010-04-05 - 08:18:14
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第467回(2010年03月27日)
霞ヶ関文学入門
ゲスト:岸博幸氏(慶應義塾大学大学院教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_467_pre.asx

 民主党政権が目指す「政治主導」がどうも思わしくない。公務員制度改革関連法案では肝心の天下り規制や人件費の2割削減が先送りされてしまったし、地球温暖化対策基本法案も民主党の選挙公約から大きく後退してしまった。一見政治主導を装いながら、どうも鳩山内閣の政務三役が、霞ヶ関官僚に手玉に取られている感が否めない。
 そこで今週のマル激では、民主党が唱える脱官僚・政治主導が実現できない原因の一つとして、官僚が政治や立法過程をコントロールするために駆使する霞ヶ関の伝統芸とも呼ぶべき「霞ヶ関文学」に注目してみた。
 霞ヶ関文学とは、法案や公文書作成における官僚特有の作文技術のことで、文章表現を微妙に書き換えることで別の意味に解釈できる余地を残したり、中身を骨抜きにするなど、近代統治の基本とも言うべき「言葉」を通じて政治をコントロールする霞ヶ関官僚の伝統芸と言われるもののことだ。
 霞ヶ関文学では、たとえば特殊な用語の挿入や、「てにをは」一つ、句読点の打ち方一つで法律の意味をガラリと変えてしまうことも可能になる。また、特定の用語や表現について世間一般の常識とは全く異なる解釈がなされていても、霞ヶ関ではそれが「常識」であったりする。若手官僚は入省後約10年かけて徹底的にこのノウハウを叩き込まれるというが、明確なマニュアルは存在しない。ペーパーの作成経験を通じて自然と身につけるものだといわれるが、あまりに独特なものであるため、政治家はもちろん、政策に通じた学者でも見抜けないものが多いとも言われる。
 通産官僚として約20年間霞ヶ関文学を駆使し、その後竹中平蔵大臣の政策秘書官として、官僚の霞ヶ関文学を見抜く役割を果たしてきた岸博幸慶應義塾大学大学院教授は、そもそも霞ヶ関文学の出発点は日本語を正確に定義して書くという、行政官僚に本来求められるごく当然のスキルに過ぎないと説明する。しかし、法律や大臣の国会答弁の文章を明確に書き過ぎると、自分たちの裁量が狭められたり、官僚が何よりも重んじる省益を損なう内容になる場合に、官僚の持つそのスキルが、本来の趣旨とは異なる目的で使われるようになってしまった。そして、そのような意図的な書き換えを繰り返すうち、法案や大臣の国会答弁で使われる単語や表現の意味が、一般常識とはかけ離れたものになってしまったと言うのだ。
 ほんの一例をあげれば、道路公団や郵政改革でよく耳にする民営化という言葉があるが、「完全民営化」と「完全に民営化」とが、霞ヶ関文学では全く別の物を意味すると言う。「完全民営化」は株式と経営がともに民間企業に譲渡される、文字通りの民営化を指すが、「完全に民営化」になると、法律上3パターンほどあり得る民営化のどれか一つを「完全」に実現すればいいという意味になるというのだ。つまり、「完全に民営化」では、一定の政府の関与が残る民間法人化や特殊法人化でも良いことになるという。しかも驚いたことに、霞ヶ関ではそれが曲解やこじつけではなく、ごくごく当たり前の常識だと言うのだ。
 岸氏が竹中大臣の補佐官として政府系金融機関改革に取り組んでいたとき、官僚が滑り込ませてきた、この「に」の一文字に気づき、法案を突き返したことが実際にあったという。政府系金融機関が「完全民営化」されることで天下り先を失うのを嫌った官僚が、政治決定の段階では入っていなかった「に」の一文字を、法案の中に潜り込ませてきたのだ。
 他にも、全く同じ文章でも、句読点を打つ場所を変えることで意味が変わったり、単語の後に「等」をつけることで、事実上何でも入れられるようにしてしまうなど、確かに霞ヶ関文学は伝統芸と呼ばれるだけのものはある。
 そして、霞ヶ関文学はそれを熟知した官僚もしくは元官僚にしか見破ることができないが、現在の民主党政権にはそうしたノウハウを熟知した上で官僚を使いこなせる閣僚が少ないため、官僚に取り込まれるか、あるいは無闇に官僚と対立する結果行政の停滞を招くなど、間違った政治主導になっていると、岸氏は苦言を呈する。
 自民党時代の官僚政治を支えてきた霞ヶ関文学の実例を挙げながら、権力の行使において言葉が持つ重要性や、政治主導の実現のために何をすべきかを岸氏とともに議論した。



<今週のニュース・コメンタリー>

・google中国撤退で追い詰められた中国
 解説・佐々木俊尚氏(ジャーナリスト)
・北朝鮮最新情勢とよど号犯人の今
 報告・青木理氏(ジャーナリスト)
・憲政史上初のオープン首相会見の中身



<関連番組>

■ニュース・コメンタリー (2010年03月06日)
温暖化対策基本法案に見る霞ヶ関文学の功罪
http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/001380.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第407回(2009年01月24日)
無法地帯化する霞ヶ関
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0401410/000827.php

■プレスクラブ (2010年03月26日)
鳩山内閣総理大臣記者会見
http://www.videonews.com/press-club/0804/001395.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2010-03-28 - 08:13:47
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第466回(2010年03月20日)
なぜわれわれは社会の敵を求めるのか
ゲスト:弘中惇一郎氏(弁護士)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_466_pre.asx

 ロス疑惑の三浦和義、薬害エイズの安部英、鈴木宗男から加藤紘一、村上正邦、そして武富士の武井保雄から中森明菜、野村沙知代、叶姉妹、堀江貴文、そして今注目を集めている厚生省の村木厚子元局長。いずれも世間を賑わした著名な事件の主人公ばかりだが、この錚々たるメンバーの代理人を務める一人の弁護士がいる。カミソリ弘中との異名をとる弘中惇一郎氏だ。しかも弘中氏は、あたかも検察とメディアがタッグを組み、社会全体からのバッシングに晒された、いわば「社会の敵(パブリック・エネミー)」のような存在となった彼らに、多くの無罪判決や勝訴をもたらしているのだ。
 現在、弘中氏が弁護人を務める人物の一人が、厚労省が絡む郵便制度悪用事件で逮捕・起訴された村木厚子元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長である。人望もあり、事務次官候補の呼び声が高かった村木氏は、健康保険福祉部の企画課長だった2004年、実態のない障害者団体に対して郵便割引制度の適用団体と認める偽の証明書を部下に命じてつくらせたとして、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われている。
 しかし、この公判では、村木氏から指示を受けたとされる部下をはじめ、出廷した証人が次々と捜査段階の供述を覆し、村木氏の事件との関わりを否定するという異例の展開となっている。弘中氏は、村木氏にはそのような不正を働く動機がなく、まことしやかに報じられた政治家からの働きかけも公判で否定されていることを指摘した上で、この事件はそもそも検察が描いた構図に最初から無理があると言い切る。
 そもそも今回の事件は、障害者郵便割引制度を悪用し大量のダイレクトメールを発送して不正な利益を得た企業や団体関係者が逮捕・起訴された郵便法違反事件に端を発する。しかし、郵便法違反ではたかだか罰金刑で終わることを面白くないと見た大阪地検特捜部が、政治家と官僚トップを巻き込み、最初からシナリオありきでつくられた事件ではないかと弘中氏は見る。その背景には東京地検特捜部に対するライバル意識、特捜という看板を掲げるが故に、常に特別な事件をあげなければならないという気負いがあるとも指摘する。
 しかし、「事件をつくる」のは何も検察に限ったことではない。ロス銃撃事件も薬害エイズ事件もメディア報道が先行し、世論が感情的に吹き上がり、それらに後押しされた捜査当局が追随した事件だった。海外を自由に往来し、ブランド品に高級外車などバブルを先取ったような派手な生活を送る三浦氏、血友病の権威であり、特異な話しぶりや振るまいが高圧的に映る安部氏、聖域とされたマスメディア企業の買収に手を染め、社会規範に対する挑発的な言動がエスタブリッシュメントの反感を買った堀江氏。彼らはいずれも、マスコミや世間から容赦のないバッシングを受けつづけた挙げ句に、刑事訴追まで受けるという経過を辿っている。
 特に薬害エイズ事件に関しては、エイズという得体の知れない怖い病気で実際に多くの被害者が出ているという時期に、社会の不安を拭い去るためには、誰かを悪者にして、そこに原因を帰属させることで安心感を得たいという空気が社会全体を覆っていたと弘中氏は言う。
 しかし、現実には血液製剤による薬害エイズ問題は世界各国で起きており、海外では誰一人として臨床医の刑事責任など問われていないと弘中氏は言う。日本で安部氏がマスコミ報道や世間から叩かれて起訴されたのは、まさに人々の不安を静めるためのスケープゴートにされたに過ぎないと弘中氏は主張するのだ。
 しかし、それにしても最近の日本は、社会の共通の敵を見つけることに甚だ熱心のように見える。まずマスメディアがその先導役を務め、どこからか感情のフックを備えたネタを見つけてくる。そして、さんざん祭を盛り上げた上で、最後は真打ち登場とばかりに検察が現れ、悪者を退治して社会正義を貫徹する。それによって社会は溜飲を下げると同時に安堵感を得る。自由人権協会の代表幹事も務めた弘中氏の戦歴は、単に著名な刑事被告人を弁護してきたというだけでなく、著名人でありなおかつ目立つ存在であるが故に、社会が安心を得るための道具に使われた個人の人権を守ってきた歴史でもある。
 その弘中氏は、そうした正義の貫徹にやたらと検察や司直が入ってくる原因として、立法府や政治の機能不全を挙げる。社会の変化に立法システムが対応できず、人々の不全感や不安感が高まる中で、司法が本来の領域を超えて、それを手当する役割まで担うようになっている、あるいはそれを担わざるを得なくなっているというのだ。しかし、本来は立法が果たすべき機能を、逮捕権や公訴権を持った検察や警察が担うようになれば、無理な刑事捜査や人権侵害のリスクを招くことが避けられない。昨今の検察批判は同時に、政治の機能不全にも向けられなければならないということになる。
 「社会の敵」を弁護し、有罪率99.9%といわれる日本の刑事裁判において無罪を勝ち取ることで、検察の行き過ぎをチェックしてきた辣腕弁護士の弘中氏と、検察、司法、メディア、そしてそれらを取り巻く社会状況について議論した。



<今週のニュース・コメンタリー>

・東京都青少年健全育成条例が継続審議に
 なぜ「非実在青少年」の規制が無理筋なのか
・保坂展人氏の八ッ場ダム取材報告
 隠されたヒ素汚染と公共事業中止の対価



<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第458回(2010年01月23日)
検察の捜査について、これだけは言っておきたい
ゲスト:堀江貴文氏(株式会社ライブドア元代表取締役CEO)
http://www.videonews.com/on-demand/451460/001341.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第269回(2006年05月24日)
私が重大犯罪の被告を弁護しなければならない理由
ゲスト:安田好弘氏(弁護士)
http://www.videonews.com/on-demand/0261261270/000670.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第242回(2005年11月09日)
鈴木宗男は何と戦っているのか
ゲスト:鈴木宗男氏(衆議院議員)
http://www.videonews.com/on-demand/0241241250/000643.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第16回(2001年06月22日)
報道被害を生むものとは何か
ゲスト:三浦和義氏
http://www.videonews.com/on-demand/0011/000447.php


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投稿日時:2010-03-21 - 23:38:55
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マル激トーク・オン・ディマンド更新しました〈沖縄スペシャル〉

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■マル激トーク・オン・ディマンド 第465回(2010年03月13日)
マル激スペシャルウィークin沖縄

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 今週のマル激トーク・オン・ディマンドは、マル激スペシャルin沖縄と称して、神保、宮台の両キャスターが沖縄を訪れ、現地のキーパーソンたちとシリーズで「普天間基地移設問題」を始めとする沖縄をめぐる様々な論点を議論した。
 まず、トップバッターとして、神保、宮台両キャスターは沖縄出身の民主党衆議院議員の玉城デニー氏を、沖縄市に訪ねた。一年生議員ながら、名護市長選の結果を「斟酌」する必要は無いと発言した平野官房長官に噛みつくなど、物申す沖縄選出議員として知られる玉城氏は、沖縄からみた「東京政治」のおかしさを厳しく指摘した。
 米兵と日本人女性の間に生まれ、父親を知らずに育ったという自身の出自にも触れながら、政府が沖縄に基地負担を求めるのであれば、それがどのような安全保障論に基づくものなのかをはっきりさせることが必要だと主張する。さしたる明確なビジョンもないまま、単に負担だけを沖縄に強いる現在の米軍基地のあり方が沖縄からいかに不合理なものに見えるかを、玉城氏の歯に衣着せぬ発言が浮き彫りにする。
 次に、マル激は、建築家ながら平和運動家として長年にわたり独自の活動を続けてきた真喜志好一氏の那覇の事務所を訪れた。真喜志氏は辺野古に新たな海兵隊の基地が建設された時、米軍はそこにオスプレイという新型の航空機を配備する計画があることを、独自の調査で突き止めた。しかし、真喜志氏がその事実を明らかにした直後に、その情報は米国防総省のホームページから削除され、実際には今日にいたるまで、米側からも日本政府側からも、オスプレイの配備計画は発表もされていないし、確認もされていない。しかし、オスプレイはこれまで事故が多く、騒音も従来のヘリコプターよりも大幅に大きくなるため、オスプレイ配備が事前に明らかになれば、沖縄で大反対運動が起きることは必至だ。そうした重大な事実を隠したまま、今も続く「普天間の代替地探し」の虚構に、沖縄の人々はとうに気づいていると真喜志は言う。
 真喜志氏はまた、米国防総省は既に1960年代から辺野古に軍港を含む大型の基地を建設する計画を持っており、この「普天間基地移設計画」は、米側から見れば、老朽化した普天間をかねてから希望していた辺野古の新しい基地へと差し替える良い機会に過ぎない、と指摘する。にもかかわらず、日本政府はこれを、危険な普天間基地の返還を実現するためのやむを得ない代償として国民に説明してきた。
 真喜志氏は更に、沖縄本島北部の東村高江で進められている米軍ヘリパッド建設も、オスプレイの練習施設になることを、豊富な資料をもとに説明する。
 その後マル激は、元『噂の真相』の編集長で、6年前に同誌を休刊させた後、沖縄に移り住んだ岡留安則氏を、岡留氏が沖縄で居城としている那覇の居酒屋「瓦屋」に訪ねた。沖縄移住以来、ゴルフ三昧の悠々自適な生活を送っているという岡留氏だが、今や伝説の雑誌となった噂の真相亡き後、メディアの劣化が更に進み、いよいよタブーに挑戦するメディアが一つも無くなったと嘆く。
 その後インターネットやツイッターなど新しいツールの登場で、噂の真相と同じようなことが、遙かに安価にできるようになったことを指摘する岡留氏は、いずれ何らかの形で噂の真相を復活させる計画にも触れる。
 続いて神保、宮台両キャスターは、今回の基地移設問題の発端となった普天間基地を抱える宜野湾市に伊波洋一市長を訪ねた。伊波氏は独自の調査で、アメリカが沖縄駐留中の海兵隊をほぼ丸々グアムに移す計画を持っていることを、アメリカの様々な公文書を通じて明らかにしている。普天間の海兵隊を移す先として辺野古に基地が必要とする日米両政府の主張は、実は中身が空っぽなのではないかというのが、伊波氏の主張だ。実は伊波氏はそのことを民主党政権の中枢に伝えるために、12月に上京しており、その際にビデオニュースでも短い緊急インタビューを行っているが、このたびその話をより詳しく聞いた。
 真喜志氏の話と伊波氏の話を併せて聞くことで、現在の「普天間基地移設問題」がいかに虚構に満ちているかが、次第に明らかになっていった。
 同じ日の夜、われわれは沖縄音楽をベースに世界に向けて新しい音楽を発信し続けるりんけんバンドのリーダー照屋林賢氏を北谷の林賢氏のスタジオ「アジマー」に訪ねた。照屋氏が語る沖縄音楽とそのルーツへの熱い思いに、自分たちの音楽と共同体を守り通して来た沖縄への誇りと、それをとうの昔に失ってしまった本土が様々な不合理な要求を突きつけている構図の背後にある憧憬と差別の混じった感情を感じ取らずにはいられなかった。
 佳境を迎えた沖縄取材は、少女暴行事件に端を発する沖縄の激しい怒りを背景に、当時の橋本政権がアメリカから普天間基地の返還の合意を取り付けた当時の沖縄県知事大田昌秀氏を氏の那覇の事務所に訪ねた。
 知事時代、米軍用地の強制収容の代理署名を拒否して沖縄の意思を明確に示した大田昌秀氏は、普天間返還が決まったその瞬間から、政府はその代替基地を提供することを念頭に置いていたのではないかと推測する。大田氏の懸念は的中し、その後普天間返還問題は辺野古への代替施設建設問題へと大きくシフトし、大田氏の知事選落選によって沖縄県が新基地計画を受け入れた結果、今日に至っている。
 大田氏は歴代の自民党政権は、最初から普天間に変わる海兵隊の基地を提供するつもりだったとの見方を示す。そして、アメリカ側は既に沖縄に兵力を置いておく必要性が無くなっているが、日本側がそれを強く望んでいるために、まだ一定の勢力が沖縄に残っているのではないかと主張する。それが思いやり予算であり、辺野古への新基地建設だと言うのだ。
 大田氏に知事時代に遡り、普天間移設問題が辺野古新基地建設問題にすり替わっていった経緯を聞いた。
 沖縄取材を締めくくる最後に、いわゆる沖縄密約の存在を裏付ける文書を米公文書館で発見した我部政明教授を那覇の琉球大学に訪ねた。
 奇しくもその2日前、日米密約問題に関する外務省有識者委員会の調査報告書が9日に公表され、4つの密約のうち3つが「密約」と認定されたところだったが、我部教授は密約が必要だった理由として、当時の日本政府の二枚舌外交を指摘する。つまり、日本はアメリカの軍事力にはすがりたいが、日本の世論がそれを許さないため、その間に齟齬ができる。そこを密約という形で、アメリカには「どうぞやってください」と言う一方で、日本国民に対しては「それはできないことになっている」と説明する、そんなことを繰り返してきたというわけだ。
 しかし、結局それは嘘をいかに隠すかということに他ならない。我部氏は、外務官僚が「国民をいかに騙すか」の一点にその能力を傾注してきたことに、怒りを隠さない。そして、その嘘をつき通す大前提に「最後は全部沖縄に押しつければいい」とする安直な考えがあったのではないか。
 我部氏に密約問題が露わにする日本外交の暗部と、沖縄問題との接点を聞いた。



<今週のニュース・コメンタリー>

・マル激スペシャルin沖縄から見えてきたもの
・密約が露わにした日本の二枚舌外交の限界
・温対法、痛み分けのなぜ?
 官僚、産業界、組合のどれにも弱い民主党政権の限




<関連番組>

マル激トーク・オン・ディマンド 第459回(2010年01月30日)
なぜ普天間問題がこじれるのか
ゲスト:鈴木宗男氏(衆議院外務委員長)
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マル激トーク・オン・ディマンド 第246回(2005年12月07日)
アメリカ依存から卒業するためにも憲法改正は必要
ゲスト:石破茂氏(元防衛庁長官)
http://www.videonews.com/on-demand/0241241250/000647.php

マル激トーク・オン・ディマンド 第156回(2004年03月19日)
『噂の真相』的ジャーナリズム論と日本メディアの衰退
ゲスト:岡留安則さん (『噂の真相』編集長)
http://www.videonews.com/on-demand/0151151160/000555.php

永田町コンフィデンシャル 第10回(2007年08月07日)
沖縄の声は、未だ届かない
ゲスト:下地幹郎氏(衆議院議員)
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ニュース・コメンタリー (2010年02月27日)
保坂展人リポート 普天間移設問題は普天間移設問題に非ず
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ニュース・コメンタリー (2009年12月12日)
アメリカは本当に怒っているのか
普天間移転問題で抜け落ちている論点
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投稿者:miyadai
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■マル激トーク・オン・ディマンド
第461回(2010年02月13日)

トヨタプリウスのリコールはあれでよかったのか

ゲスト:廣瀬久和氏(青山学院大学法学部教授)


<プレビュー>
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 昨年世界一の自動車メーカーの座に着いたばかりのトヨタ自動車が、今週火曜日、日本での最大販売数を誇る最新型プリウスのリコールを発表した。スリップを防ぐためにブレーキに付けられたABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の設定に対してユーザーから「効きにくい」「スーッと滑る」などのクレ-ムが相次いだことを受けた措置だという。
 今回のリコールは製品の不具合というよりも、ブレーキを制御するソフトの設定が、一部ユーザーの期待と合致しなかった結果と言った方がより正確との指摘もあるが、トヨタの幹部による「ユーザーのフィーリングの問題」などの発言がトヨタの責任逃れと受け止められたことで、トヨタに対する風当たりが俄然厳しくなり、本来であれば安全上問題がある場合にのみ行う「リコール」という厳しい手段に訴えざるを得なくなってしまったようだ。
 しかし、トヨタのリコール発表に際して、失敗学の権威である工学院大学の畑村洋太郎教授(東京大学名誉教授)と弁護士の郷原信郎氏(ともに国土交通省のリコール検討会メンバー)は緊急の記者会見を開き、そもそも今回の問題は自動車の安全基準に抵触するものではなく、ユーザーよってそれを問題と感じたり感じなかったりするという個々人の感覚に依存する面が大きいため、対象車を全て回収して修理する法的な「リコール」には馴染まないとの見解を発表した。両氏は、リコールが要件としている安全性に関わる不具合や欠陥が無くても、一定数のユーザーからクレームがつけばリコールをするのが当然であるかのような前例が作られると、自動車メーカーに多大な負担がかかり、結果的に自動車メーカーの競争力が損なわれたり、回り回ってその負担がユーザーにかぶせられることへの懸念を表明した。
 しかし、トヨタからリコールの届け出を受理した前原誠司国土交通大臣は、トヨタの豊田章男社長に対して、もっと早くリコールされるべきだったと苦言を呈した上で、国民もリコールに対して悪いイメージを持たずに、企業が製造者責任を積極的に果たそうとしていることの現れであると理解して欲しいと発言している。
 ところが前原発言とは裏腹に、リコール発表を受けた大手メディアの報道は軒並み、品質のトヨタがその最新技術の象徴とも呼ぶべきプリウスの不具合を認めたと一斉に報じるなど、トヨタ、とりわけリコールを行ったという事実に対して手厳しかった。依然として日本ではリコール=欠陥のイメージが、根強く残っていることはまちがいないようだ。
 そのような状況の下での今回のトヨタのリコールは果たして正しい判断だったのだろうか。
 消費者法の専門家で、国内外のリコール制度に詳しい青山学院大学の廣瀬久和教授(東京大学名誉教授)は、今回のプリウス問題だけを個別で見れば、果たしてリコールまでする必要があったかどうかの議論は成り立つかもしれないが、この問題はむしろ昨年秋から米国で広がったトヨタ車の品質をめぐる相次ぐトラブルの延長線上にあると見るべきだと指摘する。暴走事故の原因となったフロアマットにアクセルが引っかかる問題やアクセルペダル部品の不具合など、トヨタでは自動車の安全性の根幹に関わる重大な問題が相次ぎ、そのたびにトヨタの対応はことごとく後手に回った。少なくとも消費者の目にはそう映った。その結果、特にアメリカではトヨタが何かを隠しているのではないかといった不信感が広がってしまったと廣瀬氏は残念がる。そのような矢先に日本でもプリウスのブレーキ問題が浮上し、そこでもトヨタ幹部による「フィーリング」発言など、責任逃れとも受け取れる対応が大きく報じられたため、トヨタに対する不信の念が決定的なものになってしまったのだと言うのだ。
 今回のトヨタの問題は、個々の技術的な問題というよりも、トヨタという企業の体質が問われている面が多分にあると廣瀬氏は見る。特に透明性や公正さを重んじる米国では、責任逃れや隠蔽はことさらに重大な問題となり、懲罰的賠償責任の対象となる。そのため自動車メーカーは、積極的にリコールを行い、責任を果たす姿勢を見せることが自身にとってもメリットとなる。
 しかし、日本ではリコール=欠陥品と捉える風潮が依然として根強い。つまり日本ではリコールなど責任を全うするための行動を取ると、それがあたかも欠陥や非を認めたかのように受け取られてしまうために、企業は迅速にリコールなどの対応が取りにくくなっている。
 日本でも三菱ふそうタイヤ脱落事故などを機に2000年以降リコールの件数が急増している。リコールはもはや自動車メーカーにとって追い込まれた末の最後の手段ではなく、ユーザーとの協力のもとでより安全な製品を作っていくために積極的に活用する手段となっている。これが世界的な趨勢であり、日本もその流れに沿っている。
 しかし、プリウスのリコールの報じられ方や、一連のトヨタに対する世論の風当たりの強さは、日本にとってのリコール制度が世界的趨勢に反するばかりか、まだ「責任」と「対応」を分離して考えられていないことを如実に物語っている。
 トヨタによるリコールから見えてきた、日本における企業と市民の関係や企業の責任とあり方のあるべき姿を、社会と法制度の観点から廣瀬氏とともに議論した。
今週のニュース・コメンタリー
•小沢一郎氏が変わった理由?!
•検察と宮内庁は改革の対象外
•佐久間特捜部長と自殺者を生む人質司法
•数字はPIGS並でも日本は大丈夫?

関連番組

■マル激トーク・オン・ディマンド 第421回(2009年05月02日)

自動車文明の終焉 
ゲスト:下川浩一氏(東海学園大学経営学部教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第373回(2008年05月24日)

自動車産業が日本から消える日
ゲスト:土屋勉男氏(明治大学政治経済学部客員教授)

■インタビューズ(更新までしばらくお待ちください。)
鎌田実氏インタビュー

■プレスクラブ(2010年02月09日)
郷原信郎氏、畑村洋太郎氏、永井正夫氏 記者会見

■ニュース・コメンタリー (2009年11月28日)
トヨタ車リコール問題の死角


<ゲスト プロフィール>
廣瀬 久和(ひろせ ひさかず)青山学院大学法学部教授
1947年東京都生まれ。73年東京大学法学部卒業。88年フランスのエックス・マルセイユ大学法学部大学院DEA修了。上智大学法学部助教授、東京大学大学院法学政治学研究科教授などを経て、09年より現職。
投稿者:miyadai
投稿日時:2010-02-14 - 22:55:27
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第460回(2010年02月06日)
日本経済の復活のための処方箋
ゲスト:池尾和人氏(慶應義塾大学経済学部教授)


<プレビュー>
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 リーマンショックに端を発する世界同時不況から約1年5ヶ月。日本経済はGDP実質成長率が3四半期連続でプラスとなるなど回復基調の兆しが見られるものの、景気回復の実感は薄く、雇用情勢も失業率5.1%、有効求人倍率0.46倍と依然として厳しい状況が続いている。さらには円高や消費低迷でデフレの進行が止まらず、二番底を懸念する声も根強い。折しも5日、米国株式市場の急落を受けて日経平均株価が1万円を割りそうになるなど、景気動向については予断を許さない状況だ。日本経済はいつになったらこの不況を打破でできるのか。
 経済学者で金融論が専門の池尾和人慶應義塾大学教授は、不況には一時的な景気悪化でその経済が本来持っている実力よりも下ぶれしている場合と、そうではなく実力そのものが低下している場合があり、現在の日本の経済不況は明らかに後者だと言い切る。
 2002年以降の日本経済は米国の過剰消費に輸出産業が引っ張られ、実力以上に好調な景気を維持してきたが、リーマンショックを契機に一気に失速した。その後、緩やかに回復してきてはいるが、現在の停滞状況は日本経済の本来の実力を反映しているに過ぎないというのが池尾氏の見立てだ。今後の見通しについても、「質素で退屈で憂鬱な」低成長時代が続くと池尾氏は言う。
 かつてジャパン・アズ・ナンバーワンとまで言われた日本経済は、なぜそこまで力を失ってしまったのか。池尾氏はその問いに対して、一言で言えば日本の経済の仕組みが硬直化し、内外の環境の変化に対応できていないからだと見る。 
 90年前後に起こった冷戦の終結は、ロシアや東欧の自由主義経済への参入や中国の開放政策の成功、インドやその他の新興国の台頭をもたらし、市場経済の規模が一気に拡大した。その結果、グローバル資本主義が成立し、そこに参加する人数もそれまでの10億人から40億人へと一挙に膨れ上がった。当然、グローバル市場における日本経済のウェイトは相対的に低下することになる。
 また、世界の工場として躍進を遂げた中国をはじめ、韓国や台湾などの近隣諸国が産業化に成功し、外でつくった製品を輸入した方が安いという経済合理性から、日本の国内向け製造業も大打撃を受ける。
 こうしたドラスティックな環境変化に日本は対応できず、産業構造の転換を図ることをしてこなかったと池尾氏は説明する。加えて、追いつき追い越せというキャッチアップ型の成長時代が終わったにもかかわらず、先進国型の経済成長に不可欠な、独自の技術開発やイノベーションを生み出すための教育や社会の仕組みづくりにも手を付けてこなかった。
 内外の激的な変化に対して何ら手を打たずにいれば、日本経済が弱体化するのも当然だ。そればかりか、日本経済の実力自体が落ちていることを直視せず、不況の原因を一時的な景気悪化と見て、財政出動というカンフル剤の投入を繰り返してきたのがこの20年間だったと池尾氏は言う。すでに長期債務残高は国と地方を併せて816兆円、対GDP比で160%以上にまで膨れ上がり、これ以上の財政出動の余力はない。しかも、そのツケは将来世代に回されるという世代間不公平が生じている。
 今や重篤な病にかかってしまったかのような日本経済だが、果たして打開策はあるのか。池尾氏は、日本経済が抱える最大の問題点は需要構造と供給構造のミスマッチにあると指摘する。しかし需給ギャップというと、その原因は需要側にあると短絡的に考え、慢性的な需要不足に対して慢性的な財政出動を行ってきたのが、これまでの経済政策だった。現在の需給ギャップはむしろ供給サイドに問題があるというのが池尾氏の見方だ。つまり、売れるモノやサービスを提供できるように、人やリソースを配分するという供給構造の大転換が必要だという。そして、その際に生じる痛みを手当することに経済政策の主眼を置くべきだと池尾氏は主張する。
 医療、健康、介護、教育、環境といった分野における生産性を向上させることが日本の経済成長にとっての最優先課題になると説く池尾氏とともに、日本経済の現状と復活のための処方箋を議論した。(本日のマル激本編は経済ジャーナリストの町田徹と宮台真司の司会で、ニュースコメンタリーは神保哲生と宮台真司の司会でお送りします。)



<今週のニュース・コメンタリー>

・検察の民主統制は法務大臣の責務
・郷原信郎氏インタビュー 小沢氏不起訴に見る深刻な検察の能力低下
・奥平康弘氏インタビュー まず政治に金がかかるという神話を疑え
・最初から無理筋だった「悪質性」の立証
・世論形成にネットが果たした役割は



<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第357回(2008年02月02日)
サブプライム問題が露にしたグローバル経済の実相
ゲスト:水野和夫氏(三菱UFJ証券参与・チーフエコノミスト)
http://www.videonews.com/on-demand/0351351360/000760.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第354回(2008年01月12日)
2008年日本経済の課題
ゲスト:熊野英生氏(第一生命経済研究所主席エコノミスト)
http://www.videonews.com/on-demand/0351351360/000757.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第403回(2008年12月20日)
見えたり、金融資本主義の正体
ゲスト:小幡績氏(慶應義塾大学大学院准教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0401410/000806.php


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投稿日時:2010-02-13 - 07:25:50
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第459回(2010年01月30日)
なぜ普天間問題がこじれるのか
ゲスト:鈴木宗男氏(衆議院外務委員長)

<プレビュー>
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 名護市長選で辺野古への移設受け入れに反対する新人の稲嶺進氏が当選したことで、普天間基地移設問題は更に混迷の度合いを深めている。鳩山首相は5月までに結論を出すとしているが、今のところいろいろな地名が乱れ飛ぶばかりで、具体的な展望は一向に開けてこないかにみえる。
 橋本内閣で沖縄開発庁長官を務め、長年沖縄と深い関わりを持ってきた鈴木宗男衆議院外務委員長は、普天間問題がこじれる理由として、小泉内閣以降の歴代政権が、沖縄の人々の基地に対する複雑な思いが理解できていないことを真っ先にあげる。沖縄の歴史や事情も知らないでたまたまポストについた政治家が、ハコモノ的なバラマキで沖縄の人々の心を切り裂いてきたと鈴木氏。普天間をめぐる鳩山政権の迷走ぶりの元凶も「沖縄の人々の心が理解できていない」ことにあると鈴木氏は言い切る。
 沖縄では基地に対する複雑な思いがある。温暖な気候と豊かな自然を持つ沖縄は本来は基地など無くても十分にやっていける。その意味ではもちろん基地なんて無いに越したことはない。しかし、沖縄にとってもし基地の受け入れがどうしても避けられないことなのであれば、その負担や影響を最小限に抑えるとともに、少しでも沖縄の地域振興に役立つ見返りを得ようと考える。あたかも沖縄は、利権が欲しくてあれこれごねているかのように見られる素地が、ここに出てくる。
 沖縄では、基地に出て行ってもらえる現実的な可能性が見えてくれば、基地反対が優勢になる。しかし、どうせ受け入れなければならないとなった瞬間に、強制的に土地を接収されるくらいなら基地地主になって地代を徴収した方がましだし、どの道基地の負担を受け入れなければならないのなら、少しでも多くの経済振興策を求めようという話になる。これは当然だ。沖縄の中に2つの異なる利害が共存するというよりも、沖縄の人一人ひとりの中にそれが共存すると言ってもいいかもしれない。鳩山政権で沖縄問題を扱っている政治家たちには、それが十分に理解できていないのではないかと、鈴木氏は言うのだ。
 もともと日米間で2006年に合意された現行の辺野古崎移設案にしても、当初は環境への負荷を最小化する目的で海上浮揚型のメガフロート案や杭式桟橋案などが模索されてきた。しかし、それでは高い技術を持つ大手ゼネコンばかりが潤い、地元の土木建設業界に恩恵が落ちてこないとの理由から、最終的にはより環境負荷の高い現行の埋め立て式V字滑走路案になったという経緯がある。V字で2本の滑走路にした方が、埋め立て面積が大きくなるからだ。ことほど左様に沖縄の基地問題は、複雑でデリケートな側面を持っている。単に辺野古の代わりの場所を見つければいいという話ではないのだ。
 その意味で鈴木氏は、名護市長選挙の結果を「斟酌しない」とした平野官房長官の発言には怒りを隠さない。鳩山政権がまずすべきことは「沖縄の声を聞くこと」(鈴木氏)なのに、それとは正反対の方向を向いた発言だと言うのだ。また鳩山内閣の他の閣僚も、普天間移設の経緯や事情も踏まえずに、移設先に関して好き勝手な発言を繰り返していると、同じ与党の議員でありながら、鳩山政権の対応には容赦の無い苦言を呈す。
 しかし、その鈴木氏でも、普天間問題への具体的な解決策を問われると言葉に詰まる。まず沖縄の声を聞いた上で、最後は沖縄に「貢献をお願いする」以外に解決方法はないだろうというのだ。
 普天間移設問題をめぐる歴史的な経緯をふり返り、その解決に向けて今政治が何をしなければならないのかを、鈴木氏とともに議論した。
 また、同じく鈴木氏とは、検察の小沢氏の政治資金規正法違反捜査に関連して、鈴木氏が政府に提出した検察の捜査に関する数々の質問趣意書の内容とその回答についても議論した。(今週は5金にあたりますが、1月は第一週目の放送をお休みさせていただいたため、通常の編成で放送します。)



<今週のニュース・コメンタリー>

・あいまいな「指揮権」の法的根拠
・検察審査会の強制起訴が持つ意味
・トヨタ大規模リコールの衝撃
・期待はずれ?のiPadと電子書籍市場への影響
・ハイチ災害援助
 先進国に遅れをとる日本のNGO支




<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第246回(2005年12月07日)
アメリカ依存から卒業するためにも憲法改正は必要
ゲスト:石破茂元防衛庁長官
http://www.videonews.com/on-demand/0241241250/000647.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第242回(2005年11月09日)
鈴木宗男は何と戦っているのか
ゲスト:鈴木宗男衆議院議員
http://www.videonews.com/on-demand/0241241250/000643.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第134回(2003年10月10日)
鈴木宗男的政治手法が投げかける小泉改革への疑問
ゲスト:鈴木宗男 前衆議院議員
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■永田町コンフィデンシャル 第10回(2007年08月07日)
沖縄の声は、未だ届かない
ゲスト:下地幹郎氏(衆議院議員)
http://www.videonews.com/nagata/001010/000303.php

■ニュース・コメンタリー (2009年12月12日)
アメリカは本当に怒っているのか
普天間移転問題で抜け落ちている論点
http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/001334.php


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投稿者:miyadai
投稿日時:2010-02-13 - 07:22:35
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第458回(2010年01月23日)
検察の捜査について、これだけは言っておきたい
ゲスト:堀江貴文氏(株式会社ライブドア元代表取締役CEO)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_458_pre.asx

 「検察の暴走だ」、「小沢も説明責任を果たしていない」などとやりあっている間に、民主党小沢幹事長の土地購入をめぐる資金疑惑が、ついに検察による政権与党幹事長の事情聴取にまで至った。ご多分に漏れずマスメディアでは当初から検察寄りの報道が目につくが、今週に入りどこからともなく「検察は本気らしい」との観測が流れ始めると、物言えば唇寂しの空気が日本全体を覆い始めている感すらする。
 ところがそうした中にあって意気軒昂、舌鋒鋭く検察批判を繰り返す男がいる。自身も検察との徹底抗戦を掲げ、法廷闘争を続けているホリエモンこと元ライブドアCEOの堀江貴文氏だ。
 堀江氏は自分自身が検察の手によって不当に犯罪者に仕立て上げられたとの立場から、検察とメディアがタッグを組んで事件を作り上げていく(堀江氏)手法の怖さと危うさを繰り返し訴える。
 また、現在問題にされている捜査の可視化や弁護士の立ち会いなどは必要だが、それだけでは不十分だと堀江氏は指摘し、自身の経験では、検察の力の源泉は任意捜査にあると言う。堀江氏によると、ライブドア事件を立件するために、検察は周囲に広く捜査の手を広げ、堀江氏に不利な供述をした人は罪に問わなかったり、罪を軽減するなど、事実上の司法取引が行われている。それが検察の最大の武器だと堀江氏は言う。事件に巻き込まれる恐怖から、本人が言ってもいないことを聞いたとか、やってもいないことを見たと証言する人が出てくるからだ。
 それにしても、なぜ小沢氏や堀江氏は検察のターゲットとなったのか。堀江氏はその答えとして、自分と小沢氏の間のある共通点をあげる。それは、両者とも自分たちを「嫌いな人間が一定数存在する」こと。小沢氏も堀江氏も既存の秩序の破壊者であり、一定の数の人々の強烈な反発を買うタイプであることは確かかも知れない。検察としては善人面した人よりもそういうタイプを立件した方が、はるかに一罰百戒効果があるというのだ。
 今回の事件で検察が執拗に小沢氏を狙う理由について堀江氏は、はっきりと「民主党が進めようとしている司法制度改革を何としても阻止したいから」と言い切る。それは堀江氏の経験では、民主党の司法制度改革が実現してしまうと、自身に対して行われたような捜査や立件は難しくなるからだ。
 94日間に及ぶ勾留や激しいバッシングを経て至った今日の心情も含め、堀江氏と「小沢対検察」に見る検察問題を議論した。



<今週のニュース・コメンタリー>

・小沢土地取引疑惑
 検察の事情聴取の影響は
・メディアは原口発言を批判できるのか
・千葉法相「指揮権発動も否定せず」報道の妥当性
・ハイチ大地震で支援するNGOの課題
 長有紀枝NGOジャーパンプラットフォーム代表理事に聞く



<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第311回(2007年03月16日)
ライブドア事件にみる検察資本主義の到来
ゲスト:村山治氏(朝日新聞編集委員)
http://www.videonews.com/on-demand/0311311320/000712.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第253回(2006年02月03日)
なぜ特捜なのか。 なぜライブドアなのか
ゲスト:堀田力氏(弁護士、元東京地検特捜部検事)
http://www.videonews.com/on-demand/0251251260/000654.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第208回(2005年03月23日)
ホリエモンかく語りき
ゲスト:堀江貴文氏(ライブドア社長)
http://www.videonews.com/on-demand/0201201210/000609.php


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番組開始から10年を迎えるマル激が、メールマガジン
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【マル激!メールマガジン】毎週水曜配信中
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投稿日時:2010-02-13 - 07:20:43
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第456回(2010年1月6日)
映画監督・是枝裕和がまだテレビにこだわる理由
ゲスト:是枝裕和(映画監督・テレビディレクター)

 2010年最初のマル激は、新年特別企画として、ゲストに映画監督の是枝裕和氏を招いて映画特集をお送りする。
 今回取り上げた作品は、現在公開中の新作映画から『戦場でワルツを』『誰がため』『カティンの森』『キャピタリズム~マネーは踊る~』の4本と、是枝氏の最新作『空気人形』。
 新作4本のうち『キャピタリズム』以外は、いずれも戦争をモチーフにした作品だ。アニメーションとドキュメンタリーの融合という斬新な手法で戦争体験を描いた『戦場でワルツを』、第二次世界大戦中に起こった実話をベースに映画化した『誰がため』と『カティンの森』の3作品を通して、映画で戦争を描くことの意味やその手法について議論した。
 マイケル・ムーアの最新作『キャピタリズム』では、ムーア自身がプロパガンダ映画の作り手としての地位を確たるものにすればするほど、その一方で、ドキュメンタリー作家に不可欠な社会との距離を喪失していく現状を、われわれはどう受け止めるべきかを考えた。
 一方、是枝氏の新作『空気人形』では、この映画を通じて何を描きたかったかを、是枝氏自身が語った。
 番組の後半は、特にテレビ草創期の1960年代に、TBSのディレクターとして斬新なドキュメンタリー作品を次々と世に送り出したテレビマンユニオンの創設者萩元晴彦・村木良彦両氏から、直接薫陶を受けたという是枝氏とともに、その精神を完全に喪失したかに見えるテレビの現状と可能性を論じた。


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第425回(2009年05月30日)
5金映画スペシャル C・イーストウッドの描くアメリカ保守主義の再興は本物か
http://www.videonews.com/on-demand/421430/001009.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第387回(2008年08月30日)
5金スペシャル 映画とイラク戦争と大統領選挙
ゲスト:町山智浩氏(映画評論家)
http://www.videonews.com/on-demand/0381381390/000790.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第380回(2008年07月12日)
Part1・2 NHK裁判とマスゴミ問題
Part3 テレビニュースは本当に終わりませんか
ゲスト(Part1・2):日隅一雄氏(弁護士・NHK裁判原告代理人)
ゲスト(Part3):金平茂紀氏(TBSアメリカ総局長)
http://www.videonews.com/on-demand/0371371380/000783.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第335回(2007年08月31日)
5金スペシャル 映画特集 マイケル・ムーアは終わったのか
ゲスト:森達也氏(ドキュメンタリー作家)
http://www.videonews.com/on-demand/0331331340/000737.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第261回(2006年03月31日)
マル激『5金』スペシャル 映画特集
http://www.videonews.com/on-demand/0261261270/000662.php
投稿者:miyadai
投稿日時:2010-01-07 - 09:29:38
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第455回(2009年12月26日)
神保・宮台COP15現地報告:
新しいゲームが始まった
ゲスト:福山哲郎氏(外務副大臣)、飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_455_pre.asx


 京都議定書の約束期間が終わる2013年以降の温室効果ガスの削減目標を決めるCOP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)は、最後まで先進国と途上国の対立が解けず、最終的には非常に内容の乏しい政治合意を何とか捻り出すにとどまった。
 主要メディアは概ね、コペンハーゲン会議の結果をこのように報じているし、事実、合意そのものは、この会議を注視してきた世界の多くの人々を落胆させるに十分なものだったかもしれない。
 しかし、そうした反応とは裏腹に、日本政府交渉団の一員として会議に出席し、最終合意まで実際の交渉の最前線に立ってきた福山哲郎外務副大臣も、環境 NGOの立場からCOPをウオッチしてきたNGO環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長も、ともに今回の会議の成果を非常に肯定的に評価している。
 確かに、世界の190を超える国がコペンハーゲンで一堂に会したCOP15では、既に影響が深刻化している地球温暖化と気候変動問題に対処するには、明らかに不十分な合意しか生むことができなかった。
 京都議定書を引き継ぐ法的拘束力を持った削減目標は一切決めることができなかったし、新たな議定書の策定期限さえ決まっていない。要するに、京都議定書の約束期間が終了する2013年以降、世界はこと温室効果ガスの削減については、事実上何の約束も無い状態に置かれたことになる。
 にもかかわらず、なぜあの会議にそれだけ大きな意味があったのか。
 福山氏は、コペンハーゲン合意によって、京都議定書の最大の欠点だった中国とアメリカを国際協調の枠組みの中に取り込めたことの意義は計り知れないほど大きいと繰り返し強調する。
 世界の国別の温室効果ガス排出量で一、二位を占める中国とアメリカは、二ヵ国で世界全体の排出量の4割を占める突出した排出量大国だが、にもかかわらず京都議定書はこの二ヵ国に何の削減義務も課していない
 京都では途上国扱いだった中国は当初から議定書の対象から外れていたし、アメリカは議定書に署名はしたものの、上院の批准を得ることができず、ブッシュ政権の成立とともに、議定書そのものから離脱してしまった。
 「アメリカ、中国を含む形で合意に達するには、あれしかなかった。あの合意ですら、先進国が一枚岩となって中国との交渉に臨み、オバマ大統領の獅子奮迅の活躍で、ぎりぎりのところで何とか漕ぎ着けたもの。」10時間を超える各国首脳との徹夜の交渉を終えたばかりの福山氏は、やや興奮気味に語る。
 福山氏によると、オバマ大統領が自ら合意文書のテキストを持って各国首脳の間を走り回り、最後は先進国の総意として中国に合意案をつきつけたことで、当初はいかなる合意にも否定的だった中国も、最後は逃げられなくなったと言う。
 削減義務を負いたくない中国によって終止会議が振り回されたとされる多くのメディア報道とは一線を画す、交渉現場からの生の証言と言っていいだろう。
 逆に言うと、オバマ大統領は、京都議定書から離れているアメリカを新たな枠組みに含めることに議会の承認を得るためには、何としても中国を取り込んだ枠組みの合意が必要だったのだ。
 また、先進国と途上国の対立がコペンハーゲン合意の妨げになったとの報道についても、福山氏は異論を呈する。
 多くの国際交渉と同様に、かつてのCOPの枠組みでは、まずG7と呼ばれる先進国の間にも、アメリカ、EU、日本の3つの勢力の間で少しでも自国に交渉を有利に進めようとする腹の探り合いがあり、更にその上に、先進国とG77と呼ばれる途上国連合との間で、大きな対立があるため、WTOなどの国際交渉は遅々として進まないというのが定番の説明だったし、現実もそれを概ね踏襲していた。
 しかし、今回コペンハーゲンでは、まず途上国の中でも新興国、とりわけ中国の存在があまりにも大きくなり、従来の勢力図が塗り替えられていた。
 既にアメリカを抜いて世界最大の排出国となっている中国は、G77の親分格として、これまでの地球温暖化への責任を先進国に求める立場を貫いていたが、同じG77の中でも、ほとんど温室効果ガスを排出していない最貧国やツバル、モルジブなど、温暖化の影響で国家存亡の危機にさらされている国などが、排出量の多い新興国も一定の責任を負うべきとの立場に転じたために、途上国陣営内にも断絶が生じていた。
 更に、中国の台頭が先進国(G7)を団結させる効果も生んだという。経済的にも政治的にも大きな力を持つようになった中国を合意の枠組みに取り込むためには、アメリカ、EU、日本の先進国の互いの利害を超えた協調が不可欠になっていたからだ。
 「今回でゲームのルールが変わったのだと思います。それに気づいていない人達は、まだ古いルールを前提として今回の会議を見ているために、正当な評価ができないのだと思う。」福山氏はこう語る。
 合意の内容に多くの不満はあるにせよ、中国、アメリカを含む枠組みを作るためには、あの合意内容以外はあり得なかったし、合意の内容をより踏み込んだものにするのであれば、世界は再び二大排出国の中国とアメリカが外れた枠組みで我慢するしかない。実際に交渉に携わった人達の口からは、ほぼ例外なく、その2つの究極の選択肢からよりベターな方を選ぶことができたとの自負が感じられた。
 NGOの立場から会議をウオッチしてきた飯田氏も、ルールの変更を痛感した一人だ。
 「新しいゲームが始まったのだと思う。古いルールでは国連が法的拘束力のある決定をしてくれれば、各国はそれを持ち帰って『国連が決めたのだから』と言って国内を説得して、国内の法整備をすればよかった。
 しかし、今回は各国の首脳が集まって合意したものが、実質的な拘束力を持つ。合意文書のテキストではなく、ここで話し合われたことをもとに、これから国際社会が監視の中で世界は1年間走っていくことになる。法的拘束力はないかもしれないが、鳩山さんも含めて、ここで首脳同士話し合った国は、絶対に離脱はできない。それに中国も、つまり途上国側も入っているのが大きい。」飯田氏は、この会議の意義をこう総括する。
 つまり、コペンハーゲンで新しく始まったゲームとは、G7主導で法的拘束力のある合意文書(テキスト)を作成し、その文書で各国を縛っていく従来の国連のコンセンサス(全会一致)方式が、もはや実効性を失い、新たに、世界が温室効果ガスの排出を削減していくことは必要との大枠の合意に基づいて首脳がコペンハーゲンに集い、地球の気温上昇を2度以内に抑えることなどを大枠で合意した上で、あとは各国がそれぞれの判断で国内対策をどれだけ実行できるかを競うゲームだと言うのだ。
 より大きく温暖化対策を進めたところが、次の会議ではより大きな発言権を持つことになることは言うまでもない。
 そうした見方を前提に日本に目をやると、コペンハーゲンでは過去の日本の首脳に比べると鳩山首相は一定の存在感を示すことができたと言えそうだ。先進国間の話し合いの際も、鳩山首相はオバマ、クリントン、ブラウン、サルコジ、メルケルらと机を囲んで膝詰めで丁々発止の議論に参加していたという。そして、福山氏も飯田氏も、それは鳩山首相が9月に25%削減を発表しているかに他ならないと、口を揃える。
 世界に先んじて野心的な削減目標を打ち出したことで、少なくとも今回の会議で日本は、新しいゲームに参加するパスポートを得た。しかし、実際その後温暖化対策の具体的な中身については、ほとんど議論さえ進んでいないのが実情だ。民主党は排出権取引、再生可能エネルギーの全種全量買い取り制度、炭素税の3つの制度の導入を公約しているが、これまでその面での整備はほとんどまったくといっていいほど進んでいないのが実情だ。
 交渉の過程で中国から、「日本は25%なんて言ってるが、本当にできるのか」とまで言われ始めているという。既に国際社会は、25%削減の裏付けとなる日本の国内対策がほとんど進んでいないことを、見抜いているのだ。
 2009年最後のマル激は、ビデオニュース開局10周年記念を兼ねて、COP15の会場から、神保・宮台両キャスターが見たCOP15の報告と、そこで2人が見た新しいゲームとはどのようなもので、そのゲームに日本が参加し、勝ち抜くために何が必要になるのかを、極寒のコペンハーゲンで福山氏、飯田氏とともに考えた。


<今週のニュース・コメンタリー>

・COP15帰国報告 日本よ、新しいゲームに乗り遅れるな
・秘書起訴を受けて鳩山首相が謝罪会見


<関連番組>

■COP15現地リポート
http://www.videonews.com/cop15/

■気候変動関連番組
http://www.videonews.com/cop15_2/

■COP15現地リポート(2009年12月19日)
首脳を巻き込んだ徹夜の交渉でも「留意」どまり。
コペンハーゲン協定は採択できずにCOP15が閉幕
http://www.videonews.com/cop15/0001/001311.php

■COP15現地リポート(2009年12月19日)
NGOの女性メンバ-たちが剃髪の抗議行動
http://www.videonews.com/cop15/0001/001310.php

■COP15現地リポート(2009年12月18日)
人類は地球温暖化を止められるのか
COP15スペシャルリポート
http://www.videonews.com/cop15/0001/001309.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第442回(2009年09月26日)
温室効果ガスの25%削減は十分可能だ
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)
http://www.videonews.com/on-demand/441450/001236.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第379回(2008年07月05日)
炭素税はCO2排出削減の決め手となるか
ゲスト:足立冶郎氏(NGO「環境・持続社会」研究センター事務局長)
http://www.videonews.com/on-demand/0371371380/000782.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第368回(2008年04月19日)
これでいいのか、日本の排出量取引
ゲスト:諸富徹氏(京都大学大学院経済学研究科准教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0361361370/000771.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第303回(2007年01月19日)
不都合な真実を不都合でなくするために
ゲスト:福山哲郎氏(参議院議員)
http://www.videonews.com/on-demand/0301301310/000704.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-12-27 - 14:39:31
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第454回(2009年12月19日)
2009年総集編
2009-2010・政権交代の次に来るもの
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<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_454_pre.asx

 恒例の年末マル激ライブ。今年も東京・新宿のライブハウス『ロフト・プラスワン』で、2009年のマル激的総括と来年の展望を神保哲生、宮台真司の2人が議論した。
 09年はなんと言っても憲政史上初といっても過言ではない本格的政権交代の年となったが、それほど大きな変化が感じられないでいる人も多いはずだ。それはなぜか。
 政権は代わったが、それを支える制度も変わっていないし、ましてやそれを支える市民社会のマインドも変わっていないのだから、社会が変わらないのは当たり前だ。
 しかし、大きな変革の兆しはいたるところに見える。事業仕分けは来年度以降の予算編成で大きな威力を発揮する可能性を秘めている。
 また、むしろ鳩山政権が批判される対象となっている普天間移設問題をめぐるドタバタも、見方によってはアメリカを怒らせることを厭わない政権が戦後初めて日本にできたと見ることもできる。
 とは言え、政権に就くやいなや民主党の弱点が浮き彫りになったこともまちがいない。
 サブ(サブスタンス:政策の中身)には熱心だがロジ(ロジスティクス:方法論や手順)に弱い民主党の松下政経塾的な体質は、野心的なマニフェストとは裏腹に、それを実現するための具体論に欠けているものが多いことが次々と露わになった。
 また、首相の故人献金問題やその煽りを受けたとみられる記者会見の開放の遅れなど、鳩山政権が抱える懸案は決して少なくない。
 2009年はまた、日本の司法の劣化が大きくクローズアップされた1年でもあった。和歌山カレー事件の最高裁判決や小沢政治献金事件、福島県知事汚職事件、足利事件の再審決定など、不審な点が多い判決や司法の機能不全ぶりが次々と明るみに出た一方で、市民が裁判に参加する裁判員制度がスタートした。
 この先、日本の司法の長年の課題である取り調べの可視化を実現できるかどうかは、民主党政権の本物度を測る重要なバロメーターになると見ていいだろう。
 マル激ライブはいつも通り予定時間を大幅にオーバーして、終演した。


<関連番組>

■COP15現地リポート
http://www.videonews.com/cop15/

■気候変動関連番組
http://www.videonews.com/cop15_2/

■マル激トーク・オン・ディマンド 第452回(2009年12月05日)
「事業仕分け」から見えてきたこと
ゲスト:枝野幸男氏(衆議院議員)
http://www.videonews.com/on-demand/451460/001298.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林真須美被告主任弁護人)
http://www.videonews.com/on-demand/0411/000972.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第416回(2009年03月26日)
検察は説明責任を果たしているか
ゲスト:郷原信郎氏(桐蔭横浜大学法科大学院教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0411/000931.php

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-12-23 - 00:10:28
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COP15スペシャルリポート
神保・宮台のコペンハーゲン報告1(12月17日)


 コペンハーゲンで開かれているCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)では、京都議定書の約束期間が終了する2013年以降、世界がいかにして温室効果ガスの排出を制限し、地球温暖化とそれに伴う気候変動を抑制していくかを決める、21世紀の人類にとって最も重要といっても過言ではない会議になるはずだった。
 しかし、過去2年間、この日のために無数の準備会合を積み重ねてきたにもかかわらず、ことコペンハーゲンに至っても先進国と発展途上国の間の対立の溝は根深く、会議が始まるはるか以前からCOP15での議定書の採択は見送られることが決まってしまうあり様だった。
 しかも、新たな議定書の代わりに何とか合意にこぎ着けようとしていた政治合意さえも、会議開始から約2週間を経た今、まったく採択のメドは立っていない。
 COP15取材のためにコペンハーゲンを訪れているマル激トーク・オン・ディマンドの神保哲生、宮台真司の両キャスターが、交渉が難航するCOP15のここまでの現状とその背後に見え隠れする新しい世界の潮流をコペンハーゲンから報告する。
 また、番組の最後に、難航する交渉の最前線に立つ福山哲郎外務副大臣に、ここまでの交渉の舞台裏と今後の展望を聞いた。
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-12-18 - 23:34:39
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第450回(2009年11月21日)
保守政党自民党の再生シナリオ
ゲスト(PART1):谷垣禎一氏(第24代自民党総裁)
ゲスト(PART2):福永文夫氏(獨協大学法学部教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_450_pre.asx

 この9月、自民党の第24代総裁に選出された谷垣禎一衆議院議員は、自民党を保守政党として再生させたいと抱負を述べる。しかし、谷垣氏が掲げる「保守政党」とはどのようなものなのか。それを探るべく、マル激は谷垣氏を自民党本部に訪ねた。また、後半は日本の戦後の保守政治を研究している政治学者の福永文夫氏を招き、谷垣総裁が掲げる自民党の保守政党としての再生の課題を議論した。
 先の総選挙での歴史的な大敗により、16年ぶりに総理大臣ではない自民党総裁となった谷垣氏は、55年体制における自民党が果たしてきた役割は主に3つあると語る。一つは憲法9条と日米安保による平和の構築、二つ目は戦後復興と経済成長による国家の繁栄、そしてもう一つが自由体制の維持だ。
 歴代の自民党政権が、日本を自由主義陣営の一員として経済成長を図ることで、歴史上かつて見ないような経済成長を成し遂げてきたことは、紛れもない事実だろう。また、経済成長の果実を、公共事業などを通じて地方に再配分することで国民生活を豊かにすることに成功し、それを地盤に一貫して政権与党の座に就いてきたのが自民党だった。
 しかし、冷戦も高度成長も過去のものとなり、再配分をしようにも、財政は火の車である。自民党政治の必要条件が総崩れとなる中で、2009年自民党は遂に半世紀に及ぶ政権与党としての地位を民主党に明け渡すこととなった。
 谷垣氏は、党の再生のためには、自民党の原点とも呼ぶべき3つの基本路線を再確認した上で、それに加えて「保守政党としての」新たな原則を打ち立てることが必要だと主張する。
 まず、谷垣氏は、再配分政策に舵を切ったかに見える民主党に対して、保守政党としての自民党は「公助の前に自助・共助を重視」し、個人の自立や自由をより重んじる路線をとる意向を明らかにする。また、自分の国に対する大らかな自信と先人の知恵を尊重する態度を重視するのも、保守としての責務になると、谷垣氏は言う。
 更に、「小さな政府」だけでは、地方の疲弊や格差を手当できないとして、小泉構造改革とは一線を画する姿勢を打ち出す。
 果たして自民党は、谷垣氏の考える「保守」の旗の下に、民主党に対抗しうる勢力を糾合することができるのだろうか。
 戦後保守を研究してきた政治学者の福永文夫獨協大学法学部教授は、谷垣氏が考える「保守」は、谷垣氏の出自でもある宏池会の伝統的な流れを汲むものだが、果たしてそれで民主党に対する対抗軸に成り得るかどうかについては疑問を呈する。
 福永氏は民主党も再配分的な政策を多く持ちながら、鳩山代表、小沢幹事長、岡田外相と、いずれも自民党の旧経世会OBがその中枢を占めているのが実情で、その本質においては保守政党としての性格を強く持つという。そのため、伝統的な宏池会路線だけでは、民主党との差別化は難しいだろうと言う。
 福永氏は、歴史上保守勢力とは、何ものかに対する対抗勢力であることが前提となるため、まずは民主党の再配分の行き過ぎをチェックするなどして、同じ保守路線の政党でも、再配分のあり方や国権の及ぶ範囲など「度合いの違い」で差異を打ち出していくしかないだろうと言う。
 番組前半で谷垣氏と自民党再生のシナリオを、後半は谷垣氏との議論を引き取る形で、保守政党としての自民党再生の可能性について福永氏と議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・テーマ探しに追われたオバマ大統領初来日
・事業仕分け 報道されない調査捕鯨「見直し」判定
・世相を映す諸データ


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第444回(2009年10月10日)
河野太郎の自民党復活計画
ゲスト:河野太郎氏(衆議院議員)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第432回(2009年07月18日)
やっぱり日本にも保守政党が必要だ
ゲスト:杉田敦氏(法政大学法学部教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第391回(2008年09月27日)
自民党システムの終焉
ゲスト:野中尚人氏(学習院大学教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第331回(2007年08月03日)
データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」
ゲスト:森裕城氏(同志社大学法学部准教授)

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-11-21 - 23:11:50
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第445回(2009年10月17日)
シリーズ・民主党政権の課題5
今、自殺対策は政治の出番だ
ゲスト:清水康之氏(自殺対策NPO法人ライフリンク代表)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_446_pre.asx

 シリーズでお送りしている民主党政権の課題。5回目となる今回は自殺問題を取り上げた。
 日本の自殺者数は1998年に3万人を超えて以来、11年連続で3万人を超え、自殺率で見るとOECD諸国の中ではハンガリーに次いで2番目に高い。今年は景気低迷の煽りを受け、自殺者の数が上半期だけで1万7千人を超えるなど、このままいけば過去最悪となりかねない。
 政府も決して手をこまねいているわけではない。07年に策定された自殺対策大綱に基づき、政府はさまざまな自殺対策を講じてきてはいる。にもかかわらず、自殺者の数は一向に減る兆しが見えないのだ。
 内閣府の「自殺対策推進会議」のメンバーで04年以来自殺問題に取り組んできたNPO・ライフリンク代表の清水康之氏は、現在の政府の自殺対策は縦割り行政が邪魔になり、ほとんど機能していないと指摘する。
 自殺に至る過程には複数の要因があり、自殺者は平均でも4つの要因を抱えているという。例えば、「事業不振」→「生活苦」→「多重債務」→「うつ病」などを経て自殺に至るという具合だ。しかし、現在の政府の対策は縦割り行政のために、関係機関の間で横の連携が取れていない。そのため、人を自殺に追いやる複数の原因に同時に働きかけることができないでいるというのだ。実際、自殺者の72%は、亡くなる前に専門機関に相談している。にもかかわらず、それを救うことができていないのが、現在の自殺対策の実情だ。
 清水氏は政権交代によって政権の座についた民主党が掲げる「政治主導」が、自殺対策を有効に機能させるきっかけになることに期待を寄せる。政治が主導権を握れば、行政の縦割りの壁を乗り越えた戦略的かつ柔軟な自殺対策が可能になるというのだ。
 また、民主党が政府系金融機関の個人保証の撤廃や連帯保証人制度の廃止をマニフェストで明示したことも、清水氏は高く評価する。個人保証や連帯保証人制度は、中小企業経営者や自営業者の自殺の大きな要因として以前から批判されてきたが、にもかかわらず、この問題は自民党政権下では放置されてきたからだ。
 しかし、民主党のマニフェストや政策集を見る限り、民主党政権の自殺対策は必ずしも明確になっていない。自殺を減らすために現場で奔走する清水氏とともに、民主党政権が「政治主導」で実施すべき自殺対策とは何かを議論した。



<今週のニュース・コメンタリー>

・神保リポート:アメリカ政治動向
・イルカ漁映画「ザ・コーブ」をどう見るか
・ランキングでは測れない日本の報道の不自由度
・貧困率15.7% やっと出た数字をどう生かすべきか


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第382回(2008年07月26日)
見えてきた自殺大国日本の実相
ゲスト:清水康之氏(NPO法人ライフリンク代表)
http://www.videonews.com/on-demand/0381381390/000785.php
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-10-26 - 00:02:36
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マル激トーク・オン・ディマンド更新しました

記者クラブ制度に安住する「マスゴミ」が生じない重大問題を扱ったマル激です。
またもや検察による「でっちあげ起訴」の問題です。
用済みの検察特捜部を早く「お取りつぶし」にしていただきたいものです



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■マル激トーク・オン・ディマンド 第445回(2009年10月17日)
「物言う知事」はなぜ抹殺されたのか
ゲスト:佐藤栄佐久氏(前福島県知事)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_445_pre.asx

 佐藤栄佐久氏はクリーンさを売りものに福島県知事を5期も務めた名物知事だった。しかし、それと同時に佐藤氏は、国が推進する原子力発電のプルサーマル計画に反対し事実上これを止めてみたり、地方主権を主張してことごとく中央政府に反旗を翻すなど、中央政界や電力、ゼネコンなどの有力企業にとっては、まったくもって邪魔な存在だった。
 その佐藤知事に収賄疑惑が浮上し、5期目の任期半ばで辞職に追い込まれた後、逮捕・起訴された。ダム工事発注をめぐる収賄罪だった。知事は無罪を主張したが、一審は執行猶予付きの有罪判決だった。そして、その控訴審判決が14日、東京高裁で下された。
 今回は一審からやや減刑されたが、依然として懲役2年、執行猶予4年の有罪判決だった。主要メディアもほぼ例外なく「前福島県知事、二審も有罪」の見出しでこのニュースを報じていたので、最近は知事の不祥事が頻発していたこともあり、必ずしも世間の耳目を引く大きなニュースとはならなかったかもしれない。
 しかし、この判決の中身を詳細に見た時に、その内容の異常さに驚かされる人は多いはずだ。判決文からは「無形の賄賂」や「換金の利益」などの驚くような言葉が次々飛び出してくるからだ。判決文は、佐藤前知事が一体何の罪で有罪になったのかが、全くわからないような内容になっているのだ。
 もっとも驚かされるのは、二審では一審で佐藤前知事が弟の土地取引を通じて得ていたと認定されていた賄賂の存在が否定されたにもかかわらず、「無形の賄賂」があったとして、裁判所が有罪判決に踏み切ったことだ。
 元々その賄賂の根拠というのは、佐藤氏の弟が経営する会社が水谷建設に土地を売却した際、その売却額が市価よりも1割ほど高かったので、その差額が佐藤氏に対する賄賂に当たるというものだった。ところが、その建設会社はその後更に高い値段で土地を売却していることがわかり、「市価より高い値段による賄賂」の大前提が崩れてしまったのだ。
 そこで検察は「換金の利益」つまり、仮に正当な値段であったとしても、土地を買い取ってあげたことが「無形の賄賂」の供与にあたると主張し、裁判所もそれを認めた。つまり、取引が正当な価格でなされていたとしても、土地取引そのものが賄賂にあたると認定されたわけだ。
 「セミの抜け殻のような判決」。二審判決についてそう話す佐藤氏は、そもそも事件そのものが検察によってでっち上げられた作り話だと主張し、一審から徹底して無罪を争ってきた。
 他にもこの事件は、そもそもこのダム事業が一般競争入札案件であるにもかかわらず、佐藤氏の「天の声」を認定していたり、弟の土地取引から得た利益を佐藤氏自身が受け取ったわけではないことを認定しながら、佐藤氏を収賄で有罪としているなど、不可解な点は多い。
 にもかかわらず、「換金の利益」だの「無形の賄賂」だのといった不可思議な論理まで弄して裁判所が佐藤氏を二審でも佐藤氏を有罪としなければならなかった最大の理由は、佐藤氏自身が取り調べ段階で、自白調書に署名をしていることだったにちがいない。
 今回宮台氏のピンチヒッターとしてマル激の司会初登場となった元検事で名城大学教授の郷原信郎氏は、「佐藤氏のような高い地位にあった方が、罪を認めていることの意味はとても重い。自白があるなかで裁判所が無罪を言い渡すことがどれほど難しいか」と、とかく自白偏重主義が指摘される日本の司法の問題点を強調する。
 しかし、佐藤氏はこの点については、苛酷な取り調べによって自白に追い込まれたのではなく、自分を応援してきてくれた人達が検察の厳しい取り調べに苦しめられていることを知り、それをやめさせるために自白調書にサインをしたと言う。また、早い段階で自白をしたおかげで、真実を求めて戦う気力を残したまま、拘置所から出てくることができたと、自白調書に署名をしたこと自体は悔やんでいないと言い切る。
 佐藤氏が原発に反対し、原発銀座とまで呼ばれ10基もの原発を有する福島県で原発が止まってしまったことが、日本の原発政策全体に多大な影響を与えていたことも、今回の事件と関係があるのではないかと疑う声がある。しかし、これについても郷原氏は、「今検察はそれほど高級な論理で動いてはいない」と一笑に付す。
 恐らく、東京地検特捜部はある見込みに基づいて、かなりの予算と時間と人員をかけて捜査に着手したのはよかったが、見込み違いがあったのか、なかなか大物が捕まえられずにいたところを、敵が多く、恐らくたれ込みネタも豊富であろう佐藤氏に白羽の矢がたったのだろうと、郷原氏は見る。「見込み違い」「幹部の保身」「筋の悪いたれ込み情報に振り回された結果」といったところが実情だったのではないかと言うのだ。
 佐藤氏自身は、自分が検察に狙われなければならない理由はわからないとしながらも、1年以上もの長期にわたり、佐藤氏の周辺を検察が捜査しているとの情報はあったと言い、最初から佐藤氏を狙った捜査であった可能性を排除はしていない。しかし、いずれにしても佐藤氏は最後まで無罪を主張して闘う意向を明らかにしている。
 今週はマル激特別版として、郷原信郎氏を司会陣に迎え、今回の判決が露わにした数多くの「なぜ?」とその背後にある日本の刑事司法の病理を佐藤栄佐久前福島県知事と議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・「無形の賄賂」と「換金の利益」で福島県知事汚職は二審も有罪
・やっぱりウィニーは悪くなかった
・テレビショッピングが広告ではない理由
・記者クラブアップデート


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第416回(2009年03月26日)
検察は説明責任を果たしているか
ゲスト:郷原信郎氏(桐蔭横浜大学法科大学院教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0411/000931.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第278回(2006年07月25日)
Winnyは悪くない
ゲスト:金子勇氏(Winny開発者)
http://www.videonews.com/on-demand/0271271280/000679.php
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-10-18 - 09:00:09
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総裁選での河野太郎氏の敗北はとても残念でした。
これで自民党の復活は少なくとも4年は遅れるでしょう。
観劇に行くと河野さんが近くにおられることがあります。



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■マル激トーク・オン・ディマンド 第444回(2009年10月10日)
河野太郎の自民党復活計画
ゲスト:河野太郎氏(衆議院議員)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_444_pre.asx

 先の総選挙で壊滅的な敗北を喫した自民党は、果たして復活できるのか。そして、それを可能にするためには、自民党はどのような理念を持った政党に生まれ変わる必要があるのか。
 総選挙後に実施された自民党総裁選は、谷垣禎一元財務大臣が大差で勝利した。今回のマル激ゲストの河野太郎氏は世代交代と脱派閥を訴え、党を舞台裏から支配する長老達に容赦の無い批判を浴びせたものの、結果的に党の長老の支持を受けた谷垣氏に大敗した。
 その河野氏は、「小さな政府」こそが自民党の採るべき路線であり、日本復活の路線だと自信を持って言い切る。小泉改革についても、構造改革路線そのものは間違っていなかったが、セーフティネットが不十分なまま再配分を廃止したことで、その負の側面が一気に吹き出したと位置づけている。
 河野氏の主張は明確だが、小泉改革の痛みを記憶する人々、特に地域の疲弊に苦しむ人々にとっては、なかなか受け入れがたいことかもしれない。しかし、河野氏はあえて厳しいことを言わなければ、日本はこのまま衰退の道を辿るだけだという。現実を直視せず、従来の図式で乗り切ろうという選択肢は今の日本にはもうない。いずれ民主党政権で「大きな政府」の歪みが生じてきたとき、自民党の出番がやってくる。それまでに党改革を断行し、自民党を全く新しい政党に作り変えるのだと河野氏は意気込む。
 冷戦下の高度成長期には、自由主義と資本主義、そして日米同盟の3つを堅持するだけで自民党のアイデンティティは十分維持が可能だった。ところが、20世紀後半になると、冷戦や高度成長といった前提条件が崩れたために、自明だった自民党の路線が見えにくくなってしまった。そして最後に残った自民党のアイデンティティが、「政権与党であることだけになってしまった」ことが、今回の総選挙での自民党の歴史的な敗北につながったと河野氏は分析する。
 野党に落ち、唯一のアイデンティティだった「政権与党」の地位も失った今、自民党はアイデンティティ・クライシスに陥っているかに見える。依然として、従来の公共事業による再分配を主張する議員も、自民党に少なからず残っている。しかし、河野氏は、小さく無駄のない政府を作り、経済成長を促すために規制緩和を進めなければ、この先日本は、借金に頼らずに国民を養っていけるような国にはなれないと主張する。そして、いずれ民主党政権の「大きな政府」の歪みが生じてきたとき、再び自民党の出番がやってくるというのが、河野氏の見立てだ。
 「リベラル再分配」路線を採る民主党が政権の座に就いた今、「保守政党」の果たすべき役割とは何なのか。次の総裁選に向けて全国行脚を始めたという河野氏をゲストに迎え、「健全な保守」とは何か、そして自民党再生のための処方箋とは何なのかなどを議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・光市母子殺害事件 元少年が実名本の出版差止請求
・証拠開示を求めグリーンピースが特別抗告
・最高裁判例ウォッチ
・記者クラブアップデート 亀井金融大臣が2回の会見


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第432回(2009年07月18日)
やっぱり日本にも保守政党が必要だ
ゲスト:杉田敦氏(法政大学法学部教授)
http://www.videonews.com/on-demand/431440/001121.php

■マル激トーク・オン・ディマンド 第391回(2008年09月27日)
自民党システムの終焉
ゲスト:野中尚人氏(学習院大学教授)
http://www.videonews.com/on-demand/0391391400/000794.php
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-10-18 - 08:03:00
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第440回(2009年09月12日)
「対等な日米関係」のすすめ
ゲスト:孫崎享氏(元外務省国際情報局長)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_440_pre.asx

 民主党は「対等な日米関係」という表現を好んで使う。民主党はマニフェストにもそれを盛り込んでいるし、民主、社民、国民新党の連立合意文書にも「緊密で対等な日米同盟関係」という文言が盛り込まれている。先日物議を醸した鳩山論文でも「対等」が強調されていた。しかし、「対等な日米関係」とは何を指しているのか。そもそも現在の日米関係は本当に対等ではないのか。
 日本の安全保障の根幹を成す日米同盟は、これまで何度か変質を繰り返してきた。著書『日米同盟の正体』で日米関係の現状を批判している元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、変遷を繰り返した結果、現在の日米同盟は60年の日米安保条約締結当時とは全く異質なものになっていると指摘する。
 日米の同盟関係は、警察予備隊の創設や思いやり予算の導入、日米共同軍事演習の開始など古くから多くの変質を遂げてきたが、孫崎氏はその中でも最も重要な変化が、92~93年の日米安保の再定義と2005年の2+2合意だったとの見方を示す。
 それまで日本に対してさしたる軍事的役割を求めてこなかったアメリカが、日本の自衛隊をどう使うかという発想へ大きく方針転換したと孫崎氏は言う。それまで冷戦体制の下でソ連の脅威への対応に専念してきたアメリカが、新たな脅威として北朝鮮やイラン、イラクといった不安定な国家を念頭に「国際環境を改善するために軍事力を使う」戦略へと切り替えた。
 その結果、日本の米軍基地の役割も変化し、アメリカにとっての自衛隊の位置づけも変わった。日米安保の対象が日本の国防から徐々に拡大され、その対象地域も拡大の一途を辿ることになる。
 また、外務省で情報畑を歩んできた孫崎氏は、ソ連の崩壊後、日本の経済力がアメリカにとって真の脅威となったことも、日米同盟の変質を促す要因となったと言う。アメリカの軍事力にただ乗りしながら、軽武装で経済に専念することで、経済的にアメリカを脅かすまでになった日本の国力を殺ぐために、その頃からアメリカは、自国の国際的な軍事戦略に日本を巻き込むためのさまざまな工作を行うようになった。
 それが実を結んだのが、安保成立当時からの明確な「縛り」だった極東条項を「周辺地域」にまで広げ、事実上日米安保の地理的概念を取っ払うことに成功した97年の日米新ガイドライン合意であり、99年の周辺事態法の成立だった。
 そして、アメリカの日本巻き込み戦略の集大成とも呼ぶべき成果が、05年に両国の外務・防衛大臣(アメリカは国務長官と国防長官)の間で合意された、いわゆる2+2合意「日米同盟:未来のための変革と再編」だった。孫崎氏はこの合意によって、日米同盟は締結当時とは全く異なる代物に変質したと言い切る。それは、元々日本の防衛のために存在したはずの日米安保が、遂には全世界の秩序維持のための協力関係へと変わってしまったからだ。
 2+2合意は、日米安保の根幹を成していた国連憲章の尊重も放棄し、国際安全保障環境を改善するために日米共通の課題に取り組むことが掲げられている。そして作戦、戦略、運用、訓練と全ての分野において細かく定められた規定によって、米軍と自衛隊との部隊レベルでの一体化が既に進んでいるという。
 05年の2+2合意はそれだけ重要な安保政策の転換を意味するものでありながら、国会でもほとんど議論されず、マスコミでもその意味を解説する記事は皆無だったと孫崎氏は言う。日本の安全保障の根幹を成す日米同盟に本質的な変更を加える政策転換が、一握りの外務官僚とその重要性をほとんど理解していない政治家によって実行されていたことになる。
 いずれにしても、日米同盟関係はもはや、「日本がアメリカから守ってもらっている」などという牧歌的な次元を遙かに超えた、世界規模の軍事協力関係にあることだけはまちがいないようだ。
 しかし、それでも多くの日本人が、「日本はアメリカに守ってもらっているのだから、日米関係が対等なはずがない」と感じているとすれば、それはなぜだろうか。孫崎氏は、それは長年に渡るアメリカの「情報戦」の成果だと言う。日本にはアメリカのためになることが日本の国益に資すると信じて疑わない人が多くいるため、アメリカは日本に対して簡単に情報戦を仕掛けられる立場にある。本人が自覚しないまま、結果的にアメリカの情報戦略の片棒を担いでいる日本人がたくさんいるというのだ。
 そもそも日米同盟は、アメリカが日本を守るための軍事力を提供する代わりに、日本は米軍に基地を提供することで、バーターが成立していると孫崎氏は言う。以前にこの番組でケント・カルダー氏が指摘したように、アメリカにとって日本ほど重要な軍事拠点は他になく、アメリカも既に日米同盟からは十分な対価を得ている。日米関係は決して「日本がアメリカに守ってもらっている」だけの関係ではないのだ。
 しかし、元々対等と言ってもいいような互恵関係にありながら、あたかも日本がアメリカに隷属しているかのようなイメージを定着させ、日本をアメリカの意向に従わせるのが情報戦の目的だとすれば、日本は情報戦においては、アメリカに完敗していると言わざるを得ないだろう。今回の選挙で民主党の「対等な日米関係」が国民の支持を集めたことが、そのイメージに対する反発の結果だったとすれば、情報戦がうまくいきすぎたために国民の反発を招いたことになり、皮肉な結果だったとしか言いようがない。
 日米関係の変遷と現状を検証し、民主党の掲げる「対等な日米関係」の意味を孫崎氏と議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・民主党政権に一抹の不安
・なぜ反対意見ばかりが報じられる 中期目標25%減の不思議
・自民党の苦悩は続く


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第385回(2008年08月16日)
なぜ日本には米軍基地があるのか
ゲスト:ケント・カルダー氏(ジョンズ・ホプキンス大学大学院教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第370回(2008年05月03日)
思いやり予算、そろそろやめませんか
ゲスト:田岡俊次氏(軍事ジャーナリスト)

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-09-13 - 21:08:23
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第439回(2009年09月05日)
高速道路無料化のすべての疑問に答えます
ゲスト:山崎養世氏(シンクタンク山崎養世事務所代表)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_439_pre.asx

 いよいよ民主党政権が始動することとなった。実質的に半世紀ぶりの政権交代でもあるので、課題が山積していることは言うまでもないが、まずは何と言っても民主党が公約に掲げた政策を実現し、日本に真の変化をもたらすことができるかどうかに注目が集まっている。
 そこで選挙明け最初のマル激では、民主党の目玉政策のひとつである高速道路無料化を取り上げ、無料化の元祖提唱者であるシンクタンク代表の山崎養世氏に、高速道路無料化に対するさまざまな疑問を徹底的にぶつけてみた。
 高速道路無料化は、2003年の総選挙から民主党が主張している主要政策だが、依然として財源や渋滞を招くのではないかという懸念、CO2発生の増加による地球環境への影響などを理由に、無料化に反対する声が根強い。
 しかし、山崎氏はこうした批判をいずれも、的外れだと一蹴する。それはこうした批判がいずれも、「前提から間違っている」からだと言うのだ。
 まず、無料化が受益者負担の原則を壊し、ただでさえ火の車状態にある財政をさらに悪化させるのではないかとの懸念には、山崎氏はこう答える。
 既に高速道路ユーザーは年間2兆3千億円の通行料金の他に、ガソリン税などを通じて年間2兆円にのぼる税金を支払っている。無料化に必要な財源は高速道路ユーザーの支払う税金で十分に賄えるため、一般国民の税金が投入されることはない。つまり、無料化こそ受益者負担の原則に戻ることであり、逆にガソリンで税金徴収した上に、高速道路ユーザーからも1キロあたり25円もの高い通行料金を徴収し、その二重取りしたお金で無駄な道路を作りづつけている現在の道路システムこそ、受益者負担の原則に反していると山崎氏は言う
 もともと日本では高速道路は無料だった。東名・名神高速の建設の際、建設に費やした借金の返済のために有料化されたが、返済を終えたら無料に「戻す」約束だった。しかし、1972年に田中角栄首相により料金プール制が導入され、他の路線の建設に回すため永遠に通行料金を取り続けることが可能になってしまった。その時初めて、高速道路は有料が当たり前になったのだ。それ以来、二重取りした財源を道路に注ぎ込み続けた結果、今や日本の道路支出は、英仏独伊の欧州の主要4カ国の合計額に匹敵するほど莫大なものとなっている。日本は教育費や子育て支援費ではそれらの国々の足下にも及ばないにもかかわらず、こと道路だけは世界に冠たる超大国になってしまったのだ。
 山崎氏によると、現在進行している民営化策では新たな借金で道路を作り続けるスキームが残されているため、無駄な道路を作り続けることが可能だと言う。それをやめさせるには料金収入を断ち切るしかない。つまり、無料化こそが有効な財政再建策になると、山崎氏は説く。
 無料化すると高速道路が渋滞するという懸念も、山崎氏は真っ向から否定する。地方では、高速道路は料金が高過ぎるために、地域の人々はこれを気軽に利用できる状況にはない。そのため、地方を走る高速はほとんどがガラガラで、むしろ周辺の一般道路が混雑しているのが実情だと言う。ならば、高速を無料にして一般道を走っている車を高速道路に乗せることで、高速も一般道も渋滞はなくなる。
 麻生政権の経済対策で高速道路を1000円にした際に高速が大渋滞した問題は、そもそも行楽のピークの道路が最も混む時期に値下げを行ったことの影響であり、期間を限定しない無料化であれば、あのような事は起きないと説明する。
 また、環境面から懸念されるCO2排出量の増加についても、混雑する東京の首都高や大阪の阪神高速は無料化の対象から外れるため、交通量が増えることはない。地方では一般道から高速に車が移動するので、より燃費の高い走行が可能になるうえ、一般道の渋滞は解消されるので、むしろCO2は減るはずだと山崎氏は言う。
 さまざまな批判や疑問に一つひとつ丁寧に答える山崎氏だが、しかし、そもそもこれらの批判は、大前提が間違っていると山崎氏は言う。
 財政負担についても、高速道路の無料にすることの経済効果は7兆8千億円もあり、道路の無料化による歳入の減少分を埋めて余りあるメリットが期待できる。料金徴収が不要になれば、料金所が不要となるので、出入り口を低コストで容易に増やせるようになる。出口が増えれば、自動車の流れがもっとスムーズで快適なものとなり、高い料金のために無用の長物となっていた高速道路は地域の生活道路に生まれ変わり、多大な経済効果も見込めるという。
 また、環境に対する懸念も、それは現在の内燃式のガソリンエンジン車を前提にした話であり、高速道路の無料化は車のエコ化を前提としなければ、意味のない議論になると山崎氏は言う。
 つまり、高速道路の無料化論は単なる利益や便益の向上を目的としたものではなく、これまでの外需中心の工業化社会から、地域振興、農林水産業の発展、観光、教育の充実など、内需主導のポスト工業化社会へ移行することを前提としているし、それを意図している。現在の体制を前提とした批判は、それ自体に意味が無いというのが、山崎氏の基本的な考え方だ。
 日本がこれから豊かな先進国になっていくためには、工業化の象徴とも言うべき東京一極集中を解消し、人を分散させ、時間と空間にゆとりを持たせることが不可欠であり、そのようなグランドデザインを実現するために高速道路の無料化があると山崎氏はいうのだ。
 山崎氏は、高速道路の無料化を実現する上での最大のハードルは、われわれ国民が無意識の間に受け入れてしまっている誤った「常識」と「想像力の欠如」だとの見方を示す。そもそも高速道路がタダになることは、本来であれば誰にとっても喜ばしいことであるはずだ。
 にもかかわらず、多くの国民がそれに懸念を表し、反対までするのは、無料化で既得権益を失う道路官僚や道路政治家たちが、それがあたかも悪いことであるかのようなネガティブキャンペーンを張り、マスコミもそれを垂れ流ししてきたことにも一因はある。
 しかし、多くの国民が自分の頭で考えることをせずに、それを受け入れてしまっていることで、われわれ一人ひとりの中に「そんなことできるはずがない」とか「そんなうまい話があるはずがない」といった「常識の壁」ができてしまっている。それこそが、高速道路無料化の最大のハードルだと山崎氏は言う。
 山崎氏の話は、高速道路の無料化が実現した後の課題となる、石油をベースとする経済体制から太陽をベースとする「太陽経済」への移行へと広がっていった。

<今週のニュース・コメンタリー>

・鳩山外交論文の謎
・カーチス教授の見た総選挙と政権交代
・比例のブロック制は問題あり
・最高裁国民審査で「一票の格差」にNO


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第234回(2005年09月17日)
それでもあえて郵政民営化を問う
ゲスト:山崎養世氏(シンクタンク山崎養世事務所代表)

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-09-06 - 00:50:49
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第436回(2009年08月15日)
最高裁国民審査を審査する
ゲスト:長嶺超輝氏(司法ライター)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_436_pre.asx

 総選挙前の恒例企画となった最高裁判所裁判官の国民審査特集。前回の国民審査以降の主要な最高裁判決を取り上げ、どの裁判官がどのような判断を下し、どのような意見を述べたかを、詳しく検証する。
 最高裁判所裁判官の国民審査は不信任の総数が投票総数の過半を超えた時に罷免となるが、実質的な効力は何も持たない。いろいろな意味で、明らかに形骸化した制度であることは否めない。
 しかし、マル激で繰り返し見てきたように、最高裁の決定がさまざまな形で現在の日本の社会の在り方を規定していることは間違いない。首をかしげたくなる判決を下したり、おかしな意見を述べたり、あるいは批判を恐れずに勇気ある決定を下した裁判官に対しては、われわれはしっかりと意志表示をする必要がある。
 今回の国民審査の対象となる最高裁判所裁判官9名を、本邦メディアでは初めて(?)顔写真付きで一人ひとりのプロフィールを紹介するとともに、2005年の国民審査以降の主要事件として、一票の格差訴訟や和歌山カレー事件、情報公開訴訟、痴漢冤罪事件、催涙スプレー携帯事件における各裁判官の判断と意見を取り上げ、その内容を検証した
 と、そこまではやるべきことをやってみたのだが、検証の過程で、あり得ないほど国民審査の制度が欠陥に満ちていることが明らかになった。そのような重大な問題が、これまで明らかにならなかったこと自体が、もしかすると国民審査を誰も真剣に受け止めてこなかった証左なのかもしれない。そう思えるほど、決定的な欠陥があるのだ。
 最高裁裁判官の国民審査は、まず裁判官任官後の最初の総選挙で審査にかけられ、その後10年間は審査がない。2度目の審査を受けるのは、最初の審査から最低でも10年以上経過した後になるが、ほぼ例外なく最高裁の裁判官には60歳以上の人が就任している。そして、最高裁裁判官は70歳が定年であるため、ほとんどの最高裁裁判官は、任官直後の総選挙時に一度だけ審査を受け、それ以降は審査を気にせずに悠々と裁判官を務めることになる。
 さて、問題は、その唯一の国民審査では多くの裁判官が任官からそれほど日が経っていないため、審査の判断材料となる主要な裁判にほとんど関わっていないことだ。今回も過去4年間で主要な裁判に関わった裁判官の大半は、今回の国民審査の対象になっていない。仮に最高裁の決定に不服があっても、国民審査を通じて特定の裁判官に対してその意志表示をすることが、事実上不可能になっているのが、この制度の実情なのだ。
 また、最高裁は仕組みそのものに、大きな問題を抱えている。これまで数多くの裁判を傍聴し、最高裁をウォッチしてきた司法ライターの長嶺超輝氏によると、最高裁への上告申立て件数は年間数千件~1万件近くにも及ぶという。わずか3つの小法廷に15名のみの裁判官(1名の長官と14名の判事)では、個々の案件を十分に審理することは、そもそも不可能なのだ。驚いたことに、最高裁がそれらを処理するスピードは、年間1万件とすると、1日あたり40件という計算になる。それを3つの小法廷で分担することを考慮に入れても、1つの小法廷で1日に13~14件、1件あたり30~40分に過ぎない
 30分そこそこで地裁、高裁での審理を全て再検証し、最高裁として独自の判断を下すことなど、あり得るはずがない。そこで、実際には裁判官の補佐役として任命される調査官が、予め膨大な裁判記録を読み、裁判官に争点を説明した上で過去の判例を提示し、選択肢を示すことになる。それが裁判官の判断に決定的な影響を与えるであろうことは、想像に難くない。そもそも最高裁の裁判官は、調査官からあがってきた情報をじっくりと精査する時間すら無いはずだ。
 つまり、早い話が、最高裁の実質的な意思決定は、政治任命を受けた最高裁裁判官ではなく、司法官僚制度の中で人選された調査官によって機械的に下されている可能性が否定できないのだ。これでは、せっかく最高裁という権威のある裁判所を設置して、三権の長の一人として首相待遇の長官と大臣待遇の判事を並べてみても、下級審や過去の判例から外れた大胆な決定など下るはずがない。
 日本の司法判断が陳腐化し、時代の潮流からずれていると感じる人が多いのも、やむを得ないことなのかもしれない。アメリカなどに比べて日本では最高裁の顔が見えないと言われる所以も、そのあたりにあるのだろうか。
 もはや有名無実化した最高裁を改革する術はあるのか。長嶺氏は、次の総選挙で民主党が勝った場合、慣例化した裁判官の人事システムに政治が介入することが突破口になる可能性があるという。
 最高裁判所の裁判官は、憲法上、内閣が任命することとなっているが、実際は最高裁事務総局という密室の中で司法官僚によって決められている。自民党政権下では、内閣は事務総局があげてくるリストを追認するだけだったが、政権交代を果たした民主党には、原理原則に立ち返り、内閣が独自の判断で裁判官を任命することで国民の関心を集めてほしいと、長嶺氏は注文をつける。まずは物議を醸すことで、世論を喚起し、マスメディアがそれを報じることから始めないと変わらないというのだ。それは、国民やメディアの関心の薄さが、最高裁の有名無実化や国民審査の陳腐化を招いてきたからだ。
 さらに、法律自体の違憲審査を行う「憲法裁判所」の創設や、十分な審理を行うために裁判官の人数を増員するなど、司法改革として手をつけるべきことはたくさんある。もしかすると裁判員制度などを導入する前に、日本の司法権力の頂点にある最高裁判所のこのような深刻な問題を改革することの方が、遙かに優先順位の高い問題だったのかもしれない。
 限られた事件の中で、最高裁裁判官の判決内容を検証するとともに、国民審査の欠陥と、そこから見えてくる最高裁や司法全体の問題について、長嶺氏とともに考えた。


<今週のニュース・コメンタリー>

・総務省検討委が番組制作の認定制を答申へ
・裁判員を無断で欠席すると罰を受けるのか
・議員の質問主意書にまともに回答しない政府
・鳩山代表が民主党の理念を語れないのはなぜか


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林真須美被告主任弁護人)

■インタビューズ (2009年04月25日)
「ヒ素は自分で呑んだ。真須美はやっていない」
真須美被告の夫・健治さんが最高裁判決の不当性を訴え

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-08-16 - 10:04:24
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第434回(2009年08月01日)
5金スペシャル
自民党の難点・民主党の難点

 5週目の金曜日に特別企画を無料放送でお届けする5金スペシャル。今回は、久々の神保哲生・宮台真司による二人マル激。今日の日本が抱える諸問題を解説したベストセラー『日本の難点』と、民主党の政策を徹底分析した『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』の両著者による、その名も「自民党の難点・民主党の難点」をお送りする。
 7月31日に自民党がマニフェストを発表し、自民・民主の二大政党の政権公約が出揃った。しかし、どんなにマニフェストと睨めっこをしていても、両党の正体は一向に見えてこないと、神保、宮台ともに、両党のマニフェストを一蹴。マニフェストではわからないこの選挙の本当の争点を、過去の番組映像を交えつつ、独自の視点から徹底討論した。
 戦後半世紀に渡り日本の政治権力を独占してきた自民党の力の源泉は、農村を権力の基盤としながら、経済成長を図り、その果実としての富を公共事業を通じて農村に還元させる再配分政治にあった。その再配分政治をより上手く回すために綿密に練られた権力構造が、野中尚人学習院大学法学部教授【2008年09月27日、第391回放送「自民党システムの終焉」】が指摘する、「自民党システム」だった。しかし、それは自民党の権力基盤を内側から瓦解させる時限装置でもあった。日本の工業化を進めた結果、自民党は自らの権力基盤である農村を弱体化させていったからだ。
 伝統的な農村依存型ではもはや権力の維持が困難であることを悟った自民党は、小泉首相の登場によって、これまで自民党システムを支えてきた農村を切り捨て、都市浮動票を獲得することで一時的に新自由主義政党として党を再生させるという、窮余の一策に打って出る。
 その結果、小泉政権誕生以降、自民党は急速に農村の支持基盤を失い、人気をベースとする都市無党派層に支えられた都市型政党に変質した。それを裏付けるデータ分析を提供してくれたのが、森裕城同志社大学法学部教授【2007年08月03日、第331回放送「データから見えてくる『やっぱり自民党は終わっていた』」】だった。そして、森氏の分析は、自民党が失った農村地盤に、そっくりそのまま小沢民主党が収まっている様も明らかにした。
 しかし、小泉改革は格差の拡大という深刻な問題を引き起こし、小泉路線を引き継いだ安倍晋三首相以降の自民党は、従来の支持母体を失った上に、都市無党派層にもそっぽを向かれ、方向性を失ったまま迷走を続けることになる。
 今回のマニフェスト発表会見で麻生首相は、市場原理主義との決別を宣言し、自民党旧来の再配分路線への回帰を打ち出したが、宮台はこの路線には無理があるとの厳しい評価を下す。グローバル化の傷を深く負った今日の日本では、誰が政権についたとしても一定の再配分は不可欠だが、同じ再配分でも「既得権益を温存したままの再配分か、既得権益を引き剥した上での再配分か」が、現在の日本の路線の分かれ目になると宮台は言う。今回の自民党のマニフェストに、既得権益との決別が明示的に打ち出されてないことが、現在の自民党の正体を露わにしているというのだ。
 自民党は保守政党としてのアイデンティティを再構築し、自分たちが保守すべき価値とは何であるかを明確にした上で、党勢の回復を図らない限り、自民党の真の復活は期待できないと、宮台は言う。【2009年07月18日、第432回放送「やっぱり日本にも保守政党が必要だ」、ゲスト:杉田敦(法政大学法学部教授)】
 一方の民主党はオープン、フェアネス、セーフティネット、包摂性などをキーワードに、リベラル政党としてのアイデンティティを固めつつあるかに見える。しかし、その路線や立ち位置が明確に有権者に伝わっているかと言えば、疑問が残る。【2009年03月17日、第413回放送「今あえて民主党の政権構想を再検証する」、ゲスト:飯尾潤(政策研究大学院大学教授)】
 ダイヤモンド・オンラインに寄稿した連載記事【ダイヤモンド・オンライン「民主党政権ができると何がどう変わるのか?」】の中で神保は、民主党が打ち出している子ども手当、公立高校の実質無償化、農業の戸別所得補償、選択的夫婦別姓などを引き合いに出した上で、民主党がリベラルな再配分政党であることは明白であるにもかかわらず、民主党は、恐らく旗幟を鮮明にすることで支持率が下がることを意識して、自らの路線を明確にすることを意図的に避けているように見えると、こちらもまた民主党のマニフェストへの不満を隠さない。
 「マニフェストを単なるきれいごとにしてしまうと、いざ政権をとって本当に改革の痛みが出てきたときに、民主党を支持した人たちがそっぽを向いてしまうリスクが高まる」と神保は指摘する。また、民主党は一定の理念に基づいて再配分を行っているにもかかわらず、子ども手当など目立つ政策だけが一人歩きすることで、これが単なるバラマキとしてしか受け止められないリスクも冒すことになる。
 「民主党は、多少不人気になっても、自分たちの路線がまかせる政治から引き受ける政治への路線転換であり、市民側にその覚悟を求めるものであることを伝える必要がある」と、神保は注文をつける。
 これまで大勢の識者とともに自民党と民主党の政治をさまざまな角度から検証してきた神保・宮台両キャスターが、マニフェストやマスメディア報道からは見えてこない、来る総選挙の真の争点を、徹底的に議論した。


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第432回(2009年07月18日)
やっぱり日本にも保守政党が必要だ
ゲスト:杉田敦氏(法政大学法学部教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第413回(2009年03月07日)
今あえて民主党の政権構想を再検証する
ゲスト:飯尾潤氏(政策研究大学院大学教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第391回(2008年09月27日)
自民党システムの終焉
ゲスト:野中尚人氏(学習院大学教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第331回(2007年08月03日)
データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」
ゲスト:森 裕城氏(同志社大学法学部准教授)

■プレスクラブ (2009年08月01日)
自民党マニフェスト発表会見

■プレスクラブ (2009年07月27日)
民主党が衆院選向けマニフェストを発表

■プレスクラブ (2009年07月22日)
麻生首相、鳩山代表が総選挙に向けた展望を示す
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-08-02 - 15:29:44
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第433回(2009年07月25日)
密約問題が示す無法地帯と化した日本外交の現実
ゲスト:河辺一郎氏(愛知大学現代中国学部教授)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_433_pre.asx

 戦後の日本外交を象徴すると言っても過言ではない、核兵器の持ち込みをめぐる日米間の密約が、皮肉にも日本外交の実態を白日の下に晒し始めている。
 60年の日米安保改定時に、核兵器を搭載した米艦船の寄港や領海通過を日本が容認したとされる「密約」は、過去にライシャワー元駐日大使の証言や機密指定が解かれ公表された米公文書資料によって、その存在が何度となく取りざたされてきた。
 しかし、このたび村田良平元外務次官らが密約の存在を正式に認めたことで、密約の存在を否定し、非核三原則を国是として掲げてきた日本政府の外交政策の正当性が、いよいよ問われる事態を迎えている。なんと言っても日本は、唯一の被爆国として戦後一貫して核兵器に反対し、核軍縮に努めることを国内外に向けて高らかに謳ってきた国だ。にもかかわらず、その国が実は自国への核兵器の持ち込みを容認し、しかもその事実を50年間も隠し続けていたということになるからだ。
 日本政府は依然として、密約の存在も、核持ち込みの有無も言下に否定するばかりで、半世紀もの間、その存在を否定し続けてきた理由を説明しようとしない。そのため日本では、米軍の核持ち込みが容認されているという現実の上に立って、これからの安全保障を議論することすら、できないでいる。
 国益を守るためには、自国民や他の国に対して外交交渉のすべてを明らかにできない場合もあり得るだろう。その意味では、密約そのものを全面的に否定すべきではないかもしれない。ただし、それは一定の期間を経た後に、必ず事実が明らかにされ、その正当性が検証されることが大前提となる。この期に及んでも、密約の存在すら認められない日本政府や外務省の立場を見ると、そもそもこの密約が真に国益を守る目的で秘密にされてきたかどうかすら、怪しくなってくる。
 日本外交をウォッチしてきた愛知大学の河辺一郎教授は、日本は外交の舞台で核軍縮に関してイニシアチブをとったこともなければ、国連の核兵器に反対する議決に対しても、率先して反対もしくは棄権をしてきたのが現実だという。安全保障政策においてアメリカの核の傘に依存する日本にとって、核軍縮はもはや外交上の大きな関心事ではなかったのだ。むしろ、核の傘を提供してくれているアメリカの意向を慮ることこそが、日本外交にとっては唯一無二の重要課題であり、こと外交に関する限り、それ以外のことは真剣に考える必要すらなかった。
 つまりアメリカの核の傘に守られているからこそ、そしてそれが密約という形で担保されているからこそ、日本は表面上は非核三原則や核廃絶や平和主義を訴えることができたが、実際にその真贋が問われる外交交渉や国連決議の場では、実は日本外交は何度も馬脚を現していたということになる。知らぬは日本人ばかりなりということか。
 河辺氏は、日本の外務省が事実上法を超越した存在として、国会のチェックすら及ばない状態にあることに、日本外交が国民から乖離したり暴走したりする原因があるとの見方を示すが、その一方で、その責任は外務省だけはなく、外交政策のチェックや検証を怠ってきた外交の専門家やジャーナリストにもあると指摘する。
 来る総選挙で民主党が勝利し、政権交代が実現した時、日本のチェック無き外交の病理を断ち切る千載一遇のチャンスがめぐってくる。しかし、今のところ外交政策や外務省のあり方が選挙の争点になる気配は全く見られない。残念ながらこれが今の日本の実情のようだ
 今回は密約問題を入口に日本外交が抱える問題を河辺氏と議論した。また、国連の専門家でもある河辺氏に、民主党の国連中心主義への評価を聞いた。  


<今週のニュース・コメンタリー>

・韓国国会がクロスオーナーシップ法をめぐり紛糾
・現実路線に軌道修正か。民主党が政策集を公表
・太陽光発電、買取制度の詳細が明らかに
・解散から総選挙まで41日?


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第256回(2006年02月23日)
日米偽装同盟はここから始まった
ゲスト:西山太吉氏(元毎日新聞記者)

■プレスクラブ (2009年07月13日)
核密約を否定した政府答弁は修正を
河野太郎 衆院外務委員長記者会見

■プレスクラブ (2009年03月17日)
西山太吉さんらが密約文書の開示を求めて提訴
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-07-26 - 17:40:56
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第432回(2009年07月18日)
やっぱり日本にも保守政党が必要だ
ゲスト:杉田敦氏(法政大学法学部教授)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_432_pre.asx

 自民党政権が、いよいよ土壇場を迎えているようだ。東京都議選の惨敗で、このままでは次期衆院選での敗北が必至という状況を迎えながら、自民党内ではいまなお内輪揉めが続き、窮余の一策さえ打ち出せないでいる。そこにはもはや、半世紀にわたり日本を治めてきた長期政権政党の姿は見いだせない。
 しかし、より深刻なのは、自民党が自らの政党としてのアイデンティティを見失っているかに見えることだ。この期に及んでも、党内から聞こえてくる声は、誰の方がより人気があるかといった表層的な議論ばかりだ。政権交代のチャンスをうかがう民主党は政策面、とりわけ安全保障政策面での党内不一致が取り沙汰されることが多いが、自民党に至っては伝統的保守政党なのか、小泉改革に代表される新自由主義政党なのか、はたまた何か別の物なのかさえ、定かではなくなってしまっている。これではもはや政党の体を成していないと言っても過言ではないだろう。
 1955年の保守合同で保守勢力としての歩みを始めた自民党だが、そもそも自民党が政治的な意味で保守政党だったと言えるかどうかは再考を要する。再配分を主張する勢力は政治学的にはリベラルもしくは社民勢力と呼ばれ、保守の対局に位置づけられるが、政治学者の杉田敦法政大学法学部教授は、自民党は自らが政治基盤を置く農村への再配分を主軸とした政策を実行してきた政党であることから、世界でも特殊な「再配分保守」という位置づけになるという。
 戦後直後の日本はまだ農村社会であり、自民党は農村に政治的基盤を置き、農村開発を通じて再配分を行うことで国民の広汎な支持を獲得してきた。その後、高度経済成長とともに、自民党は池田内閣の所得倍増計画に見られるような、市場重視の伝統的保守主義に軸足を移していくが、市場経済がもたらす利益は公共事業によって農村に還元するという再配分政策だけはその後も続いた。政治思想的には伝統的保守を標榜しながら、実際は再配分政党であり続けたことが、自民党の特色だった。
 しかし、農産物の自由化や大型店舗法改正などアメリカからの規制緩和要求が強まる中で、農村の疲弊は避けられないものとなる。その後1990年代の低成長時代に入ると、そもそも地方に最配分するための財源が底をつき始め、自民党型再配分政治の統治モデルがいよいよ立ち行かなくなる。
 そこに登場したのが自民党をぶっ壊すをスローガンに颯爽と登場した小泉元首相だった。国民の高い支持に支えられた小泉政権は、自民党の伝統的な利益再配分政治を一掃し、新自由主義へと舵を切った。それが功を奏し、自民党は少なくとも一時的に農村政党から都市政党への脱皮に成功したかに見えた。
 しかし、小泉政権の新自由主義的政策は、それまでの再配分で「一億総中流」と言われるほど所得の平準化が進んでいた日本で所得格差を急拡大させ、公的補助の削減によってセーフティネットからこぼれ落ちる困窮層を急拡大させた。小泉政権以後の自民党政権では、改革の負の面が一気に吹き出し、構造改革路線も立ち行かなくなる。しかし、かといって今更農村政党に戻ることもできず、自民党は政策的には「八つ裂き状態」(杉田氏)に陥ってしまう
 その間隙をついて、それまで必ずしも方向性が定まっていなかった民主党は、小沢一郎代表のもと、再配分に主眼を置いたリベラル政党としての方向性を固めていく。また、農家の戸別所得補償制度などを主張することで、小泉改革の下で自民党が置き去りにした農村票を丸々奪うことに成功する。
 しかし、自民党が迷走するのも無理からぬ面があった。保守というからには保守すべき対象が問われる。冷戦下の保守勢力が保守すべき対象は日米同盟であり、自由主義経済であることは自明だった。しかし、今日の日本の保守勢力が保守すべき対象が何であるかについてコンセンサスを得ることは決して容易ではない
 来る総選挙の結果、民主党政権が誕生した場合、日本では事実上初めてのリベラル政権の誕生ということになる。人間の理性を過度に信じ、正しい政策を行えば必ず社会は良くなると過信する傾向があるリベラル政権には、対抗勢力として、伝統や慣習の中に蓄積された叡知を信頼する保守政党が必要だ。自民党が保守政党として再興し、民主党政権の暴走をチェックするとともに、有権者に別の選択肢を提示することは、日本の議会制民主主義の安定のためにはどうしても不可欠だ。
 政権交代がいよいよ現実味を帯びてきた今、日本の保守政党に求められる条件とは何かを、杉田氏と考えた。  


<今週のニュース・コメンタリー>

・河野外交委員長 密約で政府答弁の変更求める
・都内タクシー 車載カメラの映像を警察に提供へ


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第391回(2008年09月27日)
自民党システムの終焉
ゲスト:野中尚人氏(学習院大学教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第331回(2007年08月03日)
データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」
ゲスト:森 裕城氏(同志社大学法学部准教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第307回(2007年02月16日)
西部邁流、保守主義のすすめ
ゲスト:西部邁氏(評論家・秀明大学学頭)
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-07-18 - 15:34:40
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第431回(2009年07月11日)
ミツバチが知っていて人間が知らないこと
ゲスト:中村純(玉川大学ミツバチ科学研究センター主任教授)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_431_pre.asx

 今年の春、農作物の花の受粉に使用されるミツバチの不足が全国各地で伝えられた。花粉交配用ミツバチは、特にイチゴやメロンなどのハウス栽培作物に欠かせないため、海外から繁殖のための女王蜂を輸入することで安定供給を図っていたが、輸入の8割を占める豪州産女王蜂に伝染病が発生し、輸入が止まったため需給に混乱が生じたことが、今回の日本におけるミツバチ不足の直接の原因だったようだ。
 しかし、ミツバチの大量死や減少は、日本だけでなく、世界各地で多発している。特に米国では、蜂群崩壊症候群(CCD)と呼ばれるミツバチが巣箱から突然消えていなくなる現象が3年前から各地で発生し、農業生産に大きな打撃を与えている
 ミツバチの消滅や大量死の原因には諸説あるが、ミツバチ研究の第一人者である中村純玉川大学ミツバチ科学研究センター主任教授は、全米で起こったCCDについては、人間がミツバチを農業用の資材として酷使したことで、ミツバチに過度なストレスがかかったことに原因があったとの見方を示す。
 アメリカでは花粉交配用のミツバチは農業生産に欠かせない家畜として、開花の時期に合わせて巣箱ごと全米各地をトラックで長距離移動させられる。しかも、単一作物が植え付けられた広大な農地での受粉作業は、ミツバチにとって栄養バランスの悪い食事以外の何ものでもない。
 移動の疲れに栄養不足など過重なストレスがかかったミツバチが、ダニ、ウイルス、農薬など既知の外敵への抵抗力を低下させていた可能性も否定できない。実際、アメリカではミツバチの栄養と衛生状態を改善した結果、今年はCCDの発生はほぼ治まっているという。
 ミツバチの大量死が顕著だったアメリカには、そのような特殊な事情があったと見られる一方で、アメリカほどではないものの、やはりミツバチの不足や減少が発生している日本や欧州では、ネオニコチノイド系農薬に原因の一端があるとの見方が有力だ。
 ネオニコチノイド系農薬は、人体に有害な有機リン系農薬に代わる新種の農薬として開発され、近年その使用が急激に増えている。人体への影響はないが、昆虫の神経系に打撃を与える特徴を持つとされる。
 欧州ではネオニコチノイド系農薬を使用した農地の周辺でミツバチの大量死が報告されたため、現在フランスやオランダなどでは全面禁止され、EU全体でも禁止の方向に向かっているという。
 日本ではカメムシ被害によってコメの等級が下がることを避けるために、稲田でネオニコチノイド系の農薬が広範に利用されるようになっている。カメムシ被害に遭った稲は、コメに微少な斑点がつく。しかし、食味上何の影響もない斑点米の僅かな混入でコメの価値が下がってしまうことを避けるためにネオニコチノイド系農薬が大量に使われ、ミツバチを含む生態系に多大なストレスを与えている現状は、果たして合理的と言えるだろうか。また、科学的には人体には影響しないとされるネオニコチノイドでも、一定量を超えて使用されれば、影響があるとの指摘もある。
 このように世界的なミツバチの大量死は、単純な因果関係で説明できないが、一つはっきりしていることは、農業が産業化し、ハウス栽培などでミツバチを工場の機械の一つのように扱うようになったことと無関係ではないことだ
 アメリカでのミツバチの酷使はもとより、ネオニコチノイドについても、ミツバチの受粉期は農薬の散布を避けるなどの小さな工夫で、ミツバチへの影響を最小限に抑えられる可能性はある。
 昨今のミツバチ大量死は、農業においても生産性と効率のみを追求するあまり、ミツバチを農業資材としか見なくなった人間が、その程度の配慮さえできないまでに利己的になっていた現実を、訴えかけている。
 またネオニコチノイドも、「人体に影響がない」との能書きで近年一気に利用が広がっているが、仮に人体への影響がないことが本当であったとしても、それだけで大量使用することは、生態系の他の生物のことを全く無視しているとの誹りは免れない。それがミツバチに打撃を与え、更にそれが農業生産に影響を与えることで、結果的に回り回って人間に大きな不利益をもたらしていることになる。
 社会性動物であるミツバチは、女王蜂を中心に一つのコロニーを形成し、コロニー内では数千から数万の働き蜂が、それぞれ明確に決められた自分の役割分担を果たす。ミツバチはまた、高度なコミュニケーション能力を持ち、例えば8の字ダンスは良い蜜の在り処を他の蜂に伝える伝達手段なのだという。人間はそのような高度に進化したミツバチさえも、効率的農業生産の道具としてしか見られなくなっているようだ。
 地球の生態系では、被子植物の多くがミツバチの受粉に頼って生きている。互いが互いを必要とする生物相互関係の中でミツバチも植物も進化を遂げ、動的平衡が保たれてきた。その精妙なバランスを身勝手な論理で人間が崩したことが、ミツバチ消滅が起きた真の原因と考えるべきかもしれない
 しかし、ミツバチの生態の逞しさや複雑さを見ていると、環境に対して開かれているが故に環境の影響を受けやすいミツバチよりも、環境を克服するために環境から自らを隔離し、生態系との相互関係を失ってしまった人間の方が、なぜか脆弱な存在にすら思えてくる。
 中村氏は、だからこそ人間はミツバチの視座を持つことが大切だと説く。人間を中心に据えるのではなく、他の生き物の立場に立って生態系のあるべき姿を再考すれば、生物多様性の本当の意味が自ずと見えてくるはずだと言うのだ。
 今世界でミツバチに起きていることや、ミツバチの類い希な習性や生態から、我々人間は何を学ぶべきかを、ミツバチ博士とともに考えた。


<今週のニュース・コメンタリー>

・児童ポルノ法改正: 行政の裁量拡大に無警戒な政治の惨状
・なぜ今、供託金引き下げなのか


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第405回(2009年01月07日)
だから男はみんなできそこないなんだ
ゲスト:福岡伸一氏(青山学院大学理工学部教授)
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-07-12 - 15:29:15
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第430回(2009年07月04日)
世論という名の魔物とのつきあい方
ゲスト:菅原琢氏(東京大学特任准教授)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_430_pre.asx

 世論という魔物が、政界はおろか、日本中を跋扈しているようだ。
 支持率の低迷で、自民党内からも公然と退陣を求める声が上がるなど、麻生降ろしが本格化し始めている。もともと国民的人気が高いという理由から、選挙の顔として擁立されたはずの麻生首相だが、今は人気の無さを理由に、首相の座から引きずりおろされようとしている。これも世論らしい。
 かと思うと、宮崎県で圧倒的な人気を誇る元タレントの東国原知事の国政進出をめぐり、自民党の大幹部が右往左往するなど、いつ来てもおかしくない総選挙を控え、政界は「人気がすべて」の様相を呈し始めている。これも世論だそうだ。
 確かに人気は民意を推し量るバロメーターの一つかもしれない。しかし、人気が政治を支配するようになると、何か大切なものが失われるような思いを禁じ得ない。そもそも私たちが「人気」と呼んでいるものに、実態はあるのだろうか。
 人気を測るツールの一つに世論調査というものがある。民主政治を機能させる目的で戦後直後に新聞社によって始められた世論調査は、今や毎月のように頻繁に行われるようになったが、少なくとも当初の世論調査は「輿論(よろん=public opinion)」を知るための手段と考えられており、現在のような単なる「大衆の気分」を意味する「世論(=popular sentiment)」の調査ではなかったと言われる。世論調査を報じる新聞記者たちの間にも、「輿論を聞け、世論には惑わされるな」という意識が共有されていたそうだ。
 しかし、いつしか「輿論」は「世論」に取って代わられ、政治は変質を始める。もともと代議制は、世論の政治への影響を緩和するための間接民主主義としての意味を持つが、人気に振り回されている今のポピュリズム政治は、事実上直接民主制と何ら変わらないものになっている。
 現在の政治はこの世論の動向に敏感に反応し、世論が政策決定にも大きな影響を及ぼすようになっている。政府は長期的には重要であることが分かっていても、短期的に不人気になる政策を実行することがとても難しくなり、外交や死刑制度といった国民の生活に関係する問題も、いわば俗情に媚びた決定を繰り返すようになった
 世論調査に詳しい政治学者の菅原琢東京大学特任准教授は、そうした傾向の中で、ポピュリズム政治の代名詞と見られることが多い小泉政権こそが、最近ではもっとも世論をうまく利用した政治のお手本だったとの見方を示す。そしてそれは小泉首相が、人気取りをしなかったところに、そもそもの勝因があると言うのだ。
 確かに、日朝会談や郵政選挙など、小泉政権を代表する政策は、必ずしも当時の国民の間で人気の高い政策ではなかった。しかし、小泉首相は次々と大胆な改革を断行することで世論を味方につけ、高い内閣支持率を支えに、さらに次の改革を打ち出すことで、長期にわたり高い国民的人気を維持することに成功した。政策の中身の是非はともかく、小泉政権の高い人気が、結果的に過去の政権が成し遂げられなかった多くの施策の実現を可能にしたことは紛れもない事実と言っていいだろう。
 しかし、その後の自民党政権は、逆に人気ばかりを気にするあまり、思い切った政策を打ち出すことができなくなっている。一時的に人気のある人を首相に据えても、政策的に無策なため、たちまち支持率が低迷し、ますます大胆な政策が打てなくなる悪循環に陥っている。高い人気に後押しされて大きな成果をあげた小泉政権と、人気を気にし過ぎるが故に、大胆な施策を打てない安倍政権以後の政権のあり方は、実に対照的だ。
 一方、財源問題を抱える民主党も、支持率低下を恐れて、消費税は絶対に上げないことを公約するなど、明らかな人気取りに走っている。政権を取るためにはやむを得ない選択との指摘もあるが、小泉政権とそれ以後の政権の対比から、政治は何も学んでいないのだろうか。
 しかし、泣いても笑っても、天下分け目の総選挙は近い。有権者の中にも、世論調査や選挙予想を気にしながら、そろそろお目当ての候補者を見定め始めている人も多いはずだ。また、各党の人気取り合戦の方も、いよいよ熱を帯びてきている。
 政治に限らず、我々の周りには人気投票やランキングであふれかえっている。そうしたものに振り回されないで生きるためには、我々は何を支えに、どのような視座で「人気」というものを考えればいいのだろうか。
 今週は世論調査を入り口に、「輿論」と「世論」の違いや「人気」との付き合い方を議論した。
 
<今週のニュース・コメンタリー>

・鳩山故人献金問題 釈明だけでは不十分だと考えるこれだけの理由
・政府は核密約をどこまで否定し続けるつもりなのか


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第331回(2007年08月03日)
データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」
ゲスト:森 裕城氏(同志社大学法学部准教授)

■プレスクラブ (2009年06月30日)
『報道の指摘は基本的に事実』
鳩山民主党代表が自身の献金問題について会見
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-07-04 - 23:46:00
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第429回(2009年06月27日)
意味のある政権交代を実現するために
ゲスト:山口二郎氏(北海道大学教授)

<プレビュー>
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 麻生首相は25日、記者会見で解散の時期は「そう遠くない」と述べ、解散総選挙が近いことを仄めかした。早ければ7月2日の衆議院解散も取り沙汰されている。しかし、内閣の支持率は依然として低落傾向が止まらない。雑誌などの選挙予想を見る限り、どうやら政権交代が現実のものとなりつつあるようだ。
 これまでマル激では、民主党の政策を詳細に検証し、政権交代後の政権を展望する企画を何度か行ってきた。今回は日本で事実上半世紀ぶりとなる「政権交代」そのものの意味を考えた。
 1996年の旧民主党結党時から党のブレーンであり、政治学者として政権交代を研究してきた北海道大学の山口二郎教授は、政権交代本来の意味を考えれば、半世紀にわたりそれがなかった日本に、今どのような弊害が生じているかがありありと見えてくると言う。
 もともと日本が採用している議院内閣制は、三権分立ではない。立法府の代表が行政の長を兼ねるため、立法府が強くなりすぎる危険性がある制度だ。しかも、人間や人間の作る組織は必ずまちがいを犯す。権力を手にすれば、いずれ腐敗し、時代への適応力を失っていくことは、歴史が証明している。また、一つの勢力が権力の座に長くあると、行政や既得権益を持った団体や事業者との間に癒着関係が生じる。その癒着故に、必要な改革が行えなくなる。
 そうした人間の不完全さや腐敗や堕落から政治を救い、立法府の暴走や閉塞を防ぐために、政権交代は民主主義のシステムにもともとビルトインされた機能だった。しかも、日本では裁判所とメディアという、本来は権力の暴走をチェックするはずの機関が、ほとんどまともに機能していない。このような日本固有の問題もあると山口氏は指摘する。つまり、早い話が、日本ほど政権交代を必要としている国はないにもかかわらず、それが実質的に半世紀もの間、一度も起きなかったことが、今日本が抱える様々な問題へとつながっているということだ。
 確かに冷戦構造下の日本は、政権交代を必要としていなかったという説に一定の合理性はある。日米同盟、軽武装に経済発展至上主義。これは、戦後、そして冷戦構造下の日本にとって唯一の選択肢でもあったし、また日本人の大半もその選択に異論はなかった。16年前に一度、短い政権交代があったが、あれは自民党の一部が離党して野党と手を組んだために起きた、言わば擬似的政権交代であり、有権者が主体的に別の勢力を選んだ本当の意味での政権交代だったとは必ずしも言えない。その証拠に、8勢力による連立政権は理念や政策も共有しておらず、8ヶ月で空中分解してしまった。
 政権交代は同時に、政策の選択でなければならない。欧米ではこれまで、再分配政策の度合いの多寡で、左右の陣営に勢力が分かれ、政権交代を繰り返してきた。平等を重んじ、貧富の差を縮めるために富の再分配を強調するのが左派で、政府の介入の行き過ぎを警戒し、より市場や個人の自由に任せるのが右派という選択が、概ねどの国にも存在した。しかし日本では、自民党が「寛大な保守」(山口氏)という、本来は右派的な立場にありながら、実際には公共事業や補助金を通じた左派的再分配を積極的に行ってきたため、右と左の対立軸が明確にならなかった。しかも、日本では1980年代まで社会党が、社会主義イデオロギーの旗を降ろさなかったため、政権選択の現実的な選択肢になれなかった。
 その自民党は一度は小泉改革で再分配政党の看板を降ろし、新自由主義的保守路線をとったが、それ以後構造改革路線は微妙に修正してきている。一方民主党も、当初は政党のアイデンティティが捻れていたと山口氏は言う。当初民主党には社民党的再分配派と自民党以上に新自由主義的な政治家が混在し、それは今も変わっていないが、小沢一郎氏が代表に就任して以来、民主党は新自由主義から再配分へ明確に路線を切り替えたと山口氏は言う。自民党内は、小泉改革の評価をめぐり一枚岩ではないが、基本的には自民党の自由主義路線と民主党の再分配路線の対立軸がある程度はっきりと顕在化したため、次の選挙は、壊れかけた日本の社会経済システムをどのような方法で立て直すかをめぐる路線選択の選挙になったと、山口氏は言う。
 仮に民主党が政権を取ったとしても、民主党が自らの歴史的役割を正確に認識し、それを確実に実行できなければ、政権交代が自己目的化してしまう危険性もあると、山口氏は警鐘を鳴らす。また、より大きな問題は下野した後の自民党だ。自民党が野党に落ちた時、政党のアイデンティティを持ち続けることができるかどうか。また、その場合、自民党のパーティ・アイデンティティは中川秀直氏らが主張する構造改革路線なのか、麻生首相や一部の穏健派が主張する安心・安全、中福祉中負担路線になるのか
 自民党が党の力を再結集できない場合、今度は民主党による長期独裁の危険性も出てくる。日本の議院内閣制は、本来は立法府の独裁こそ、もっとも警戒しなければならないシステムなのだ。自民党は日本における「健全な保守」とは何であるかの議論、つまり日本において「保守政党が保守しなければならない価値とは何か」の議論から始める必要があるだろう。
 政権交代が現実のものとなった今、政権交代を意味のあるものにするために、アメリカやイギリスの政権交代との比較を交えて、政権交代に我々が何を求めるべきかを、山口氏と議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・政権交代前にクローン牛・豚を安全と判断?
・メディアの関心は解散だけ
・またぞろ政治とカネ問題が吹き出す
・バス代が出ない裁判員制度から見えてくるもの


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第263回(2006年04月14日)
小泉×小沢で日本の政治はどう変わるのか
ゲスト:山口二郎氏(北海道大学教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第172回(2004年07月12日)
この参院選でわたしたちは何を選択したか
ゲスト:山口二郎氏(北海道大学教授・政治学)

■特集・民主党政権を展望する
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-06-28 - 10:08:51
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第428回(2009年06月20日)
Googleブック・サーチが問う出版の未来
ゲスト:村瀬拓男氏(弁護士)

<プレビュー>
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 またまたGoogleという黒船が日本の扉を叩いている。街中を写真に収めて回るストリートビューや空から世界中が見えてしまうGoogleアースなど、これまであり得なかった画期的なサービスで物議を醸してきたGoogleが、今度はグーテンベルク以来の出版のあり方を根底から変えようとしている。Googleは契約した図書館の蔵書をスキャンしてデータベース化を進め、いずれは世界中の全ての本をデジタル化する方針を明らかにしている。そして、これは紙の著作物の流通で収益をあげてきた出版業界にとって、自らの存在を根底から覆しかねない大問題となっているのだ。
 このサービスは「Googleブック・サーチ」と呼ばれるもので、アメリカでは04年、日本では07年に開始したもの。Googleが契約した図書館(米ハーバード大学図書館など。日本の慶應義塾大学が参加)の蔵書を片っ端からスキャンしてデータベース化したことで、既に利用者は本のページの画像をネット上で見ることができるようになっている。また、本の全文がテキスト化されデータベース化されているため、キーワード検察でその言葉を含む全ての本をリストアップすることも可能になった。本の全文がテキスト化されデータベース化されたことで、一般利用者は欲しい本を手に取ることなくネット上で見つけ、アマゾンなどで購入することができるようになっている。
 しかし、このサービスに対して、05年、米作家協会などが本の権利者の許諾を得ずに全文をスキャンすることは著作権侵害だとして、Googleを提訴した。Googleは米著作権法が定めるフェアユース(公正な利用)に基づいていると主張し、米作家協会らはスキャンは無許可の複製であると主張したが、昨年両者の間で和解が成立し、許諾なしにスキャンした書籍については1作品あたり60ドルをGoogleが支払うことや、このサービスから得られる収益の63%を権利者に支払うこと、版権登録機関の設立費用をGoogleが出すことなどが決まった。
 この和解の成立で、権利者(出版社、著者)は和解案に参加するか離脱するかを迫られることになったのだが、なんとこれが、日本の出版社や著者にも及ぶことが判明し、日本の出版界は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。
 そもそもこの和解は、アメリカで行われた訴訟が集団訴訟(Class Action)という形をとっていたため、そこで得られた和解や判決は原告のみならず、その被害を受けた人全員に効力を持っている。それでも普通であれば自分が関わっていない外国の裁判所の決定になど拘束されないものだが、こと出版に関しては、日本はベルヌ条約という著作権を相互に保護する国際条約に加盟しているため、アメリカで保護が決まった著作権はそれが自動的に日本にも適用されるという。
 そのため、日本の著者や出版社も、和解を拒否したい場合は申請が必要で、一定の期限までにその意思表示がない場合は、和解を受け入れたものとみなされてしまうという。何とも乱暴な話だが、それがGoogleブック検索がまさに「黒船」である所以なのだ。
 出版業界と深い関係を持つ弁護士の村瀬拓男氏は、この和解案は出版業界のあり方を根底から覆すような、本質的な問題提起をしていると説明する。
 今回の和解案では、現在も市販されている本は目録情報や連動広告などのみが表示され、全文をネット上で読めるのは、絶版された本と、市販されていない本に限ることになっている。
 確かに、絶版され、市場で入手できない本がデジタル化されてネット上で読むことが可能になれば、従来、紙の本が持っていた物理的制約から解放されることの本質的な利便性が際立つ。しかし、紙の本を出版し、それを流通させることでビジネスを成り立たせてきた出版業界にとって、書籍の全文がデジタル化され、ネット上でそれの入手が可能になることは、自分達のレゾンデートルを脅かす大問題となる。
 なぜならば、Googleブック検索で全文を読むことができるのは、現時点では絶版された本に限られるが、これがいずれは全ての本に拡大していくのは、時間の問題だからだ。しかも、このサービスによって、利用者にとっては全面的に利便性が高まることになり、また、著者も63%という十分な利益配分を受けることができるため(現行の著者印税は通常10%!)、出版業界の利害のみを理由にして、この流れを一概に否定することも難しい
 しかし、その一方で、Googleという米国の一企業が世界中の書籍のデジタルデータを独占することへの懸念もある。Googleが私企業であるがゆえに、この事業が未来永劫続く保障はどこにもないからだ。仮に全ての書籍データがデジタル化され、紙の出版が消滅してしまった後に、Googleが何らかの理由で倒産したり、経営上の理由からサービスの廃止を打ち切った場合、人類の英知が蓄積された本が、この世から消えてしまうことさえ、あり得ないとは言い切れない。
 その他にも、日本語はアルファベットに比べ、デジタル化した際の漢字認識の精度に問題がある。著者と編集者が力を合わせた結果として現在の書籍のクオリティがあるが、Googleブック検索では、日本人は間違いだらけのテキストデータで検索を行うことを強いられる可能性もある。
 本の売り上げは年々減少し、雑誌も相次いで休刊している中、時折繰り出すミリオンセラーでなんとか持ちこたえている瀕死の状態にある書籍業界にとって、今回Googleが突き付けた選択はあまりにも重い。今後出版業界はどう変わっていくのか。利用者にとっては一見いいことずくめにも見える書籍のデジタル化に、落とし穴はないのか。村瀬氏とともに議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・鳩山邦夫氏辞任の真相(電話出演:上杉隆氏)
・臓器移植法改正A案推進派が議場でビラ配布
・沖縄密約訴訟 裁判長が不存在の理由説明を国に要求
・西松事件初公判は誰を裁く裁判なのか
・米最高裁 DNA再鑑定不許可の理由とは


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第371回(2008年05月10日)
著作権は誰のためにあるのか
ゲスト:福井健策氏(弁護士)
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-06-21 - 12:43:58
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第427回(2009年06月13日)
グリーン革命に乗り遅れる日本
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_427_pre.asx

 「低炭素革命で世界をリードする」。10日、麻生首相が、日本の温室効果ガスの2020年までの削減目標を05年比で15%減とすることを発表した。麻生首相はこれが野心的な目標と考えたと見えて、「野心的」、「決断」などの言葉を連発したが、世界からは冷ややかな反応しか返ってこなかった。ちょうど国連気候変動枠組み条約の特別作業部会が開かれているボンでは、麻生首相を先のブッシュ大統領に擬した似顔絵とともに、世界の潮流から大きくずれた日本の削減目標を批判するコメントが相次いで出された。
 省エネ世界一などと喧伝している日本だが、実は1990年と比較して温室効果ガスが9.2%も増加している。そのため、「05年比15%削減」を、 1990年の排出量と比較した数値にすると「8%削減」としかならない。京都議定書の削減義務は、2013年までに90年比6%削減なので、今回の中期目標はその後8年をかけてもう2%だけ削減する意思を表明したにすぎない。ちなみにIPCCは、地球温暖化を抑えるためには2050年までに世界全体のCO2排出量を1990年比で半減する必要があり、そのためには先進国は2020年までに25~40%削減しなければならないと試算している。40%削減に対して、日本の8%は余りにもかけ離れた数字だった。
 地球温暖化問題に長年取り組んでいるNGO環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏は、今回発表された数字は、「嘘で塗り固めた不作為」であると酷評する。そもそも政府もメディアも05年比の数字を発表しているが、国際的な中期目標は1990年の排出量を基準に決められている。削減努力を「何もやってきていない日本」(飯田氏)にとって、05年比にした方が目標の低さを誤魔化しやすいため、恣意的な数字を出しているに過ぎない。
 しかし、日本の目標がアメリカやEUと比べて遙かに深刻なことは、単にその数値が低いことではないと飯田氏は言う。日本は「ただの数字遊びをしているだけで、削減するための具体的な政策が何もない」ことが、最大の問題だと言うのだ。
 麻生首相は、日本の目標はアメリカの目標値を上回っていると胸を張った。確かにアメリカはブッシュ大統領が京都議定書から離脱して以降、温室効果ガス削減の努力を何もしてこなかったために、数値的には低い目標しか掲げられていない。しかし、オバマ大統領が就任して以来、アメリカは矢継ぎ早にグリーン・ニューディールと呼ばれる施策を打ち、一気に遅れを取り戻している。既にGDPの0.5%を投入するグリーン景気刺激策を09年2月に成立させているほか、再生可能エネルギーの買い取り義務付けやスマート・グリッドなどを盛り込んだ600ページにも及ぶワックスマン・マーキー法が4月に議会に提出されている
 飯田氏は、アメリカが目標値を実現する具体的な手段を持っているのに対し、日本は政策手段も道筋もないまま、数字だけ出しているに過ぎないと指摘する。言うまでもないが、EUは既に排出量取引市場を創設し、ドイツやスペインを筆頭に、再生可能エネルギーでは世界のトップをひた走っている。どうやら、日本はグリーン革命で完全に世界から取り残されてしまったようだ。
 なぜ、日本はグリーン革命に踏み切ることができないのか。飯田氏は、経済界に地球温暖化についての共通認識がなく、政治もイニシアチブを取れていないことに、原因は尽きると言い切る。特に、発電から送電までを独占し続ける日本の電力会社は、原子力にしがみついたまま、世界のダイナミックな変化に全く対応できていないというのだ。
 しかし、それよりも更に重大な問題を日本は抱えていると飯田氏は言う。それは、日本がEU諸国やオバマ政権のように、世界の最先端で提案された知的蓄積を、自国の政策に活かす仕組みを全く持っていないことだ。官僚が省益だけを考え、独占企業が自分達の利益だけを考えて、政策を主張する。日本の政策はそれをつぎはぎにしたものでしかないため、国際的な知の蓄積が全く反映されないというのだ。
 世界がグリーン革命に向けて猛スピードで走り始める中、日本はどこまで取り残されてしまったのか。遅れを取り戻すための処方箋はあるのか。飯田氏とともに議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・クラスター爆弾禁止条約を批准
・政治資金第三者委最終報告で報道されない論点
・足利事件DNA再鑑定と飯塚事件死刑執行の接点
・補正予算でNシステムが倍増へ
・薬のネット販売を歓迎しないのは誰か
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-06-14 - 19:46:24
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第426回(2009年06月06日)
DNA鑑定は誰の利益に資するべきか
ゲスト:天笠啓祐氏(ジャーナリスト)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_426_pre.asx

 DNA鑑定を含む科学技術は、もともと誰のためにあり、何のためにそれを刑事捜査に導
入するのだろうか。この問いに対する一般的な答えは「真犯人を逮捕するため」となる
に違いない。それだけなら、恐らく誰も文句は言わない。しかし、ここで言う「真犯人
の逮捕」の中に「犯人ではない人の無実を明らかにするため」が含まれていなければ、
それは単なる警察の捜査権限の拡大を意味することになる。
 4歳の女児が殺害された足利事件で、無期懲役が確定し服役中だった菅家利和さんが、
DNA再鑑定の結果、無罪であることが確実となり、4日、千葉刑務所から釈放された。
 菅家さんを犯人と断定する上で決定的な役目を果たしたDNA鑑定が、およそ20年の月日
を経てその精度を増し、結果的に菅家さんが犯人ではないことを証明した結果だった。
 無実の身で17年間刑務所に拘留された菅家さんの心中は察するに余りあるものがある
が、この問題が最新のDNA鑑定技術によって解決されたことで、DNA鑑定万能論とも呼ぶ
べき空気が蔓延しつつあることには注意が必要だ。
 早くからDNA鑑定に関心を持ち、著書『DNA鑑定—科学の名による冤罪』の中で足利事
件が冤罪である可能性を10年以上前から指摘してきたジャーナリストの天笠啓祐氏は、
DNA鑑定があくまでDNAの型を調べている「DNA型鑑定」であることを強調する。警察が用
いているMCT118と呼ばれるDNA鑑定は、血液型のA型やO型と同じように、DNAの塩基配列
の中の、ある特定部分の塩基配列(より厳密にはある特定の配列が繰り返される回数)に
基づきDNAを類型し、その一致の是非を調べているに過ぎない。被疑者のDNAが犯人のDNA
と一致したと考えるのは、大きな間違いだ。
 また、どんなにDNA型鑑定技術そのものの精度が上がっても、鑑定の対象となるDNAサ
ンプルの採取は人間の手で行われる。その段階での不適切なサンプル処理や、杜撰な証
拠管理によって、結果は大きく左右されることになる。そもそも、その段階で証拠のね
つ造などが行われてしまう可能性も考え合わせると、DNA鑑定の結果で犯人を断定してし
まうような空気には、かなりの注意が必要だ。
 そもそも足利事件では、菅家さんは自白を取られている。釈放後の記者会見で菅家さ
ん自身が、警察の暴力的な取り調べによって自白を強要された事実を明らかにしている
が、当時より格段に精度を増したとされるDNA鑑定の結果を突き付けられ、肉体的にも精
神的にも追い詰められた状況の下で自白を強要された時に、いったいどれだけの人が最
後まで抗うことができるだろうか。
 そうしたことまで考え合わせると、今回の冤罪事件を不確かなDNA鑑定だけの問題に帰
結することは、逆に進歩した今日のDNA鑑定技術に過度の信頼性を持たせ、冤罪の再発の
原因となる危険性をはらんでいると思えてならない。
 もともと菅家さんの冤罪を招いたDNA鑑定技術について、当時のマスメディアは、それ
を画期的な技術として持て囃すような報道を繰り返していた。
 天笠氏は、現在のDNA鑑定は、DNAの型の違いを明らかにすることで、ある人の無実を
証明するためには有効だが、誰かを犯人と断定するには十分な注意が必要だと警鐘を鳴
らす。そうでなくとも日本の取り調べのあり方や刑事訴訟制度上の問題が指摘されてい
る。そうした中にあって、新しいDNA鑑定の技術が、「犯人を見つけるために有効なツー
ル」とメディアや識者に囃される一方で、必ずしも「被疑者の無実を証明するためにも
有効なツール」とは受け止められていないところに、現在の刑事制度が抱える本質的な
問題の一端が垣間見えると言っては、言い過ぎだろうか。
 アメリカでは、被告にDNA鑑定を受ける権利があり、これまでに200人以上の冤罪が明
らかになっているが、その中にはすでに死刑が執行されたケースもあったという。日本
では、DNA鑑定のために冤罪が生まれているとすれば、その違いはどこにあるかを、十分
考えてみる必要があるだろう。DNA鑑定がもっぱら捜査機関のみに活用され、被告人の利
益になっていないとすれば、それはDNA鑑定そのものの問題ではなく、日本の刑事制度そ
のものの問題である可能性が大きい。
 今回は足利事件の冤罪問題を入り口に、DNA鑑定がどのようなもので、それは一体誰の
利益に資するべきものなのかを、天笠氏とともに考えた。


<今週のニュース・コメンタリー>

・取調べ可視化と捜査権限の拡大
・大新聞が報じない核密約証言の衝撃度
・催涙スプレー判決が示す裁量行政の行き過ぎ


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第180回(2004年09月03日)
遺伝子組み換え食品とアメリカの世界食糧戦略
ゲスト:天笠啓祐氏 (市民バイオテクノロジー情報室代表)
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-06-07 - 22:37:37
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第425回(2009年05月30日)
5金映画スペシャル 
C・イーストウッドの描くアメリカ保守主義の再興は本物か

 今回取り上げた作品は、新聞記者を主人公とした『消されたヘッドライン』(ケヴィ
ン・マクドナルド監督)、名前の通りブッシュ大統領を描いた『ブッシュ』(オリバー・
ストーン監督)、ミッキー・ローク主演の『レスラー』(ダーレン・アロノフスキー監
督)、そして、クリント・イーストウッド監督の『チェンジリング』と『グラン・トリ
ノ』の計5本。
 いずれも、アメリカ映画が元気を取り戻しつつある様子が感じられる作品だ。特にク
リント・イーストウッド監督の2作品は、ブッシュ政権の迷走で方向性を失いつつあった
アメリカの保守主義が、今改めてその方向性を再確認しようとする姿勢が見て取れる。
アメリカの保守主義再興の本物度を考えた。
 また、上記の作品の多くが社会問題は「システム」ではなく、「個人」に問題の根源
があるという立場に立って、社会問題を描いている点が共通している。単にシステムを
変えても、所詮最後は個人個人がしっかりしていなければ、問題は無くならないという
ことのようだ。そのことの意味を日本にも当てはめて考えてみた。


<今週のニュース・コメンタリー>

・報じられない党首討論の重要な論点

・「幸福の科学」が政治団体を設立

・臓器移植法改正案続報
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-05-31 - 19:27:49
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林真須美被告主任弁護人)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_420_pre.asx

 被告人が犯人であることは、「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」。
 最高裁判所は4月21日、和歌山カレー事件で一審、二審と死刑判決を受けている林真須美被告に対し、このような表現を使って05年6月の大阪高裁の死刑判決を支持する判断を下し、事実上真須美被告の死刑が確定した。
 1998年7月25日、和歌山県和歌山市郊外の新興住宅地の夏祭りで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、子どもを含む4人が死亡、63人がヒ素中毒の被害を受けた、いわゆる和歌山カレー事件では、事件発生直後からおびただしい数の報道陣が事件現場周辺に殺到し、集団過熱報道が繰り返された。そしてその過程で浮上した一つの家族にメディア報道は集中し、それを後追いする形で、警察の捜査がその家族に向けられた。それが林真須美被告の一家だった。
 確かに、事件と林家を結びつける状況証拠は多い。真須美被告の夫・健治さんが、元々シロアリ駆除業を営んでいたために、カレーに混入されたとされるヒ素を、林家は少なくともある時点では所持していた。また、夫の健治さんや林家に出入りしていた使用人たちが、繰り返しヒ素中毒と思しき症状で入退院を繰り返し、そのたびに多額の保険金を得ていたことも、カレーに毒を盛った犯人として林家が怪しまれる理由としては十分
だった。 しかし、この裁判では疑わしいと思える状況材料はあれこれ出てきたが、これが真須美被告自身の犯行であると断定すべき確たる証拠は何一つ出てこなかった。また、何よりも、真須美被告には、カレー鍋に大量のヒ素を入れて、大勢の近隣住人を殺害しなければならない理由が見あたらなかった。公判でも、「近所との折り合いが悪かった不仲説」、「かっとなった勢いで入れてしまった激昂説」、「夫らに対して繰り返し殺人未
遂を繰り返すうちに感覚が麻痺した感覚麻痺説」などがあげられたが、結局どれも動機の証明にはいたらず、最終的に殺害の動機は不明とされたままの死刑判決だった。そして何よりも真須美被告自身が、逮捕されてから11年間、一貫して犯行を全面否認していた。
 「物的証拠無し」「動機不明」「本人全面否認」の中で争われた裁判だったが、その一方でメディア報道などを通じ「平成の毒婦」とまで呼ばれた真須美被告が犯人であると確信する人は、一般市民の間でも、被害者や被害者遺族の間にも圧倒的に多く、そうした空気の中で裁判所は厳しい判断を迫られていた。
 そして今週最高裁は、物的証拠はなくても「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」し、動機は不明でも問題ないとの判断を示した。また、真須美被告が全面否認している点については、それが反省していない証拠であり、厳罰を科す理由となるとするなど、上記の3点に対する疑問をことごとく退けた上で、上告を棄却して、二審の死刑判決を支持した。
 しかし、真須美被告の弁護人を務める安田好弘弁護士は、どう考えても「合理的な疑
いを差し挟む余地のない程度に証明されている」とは言えないと、この判断を真っ向から否定し、再審請求などを通じて、今後も法廷闘争を継続していく強い意志を表明している。与事件も、健治さん自身が保険金詐取のために自ら呑んだもので、日本生命の外交員だった真須美さんはその共犯であると主張している。公判ではこの証言は、身内を庇うためのもので信用できないとして一蹴されているが、その論理でいくと、健治さんは自分を殺そうとした妻を庇うために嘘をついていることになる。また、現に健治さんは保険金詐取で有罪判決を受け、4年あまり収監されているのだ。
 その他にも、カレーに使われたヒ素と林家にあったヒ素が一致したとされる鑑定結果や(純粋なヒ素(亜ヒ酸)が一致するのは当たり前なので、これは実際はヒ素に混入していた不純物の内容が一致したことを意味している)、真須美被告がカレー鍋の番をしている時の挙動が不審だったとする証言には疑問点も多く、真須美被告の犯行が推測されるとしている状況証拠さえもが、多くの矛盾をはらんでいると安田氏は主張する。
 もとより、真犯人でも出てこない限り、真須美被告の無実を証明する手立てなどあろうはずもないが、もともと裁判では有罪を主張する検察のシナリオに「合理的な疑い」を挟むことができれば無罪とするのが、「推定無罪」、「疑わしきは被告の利益へ」を糧とする近代法の要諦である。果たしてこれで真須美被告を殺人罪に問うことが本当に正しいことと言えるのか。
 来月21日にはいよいよ裁判員制度が始まる。私たち一般市民が、このような事件の評決(有罪か無罪か)を判断し、しかも死刑かどうかの量刑まで決定しなければならなくなるのだ。安田弁護士は、裁判員制度の下でこの裁判が行われれば、メディア報道によって作られた先入観に強く影響された市民裁判員と、公判前手続きによって厳しく絞り込まれた証拠のみの、ごくごく短期間の審議となるため、弁護側としては為す術がなくなることを懸念すると言う。
 今週は、最高裁によって死刑が確定した和歌山カレー事件で争われた論点をあらためて洗い出した上で、裁判員制度で求められることになる、一般市民の感覚で検察の提出した証拠を見た時に、果たして本当に「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」かどうかを検証した。そして、その上で、この判決の持つ意味を、安田弁護士を交えて議論した。
 (今週のニュース・コメンタリーはお休みします。)


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第269回(2006年05月24日)
私が重大犯罪の被告を弁護しなければならない理由
ゲスト:安田好弘氏(弁護士)

■インタビューズ (2009年04月25日)
「ヒ素は自分で呑んだ。真須美はやっていない」
真須美被告の夫・健治さんが最高裁判決の不当性を訴え
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-04-25 - 23:31:23
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第419回(2009年04月18日)
日本の対北朝鮮政策を再考する
ゲスト:小此木政夫氏(慶応義塾大学法学部教授)

<プレビュー>
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 先の北朝鮮「飛翔体」騒動で迎撃態勢を整えるまで過敏に反応した日本政府は、国連における厳しい対北朝鮮非難決議の採択を目指したが、最終的には議長声明という弱い形での非難を辛うじてまとめるのが精一杯だった。しかし、この議長声明に対して北朝鮮政府は14日、日本を名指しで批判した上で、6者会談からの離脱を表明してしまった。そればかりか北朝鮮は更に、「自衛的核抑止力を強化する」と宣言し、07年7月以来停止
していた核施設の封印を解いた上で、IAEAの査察チームも国外退去処分にしてしまった。
 既に実戦配備されたノドンミサイルの射程範囲内にある日本にとって、このまま北朝鮮が核開発を続け、やがては日本列島が北朝鮮の核ミサイルの射程圏内に入ることが、現在の安全保障上最大のリスクといっていいだろう。強硬路線一辺倒でやってきた日本の対北朝鮮政策は、果たして拉致、核、ミサイルなど日本が北朝鮮との間に抱える問題の解決に寄与しているのだろうか。
 朝鮮半島研究の第一人者で、慶応義塾大学法学部教授の小此木政夫氏は、北朝鮮は現在、体制の維持をかけてアメリカとの直接交渉を最優先に考えており、今回の改良型テポドン2号の発射も、そして核開発も、いずれもアメリカとの交渉を実現し、これを有利に進めるためのカードとして使っていると指摘する。
 そして、北朝鮮の挑発行為に日本が乗って大騒ぎをすることで、日本とアメリカの間の足並みが乱れてくれた方が、北朝鮮にとってはアメリカと直接交渉をしやすくなるので、日本の騒ぎっぷりを北朝鮮はむしろ歓迎しているはずだとも言う。要するに、日本の強硬路線一辺倒の対北朝鮮外交は、実は日本が北朝鮮の術中にはまり、北朝鮮の手の上で踊らされている面があるのではないかというのだ。
 確かに100年に一度と言われる金融危機や、イラク、イラン、アフガニスタン問題などを抱える中で発足したアメリカのオバマ政権にとって、北朝鮮問題の優先順位は決して高くはない。そのため、この度の北朝鮮による「発射」も、その優先順位を引き上げるための外交カードだった可能性は高い。それがわかりきっているからこそ、オバマ政権は今回の事態に冷静に対応しているように見える。
 問題は、こうした北朝鮮独特の「瀬戸際外交」に対する日本政府の対応だ。2002年9月の小泉電撃訪朝で、北朝鮮による拉致の存在が明らかになると、日本の国民感情は一気に反北朝鮮に振れ、それ以来日本の対北朝鮮外交は基本的には強硬路線一辺倒できた。今回の発射騒動での日本の騒ぎっぷりも、いくら上空をミサイルが飛び越すとは言え、かなり突出していた。
 しかし日本が強硬路線を貫く間、北朝鮮はミサイルの発射実験を繰り返し、遂には核実験まで敢行するなど、日本にとって対北朝鮮問題は一向に改善されないばかりか、むしろ年々状況が悪くなっているようにさえ見える。もちろん拉致問題も政府間では全くといっていいほど進展が見られない。
 北朝鮮が何かしでかすたびに日本は制裁を強化してきたが、既に160ヵ国との国交を持つ北朝鮮は、日本だけがどんなに強硬な制裁を行おうが、それほど効果はあがらなくなっている。現在北朝鮮との貿易は年間8億円程度の取引しか残っていない上、自国民に対して北朝鮮への渡航自粛勧告まで出している今、日本には既に制裁カードもほとんど残っていないのが実情だ。
 しかも、日本にとっては頼みの綱のアメリカが、対北朝鮮外交を微妙に軟化させ始めている。小此木氏は、ブッシュ政権の最初の6年は北朝鮮を悪の枢軸と名指しするなど、日本と歩調を合わせた強硬路線だったが、ブッシュ政権の終盤は、アメリカも政策を転換させていた。にもかかわらず日本は、拉致問題を抱えていることもあり、北朝鮮に対する強硬路線一辺倒から抜け出せないでいる。
 小此木氏は、そろそろ日本政府も日本国民も、国交正常化交渉無くして拉致問題の解決はないという現実を見据える必要があるのではないかと言う。確かに拉致は許せない国家犯罪であり、現在8名が死亡したとしている北朝鮮の説明にも不信な点は多い。しかし、これに対する怒りを単なる強硬路線という形で表出しているだけでは、拉致も、そして日本にとっては安全保障上のより大きな脅威である核やミサイル問題も、一向に解
決されないだろうと小此木氏は言う。
 もはや北朝鮮は、生き残ること自体が国家目的となっていると小此木氏は分析する。そして、「生き残り」のための唯一のカードでもある核とミサイルを北朝鮮が自ら手放すことはあり得ない。しかし、北朝鮮が日米と国交を正常化することで体制の維持が保障され、経済復興も始まれば、自ずと拉致問題にも核・ミサイル問題にも、解決の糸口が見えてくるはずだと小此木氏は言う。
 小此木氏とともに、北朝鮮情勢と日本の対北朝鮮政策をあらためて考えた。


<今週のニュース・コメンタリー>

・僕パパ 鑑定医が秘密漏示罪で有罪

・誰のための東京五輪なのか?

・政治資金第三者委 法務省が説明拒否


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第290回(2006年10月18日)
金正日は核で何をしようとしているのか
ゲスト:武貞秀士氏(防衛研究所主任研究官)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第291回(2006年10月20日)
日本核武装論を嗤う
ゲスト:吉田康彦氏(元IAEA広報部長)

■インタビューズ (2009年04月11日)
あの「飛翔体」騒動は一体何だったのか
軍事ジャーナリスト、田岡俊次氏・神浦元彰氏インタビュー

■インタビューズ (2009年04月18日)
少年を殺人者のままにしておくことはできなかった
有罪判決を受けた 鑑定医・崎濱盛三氏インタビュー

■インタビューズ (2009年04月18日)
法律の不備を拡大解釈で埋めるひどい判決
鑑定医代理人・高野嘉雄弁護士インタビュー
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-04-25 - 23:27:57
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第418回(2009年04月11日)
これ以上霞ヶ関の専横を許してはいけない
ゲスト:江田憲司氏(衆議院議員)

<プレビュー>
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 3月31日に閣議決定された公務員制度改革関連法案は、にわかには信じられないような内容を含んでいた。官僚人事を政治主導に変えていく決め手になるはずだった新設の内閣人事局長のポストを、内閣官房副長官が兼務することが定められていたのだ。これは、官僚制度をより国民の利益に適ったものに改革していこうという公務員制度改革の本来の趣旨と、真っ向から対立するものだった。
 「『脱官僚』『地域主権』で国民の手に政治を奪還する国民運動体」を主宰する衆議院議員の江田憲司氏は、この法案では公務員制度改革は「最悪の改悪」になってしまうと、危機感を募らせる。内閣官房副長官は霞ヶ関官僚のトップに君臨し、官僚の利益を代表するポストと言っても過言ではない。内閣人事局長は、現在省庁ごとに行われている幹部職員の人事を一元管理し、省益優先の人事を廃し、官邸の意思のもとで幹部官僚の登用を行う重責を担うポストになるはずだった。そのポストを、あろうことか官僚の大ボスである官房副長官が兼務することになれば、官僚の権益保護にその権限が使われることは目に見えている。これでは官僚制度が改革できないばかりか、スーパー官僚的な力を持つことになる官房副長官の下、霞ヶ関官僚はこれまで以上に自分たちの権益確保に走ることが可能になってしまうことが、火を見るよりも明らかだった。
 しかし、それにしてもなぜこのような「最悪の改悪」が閣議決定され、法案として提出されてしまうのか。
 自身が元通産官僚で、橋本内閣で総理秘書官を務めた後、政界に転身した経歴を持つ江田氏は、これを「ひとえに麻生総理の無関心に責任がある」と言う。麻生首相には、堕落した現在の官僚制度が日本の改革を妨害し、空前の無駄な政府を作っているという基本的な問題意識が欠落していると言うのだ。また、与党自民党も、これまで官僚制度に依存して政権維持をしてきた歴史的な経緯ゆえに、官僚制度を抜本的に改革し、政策
立案上の実質的な権限を官僚から政治に取り戻すことに対して、そもそもそれほど乗り気ではないと江田氏は言う。
 戦後日本の国家運営は実質的に霞ヶ関の官僚たちが担ってきたと言っても過言ではない。彼らが戦後の焼け野原からの経済復興という国民共通の目標の達成に大きく貢献したことは紛れもない事実だ。しかし、日本が国家目標だった欧米に追いつけ追い越せを達成し、成熟期に入った今、日本には高度成長時代の残滓が様々な改革の前に立ちはだかっている。そして、日本が国としての新たな方向性を模索する中で、強大な行政権限を持つ中央官僚たちは、天下りに代表される既得権益の保持や自身の保身ばかりに奔走し、改革の最大の妨げになっていると江田氏は嘆く。
 ただし、官僚主導から政治主導へ日本を変えていく試みは、政治家が政治を牛耳るような仕組みを作ろうとするものではないと江田氏は言う。国民が選挙で選んだ内閣総理大臣が責任を持って政府を運営できる制度に変えていくことが必要で、そのためには官邸が官僚の「人事と金」をコントロールできなければならない。この度の内閣人事局構想は、その第一歩に過ぎない。政治主導を実現する試みはその第一歩から、官僚の抵抗によって完全に骨抜きにされ、むしろ以前よりも後退させられているというのが、今日の政治の実情であり、麻生政権の実情でもあるのだ。
 今週は、先に閣議決定された公務員制度改革法案の問題点を探るとともに、真に求められる公務員制度改革とはどのようなもので、これからの日本における政治と官僚の関係はどうあるべきかなどを、江田氏とともに考えた。


<今週のニュース・コメンタリー>

・北朝鮮「飛翔体」騒動の顛末

・麻生政権の成長戦略の柱はクール・ジャパン?

・中川元財務相はやっぱり警報を鳴らしていた

・麻生首相の読み間違いが報道されなかった理由

・赤字のGyaOがヤフーと統合 YouTubeも大赤字


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第407回(2009年01月24日)
無法地帯化する霞ヶ関
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第359回(2008年02月16日)
官僚の思い通りにはさせない
ゲスト:渡辺喜美氏(金融担当大臣)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第316回(2007年04月19日)
天下りを無くして本当に日本は回るのか
ゲスト:林芳正氏(内閣府副大臣)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第284回(2006年09月06日)
シリーズ『小泉政治の総決算』その6
小泉劇場はなぜ飽きられなかったのか
ゲスト PART1:世耕弘成氏(参議院議員) PART2:篠田博之氏(「創」編集長)

■インタビューズ (2009年04月04日)
民主党マニフェストの財源を問う
大塚耕平政調副会長インタビュー
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-04-12 - 14:13:37
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第416回(2009年03月26日)
────────────────────────
検察は説明責任を果たしているか
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ゲスト:郷原信郎氏(桐蔭横浜大学法科大学院教授)

<プレビュー>
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 東京地検は24日、民主党小沢代表の公設秘書を政治資金規正法違反で起訴した。小沢代表は同日の記者会見で「献金を頂いた相手方をそのまま記載するのが規正法の主旨であると理解しており、その認識の差が今日の起訴という事実になったと思う。過去の例を見ても、この種の問題について逮捕、強制捜査、起訴という事例は記憶にない。納得がいかない」と涙を流しながら話し、代表の地位にとどまる意向を表明した。
 元検事で桐蔭横浜大学大学院教授の郷原信郎氏は、起訴内容が政治資金規正法の虚偽記載のみにとどまったことで、特捜の捜査は完全な失敗だったと断じる。政治団体を経由した企業からの政治献金が容認されてきたことは言わば政界の常識であり、政権交代の可能性が大きい総選挙を半年以内に控えた今この時期に、野党の党首の公設秘書を逮捕する容疑としては、あまりにも形式犯すぎるというのが郷原氏の一貫した主張だ。誰もがやっていることだからといって良しとすべきものではないが、政治的な影響の大きさを考えると、いきなりの逮捕では検察の政治性が批判されることは避けられないと、郷原氏は語る。
 郷原氏の見立てでは、今回の逮捕劇では検察の戦略に初歩的な誤算がいくつかあった可能性が大きいと言う。
 まず一点目は政治資金規正法の解釈だ。逮捕直後に捜査関係者の話として、秘書の逮捕によって小沢氏にも監督責任があるかのような話がリーク報道されていたが、長崎地検次席検事として政治資金規正法違反の捜査を指揮した経験を持ち、この法を熟知する郷原氏は、政治資金規正法の条文では「選任および監督」の責任となっているため、監督責任だけでは政治家本人の罪は問えないことを強調する。最初から明らかに無能な人間を会計責任者に任命したことが立証できなければ、今回の場合小沢氏の罪は問えない。特捜部はそれを十分確認しないまま小沢氏の秘書を逮捕してしまった可能性を郷原氏は懸念する。
 また、検察のもう一つの読み違いは世論の動向と小沢氏の反応だった。特捜が政治とカネの問題で政治家の公設秘書を逮捕すれば、世論の囂々たる非難の中、その政治家は辞任せざるを得なくなるのがいつものパターンだった。そうなれば、仮に罪状自体は弱くても、小沢氏の政治力は検察にとっては恐るるに足らないものになるはずだった。ところが、小沢氏が土俵際で踏ん張り、世論も今のところ小沢批判と検察批判が入り交じったものになっていることから、検察の思い通りにことが進まなかった可能性があると郷原氏は言う。
 検察は本来は捜査についての説明責任は負っていない。粛々と捜査を行い、容疑者を有罪に追い込むための証拠を公判で提示すればそれで責任を果たしたことになる。しかし、なぜ今このタイミングで、与野党を問わず広範に行われている献金行為をいきなり摘発し、野党党首の公設秘書を逮捕起訴までする必要があったのかについては、その政治的な影響の大きさを考えると、検察には明らかに説明責任があると郷原氏は言う。人の一生やこの国の運命を左右する局面で、一罰百戒の名のもとに検察が恣意的な摘発をすることが許されてしまえば、検察の権力は立法府のそれを遙かに超えた、極めて強大なものになってしまうからだ。
 元検事の郷原氏と、小沢氏の秘書逮捕をめぐる検察の判断と説明責任について議論した。また、後半は、郷原氏の持論でもある「杓子定規な法令遵守がいかに日本社会の思考停止を招いているか」を、考えた。


<今週のニュース・コメンタリー>

・報道取材への謝礼の是非

・民主党政権では記者会見はオープンに

・神奈川県の禁煙条例をどう見るか


<関連番組>
■マル激トーク・オン・ディマンド 第311回(2007年03月16日)
ライブドア事件にみる検察資本主義の到来
ゲスト:村山治氏(朝日新聞編集委員)

■インタビューズ (2009年03月06日)
理解に苦しむこの時期の小沢氏秘書の逮捕
元検事・郷原信郎氏インタビュー

■プレスクラブ (2009年03月25日)
民主党の小沢代表が涙で続投を表明

■プレスクラブ (2009年03月18日)
小沢氏、来週にも進退を決定

■プレスクラブ (2009年03月10日)
「進退全く考えず」小沢氏が会見

■プレスクラブ (2009年03月06日)
秘書逮捕の小沢氏 検察を厳しく批判
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-03-27 - 11:39:35
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第415回(2009年03月21日)
どのような政治活動を誰が負担すべきか
ゲスト:岩井奉信氏(日本大学法学部教授)

<プレビュー>
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 民主党の小沢代表の公設秘書の逮捕で、また政治とカネの問題が論争を呼んでいる。ここまで俎上に上っている論点は、長らく指摘されてきた政治資金規正法の抜け穴問題と企業献金の是非だ。
 政治資金規正法は48年の施行以来、政治とカネの問題が浮上するたびに改正を繰り返してきたが、それでもまだ抜け道の多いザル法と呼ばれている。特に今回の西松建設疑惑で明らかになった、企業や団体が政治団体を通じて政治家個人に献金を行っている実態は、あまりに広範に行われているため、これを違法としていては、大半の政治家が「クロ」になってしまうと言われるほどだ。
 また、企業から迂回献金を受けていた張本人の小沢氏が、手のひらを返したように企業団体献金の全面禁止を主張し始めたことで、企業献金の是非があらためて議論されている。
 確かに政治資金規正法の抜け穴も企業献金の是非も、議論すべき重要なテーマかもしれない。しかし、政治資金に詳しい日本大学法学部の岩井奉信教授は、日本の政治にはそれ以前の問題があり、その問題を放置したままでは、結局は過去何度も繰り返されてきたような場当たり的な対応を繰り返すことになると指摘する。それは、そもそもなぜ日本では政治家一人一人がそれほどまでにカネを集める必要があるのかということだ。
 日本の国会議員が政治活動を行うためには平均して年間5000万円程度の資金を必要としているが、国から支給されるのは、歳費(議員の給料)と文書通信交通滞在費などを合わせても3500万円にも満たない。最低限の政治活動を続けるためには、残りの1500万円から多い議員では数千万円を、議員一人一人が自力で集めなければならないことになる。
 ある中堅国会議員の場合、4000万円強の年間支出の約3割が人件費、約2割が事務所の維持費に消えている。日本の国会議員は、単に地元の事務所の維持費とそこで働く職員数名の人件費を賄うために、個人や法人から懸命に寄附を集めなければならないのが実情なのだ。当選回数を重ねるごとに政治家の権限が大きくなり、陳情や挨拶先の数も増えるため、職員の数も増える。個人献金の伝統が希薄な日本では、それに呼応するように企業献金への依存度が自ずと増していく。これが日本の国会議員の政治活動の実態だ。
 日本は政党政治を行っているのだから、政治活動に必要な費用は本来は政党が負担すべきものだと岩井氏は言う。また、日本では中央政府の権限が大きいため、本来は県議や市議が対応すべき地元の細々とした陳情を国会議員が受けなければならないことも、地元で多くのスタッフを必要とする原因となっている。地方分権を進めない限り、ここの問題にも解決策は見えてこない。
 政治資金はどんなに規制をしても、ニーズがある限り、抜け穴を見つける人が出てくる。規制強化や企業献金の是非の議論も結構だが、規制と抜け道探しのいたちごっこに終止符を打つためには、現在の日本の政治のあり方を根本から変え直す必要があるのではないかと岩井氏は問う。
 「政治とカネ」をめぐる議論でまだ十分語られていない2つの大きな問い、「そもそもなぜ政治家自身がカネを集めなければならないのか」そして「そのカネは何に使われているのか」、「政治活動を支えるカネは誰がどのような形で負担すべきものなのか」を、岩井氏と議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・闇サイト殺人事件の死刑判決をどう評価するか

・西山太吉さんらが密約文書の開示求め提訴

・小沢氏の企業献金全面禁止の本気度

・国民新党が「書かない」記者を会見から排除


<関連番組>

■インタビューズ(2009年03月21日)
私が企業献金を受け取らない理由
民主党細野豪志衆議院議員インタビュー

■プレスクラブ (2009年03月18日)
小沢氏、来週にも進退を決定

■プレスクラブ (2009年03月10日)
「進退全く考えず」小沢氏が会見

■プレスクラブ (2009年03月17日)
西山太吉さんらが密約文書の開示を求めて提訴
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-03-23 - 09:58:04
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第413回(2009年03月07日)
今あえて民主党の政権構想を再検証する
ゲスト:飯尾潤氏(政策研究大学院大学教授)

<プレビュー>
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 民主党の小沢一郎代表の公設秘書が逮捕された。事件の詳しいあらましは未だ定かではないが、報道発表によると西松建設からの政治献金を、同社のOBが代表を務める政治団体からの献金として報告したことによる、政治資金規正法の虚偽記載容疑だという。
 次期総理の座に最も近いと言っても過言ではない最大野党党首の公設秘書が、政治資金がらみで司直の手にかかり、その個人事務所が家宅捜査を受けたことの政治的な影響は計り知れない。小沢氏自身は言うに及ばず、政権交代がかかる総選挙が近いこの時期に最大野党の党首の秘書の逮捕に踏み切った検察も、国民に大きな説明責任を負うことだけは間違いないが、そうしている間も、政局は激しく動き始めている。
 しかし、マル激では今あえて激動の政局から距離を置き、民主党の政権構想、とりわけその主張する政策の中身を、政治学者の飯尾潤氏と検証してみることにした。仮に今回の事件で民主党が致命的に傷つき、政権の座が大きく遠のいた場合でも、民主党が政権の座についた時本来実現されるはずだった政策とはどのようなものだったのかを明らかにしておくことには一定の意味があると考えたからだ。また、民主党の政権構想を解き明かすことで、どのような勢力が民主党が政権の座につくことを歓迎していないかも、より鮮明に見えてくるはずだ。
 なぜかあまり広く知られていないのが不思議なくらいだが、民主党の政策はかなり斬新なものが多い。この公約が果たされれば、民主党政権では日本は大きく変わることになる。
 民主党の政権構想をいくつかの短い言葉でまとめると、「よりフェアに」「より透明に」「市民参加」「政治主導」「より手厚い子育て支援とセーフティネット」「地方分権」などのキーワードに総括することができる。中学卒業まで一人当たり一律毎月2万6000円の子ども手当や高等学校の無償化など、子育てや教育に手厚い一方で、納税者背番号と社会保障番号を同時に導入し、年金の未納や税金逃れは容認しない姿勢を見せるなど、フェアネスの名の下にやや強面の顔も持つ。
 しかし、より重要な点は、民主党が戦後の日本の国のかたちを根底から変えようとしている点だ。特に官僚依存体質を根本から改めることや天下りの全面禁止、刑事捜査における取り調べの可視化、選択的夫婦別姓、農業者戸別所得補償、死刑廃止を念頭に置いた終身刑の導入、NPOへの税制優遇措置等々、民主党の主張する政策には既得権益と真っ向から衝突するものも多い。更に、米国依存体質をあらため、国連中心外交へシフトすることや、逆に国連安保理の決議があれば、自衛隊の武力行使も可能にすること、靖国に代わる新たな国民追悼施設の建設など、戦後の日本のタブーに踏み込むものも多い。
 飯尾氏は、政権交代の最大の意味は、過去の政策を否定できることにあると言う。過去のしがらみに雁字搦めになった自民党の長期政権のもとでは、しがらみ故に優先順位付けや切り捨てができず、かといって今の日本にはすべての人の要求を同時に満たすリソースがないために、政治が機能不全状態に陥っているというのだ。そして、民主党が公約に掲げた政策を本当に実現できるかどうかもまた、民主党が過去の政治と決別できるかどうかにかかっている。
 大きな正念場を迎えた民主党とは、日本をどう変えようとしている政党なのか。今回の小沢氏の事件は政権をうかがう民主党にとって良い「試金石」になると評する飯尾氏とともに、民主党の政権構想を今あらためて再検証した。


<今週のニュース・コメンタリー>

□ 小沢氏秘書逮捕をどう見るか
 民主党の小沢代表の秘書が逮捕された事件について、さまざまなリーク情報がマスメディアで飛び交う中、最も基本的な、政治資金規正法の虚偽記載の構成要件とはどのようなもので、今回の事件は果たして本当にそれが適用可能な事案なのかなどを、元検事の郷原信郎氏のインタビューを交えて考えた。

□ かんぽの宿が露わにした日本郵政の不透明な不動産事業
 かんぽの宿の譲渡をきっかけに浮上した日本郵政の不透明な不動産売買は、日本郵政が、元々は国民の資産であったはずの郵便局跡地や全国津々浦々に広がる郵政関連の不動産を使って、大々的に不動産事業を展開している「民営化のもう一つの顔」を白日の下に晒した。この問題を調査した社民党の保坂展人衆院議員は、国が100%の株を保有する日本郵政であまりにも不透明な不動産取引が行われていることに驚いたと言う。保坂氏に、かんぽの宿譲渡に代表される日本郵政の不動産事業の実態を聞いた。


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第311回(2007年03月16日)
ライブドア事件にみる検察資本主義の到来
ゲスト:村山治氏(朝日新聞編集委員)

■インタビューズ (2009年03月06日)
理解に苦しむこの時期の小沢氏秘書の逮捕
元検事・郷原信郎氏インタビュー

■インタビューズ (2008年03月16日)
郷原信郎氏インタビュー
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-03-13 - 12:49:13
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第412回(2009年02月28日)
なぜ私はグローバル資本主義の罠に気づかなかったのか
ゲスト:中谷巌氏(多摩大学教授・ルネッサンスセンター長)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_412_pre.asx

 ある著名な経済学者の「転向」が話題を呼んでいる。細川内閣や小渕内閣で改革の旗振り役を務めてきた中谷巌氏が、昨年12月、自ら「懺悔の書」と呼ぶ『資本主義はなぜ自壊したのか』を出版し、その中で自身が推し進めてきた改革路線の誤りを認めたうえで、グローバル資本主義の暴走を止める必要性を訴え始めたのだ。
 今週はその中谷氏を招き、氏の「転向」の理由を聞いてみた。1969年、留学生として渡米した27歳の中谷青年が見たアメリカは、豊かな中流階級が幸せに暮らす希望に溢れる国だった。ハーバード大学でアメリカの最新の経済理論を学んだ中谷氏は、帰国後、日本社会をアメリカのような自由で市場原理が機能する国に改革するために奔走した。アメリカから帰国した中谷氏の目にその頃の日本は、系列や政官業の鉄のトライアングルなど古いしきたりに縛られ閉塞した経済のように映ったという。雁字搦めになった規制を取り払い、アメリカのような市場原理が機能する国に日本を改革することができれば、日本はもっと豊かになれると考えた中谷氏は、細川内閣の「経済改革研究会」や小渕内閣の「経済戦略会議」などに参加し、「アメリカ流構造改革の急先鋒」となった。そして、実際に数々の自由化や規制緩和を実現させた。
 しかし、中谷氏は次第に、改革の負の側面に気づき始める。レーガン政権以降、新自由主義的な政策を推し進めてきたアメリカでは、かつて中谷氏が羨望の眼差しで眺めていた豊かな中間層は消滅し、貧富の差が広がっていった。そして、同様に改革を進めた日本でも非正規労働者が全労働者の3割を超えるなど格差が広がり、かつて一億総中流と呼ばれた社会から安心や安全が失われていった。やがて中谷氏は、市場原理に委ねれ
ばすべての問題が解決するという経済学の理論を実際の社会に適用しても、人々は決して幸せになれないことに気がつく。
 そもそも氏が体験した豊かなアメリカは、自由な経済活動によって作られたものではなく、むしろ政府による長年の社会福祉政策や所得再分配政策の生んだ結果だった。にもかかわらず、なぜか中谷氏を含む多くのアメリカ留学経験者はそれを誤解し、新自由主義や市場原理至上主義の信奉者となっていた。
 今日、中谷氏は、豊かなアメリカを蝕み、日本固有の豊かな社会基盤も奪いつつあるグローバル資本主義という「モンスター」を、何とか阻止しなければならないと主張している。そして、そのために、霞ヶ関の中央官僚の数を3分の1に縮小する「霞ヶ関3分の1プロジェクト」の必要性などを訴えている。
 なぜ日本のエリートの多くが、アメリカの豊かさの源泉を誤解し、市場原理主義者となってしまうのか、誤解に基づくものとはいえ、中途半端に改革を推し進めてしまった日本はこれからどうすればいいのか、そして、われわれはこの先グローバル資本主義というモンスターとどう付き合っていけばいいのかなどを、中谷氏とともに議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・総務省が放送局と制作会社の取引ガイドラインを策定

・オバマ増税が市民セクターへ意外な影響

・「おくりびと」アカデミー賞受賞の背景


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第403回(2008年12月20日)
見えたり、金融資本主義の正体
ゲスト:小幡績氏(慶應義塾大学大学院准教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第315回(2007年04月06日)
アメリカ型格差社会で日本は幸せになれるか
ゲスト:小林由美氏(経営戦略コンサルタント・アナリスト)
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-03-01 - 17:17:17
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第411回(2009年02月21日)
脳ブームは危険がいっぱい
ゲスト:河野哲也氏(立教大学文学部教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_411_pre.asx

 
 『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』、『脳が冴える15の習慣—記憶・集中・思考
力』、『脳を活かす勉強法』、『30日で夢をかなえる脳 自分を変えるなんて簡単だ』、
『脳を鍛える大人のDSトレーニング』、『脳内エステ IQサプリDS』等々、脳をテーマに
した書籍やゲームが氾濫し、ちょっとした脳ブームの様相を呈しているようだ。脳につ
いては、1990年代半ばに『脳内革命』がベストセラーになるなど、これまでも何度か脳
がブームになることがあったが、ここに来てわれわれの脳への関心が、新たな次元に入っ
ているかのように見える。
 1990年代、アメリカの連邦議会による「脳の10年」プロジェクトの推進などによって
脳科学の研究が進み、人類の脳に対する知見は大きく進んでいる。たとえば、fMRI(機
能的核磁気共鳴画像法)の開発でどのような時に脳のどの場所がどう働くかを、脳内の
血液が流れる速度を画像にして調べることが可能になった。そうした技術が医療分野で
うつ病などの治療に活用されるなど、確かに脳科学の発展自体は利点も多い。
 しかし、人間の行動の原因をすべて脳に求める風潮について、哲学者で『暴走する脳
科学』の著者河野哲也立教大学教授は、行き過ぎの感があると警鐘を鳴らす。
 河野氏は、そもそも脳科学が当たり前のように主張している脳の様々な機能について
の言説は、実際には科学的根拠に乏しいものが多いと言う。現にOECDは科学的根拠に乏
しい脳に関する言説を「神経神話」として、報告書にまとめているが、「人間は脳の10
%しか使っていない」、「人間には左脳タイプと右脳タイプがある」、「男と女は異なっ
た脳を持つ」といった、脳に関する「諸説」の多くは、科学的な裏付けがないものが多
い。庶民レベルでのいいかげんな言説はご愛敬だとしても、最近はブームに便乗して権
威ある学者までが科学的根拠が弱い諸説を流布するようになっているため、やがてそれ
が教育や司法(犯罪捜査など)に応用されるようになることを、河野氏は懸念する。
 そもそも脳にすべての行動や思考の原因を求める考え方には別の問題もある。たとえ
ば、脳科学技術を生かして作られた「スマートドラッグ」を使用して眠気を取ったり集
中力を高めて学習の成果をあげるようなことが行われている。薬などの外部的な刺激に
よって特定の能力だけを向上させ、記憶力が増したり、頭の回転が速くなればいいこと
もあるのかもしれない。しかし、そうした効果にどんな弊害を伴うかは十分に検証する
必要がある。たとえば、試行錯誤を繰り返しながら時間をかけて得られる経験というも
のは、人間にとって本当に必要ないものなのか。薬の力を借り、そうした経験を経ずし
て効率的に得た情報に、同等の価値があるものなのか。そのような薬の服用が横行する
ことで、本来その人間が持つ以上の能力の発揮を求められることが当たり前になれば、
結果的にその人間が追い込まれるような事態を想定しなくていいのだろうか。
 河野氏は、「拡張した心」という考え方を提示する。脳科学は脳の働きを解明してき
た。しかし、たとえば「怒る」という感情は、単に脳の一部が働いたから作りだされる
ものだろうか。たとえば不正があったなど、自分の外部のものを要因として、怒りは生
まれる。心は、体の内部だけでなく、外部の社会や環境によって決められるものだとい
うのが、「拡張した心」の考え方だ。これに基づけば、自分の脳だけに原因を求めるの
ではなく、自分の外部の社会や環境に働きかけることも必要になる。河野氏が脳ブーム
に対して批判的な理由は、この考え方の違いによるものだ。
 今週は昨今の脳ブームの中、脳についての基本的なことを哲学者の河野氏と考えてみ
た。


<今週のニュース・コメンタリー>

・中川もうろう会見の真相を報じないメディア

・不妊治療で受精卵を取り違えて移植
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-02-23 - 08:47:58
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第410回(2009年02月14日)
雇用問題の本丸は正社員の既得権益にあり
ゲスト:城繁幸氏(Joe’s Labo代表)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_410_pre.asx


 経済危機の波がいよいよ日本にも押し寄せ、大手、中小を問わず企業ではリストラの嵐が吹き荒れている。特に非正規労働者への影響が大きく、業界団体の試算では今年3月末までに失業する製造業の非正規労働者の数は40万人にのぼるとさえ言われる。過去の不況時にも、企業は新規採用の抑制や早期退職制度などで人件費の抑制を図ってきたが、2004年以降派遣法の規制緩和によって非正規労働者が急増したため、企業が不況対策として非正規雇用の削減を真っ先に行うようになった。その結果、派遣社員や期間工などが真っ先に不況の犠牲者になり、今やそれが社会問題化している。
 巷では派遣法の緩和を問題視する向きが強く、少なくとも製造業派遣は禁止すべしとの声が高まっている。しかし、企業人事の専門家で『若者はなぜ3年で辞めるのか』の著者でもある城繁幸氏は、雇用問題の本質は正社員の既得権益化にあり、派遣の規制強化では何ら問題の解決にはならないと主張する。
 実際、日本企業の正社員は非常に手厚く保護されており、非正規労働者との格差はあまりに大きい。しかもほとんどの企業が、正社員の雇用条件には手を付けることができていない。こと正社員に関する限り、日本では高度成長期の残滓とも呼ぶべき年功序列や終身雇用の亡霊が、まだ生きているのだ。そのため、例えば海外では営業成績次第では当たり前に行われている降格や減給はまず不可能で、不祥事でも起こさない限り賃下げもできないし、制度上は可能になっているはずの解雇も、実質的にはほとんど不可能になっている。
 このように正社員の権益だけが過度に保護される一方で、非正規は賃金も半分以下で雇われ、しかも使い捨てにされている。昨今の不況下で非正規労働者が大量に放り出されている背景には、業績不振に陥った企業が人件費を削減しようと思っても、正社員の雇用や賃金にはほとんど手を付けられないという現実があるからだと、城氏は指摘する。正社員と非正規労働者の格差が固定される上、いつ切られてもおかしくない非正規労働者は単純作業しか教えてもらえないため、何年働いてもキャリアを積むことができないという悪循環まで起きている。
 実際にこのような手厚い既得権益の保護は、正社員、とりわけ若い正社員にとっても、決して幸せな結果をもたらしていない。30代後半~40代以降の中高年正社員の賃金がいたずらに高いため、現在の20代~30代前半の正社員の賃金は低く抑えられ、彼らの賃金が20年後に現在の40代の正社員の水準まであがっていく可能性はほとんど無い。しかも、若い正社員たちは、合理化による人員の削減や非熟練非正規労働者を大勢抱えた現場にあって、彼ら自身も苛酷な労働を強いられている場合が多い。つまり、正社員の既得権益とは、より正確に言うと、中高年正社員の既得権益のことであり、それを守るために、若い正社員や非正規労働者たちが、苛酷な目に遭っているというのだ。
 城氏は、日本企業が競争力を持つためには、正社員の既得権益にメスを入れ、年功序列・終身雇用といった「昭和型」の雇用体系と決別し、日本独自の成果主義を導入する必要があると主張する。しかし、正社員の既得権益化を問題にすることは、日本では半ばタブーになっている。労働組合が正社員の権利を守ることを優先しているため、組合をバックに持つ民主党や社民党などの野党は、派遣や非正規雇用問題は声高に主張するが、正社員の既得権益についてはほとんど語ろうとしない。また、メディアも、大手メディア自身が最も優遇された正社員と苛酷な条件で酷使される非正規労働者を抱えるところがほとんどで、この問題を取り上げられる立場にはいないと、城氏は語る。そんな理由から、正社員はいまや日本の最もディープな聖域になりつつある。
 正社員と非正規労働者の格差を解消するためには、現在の正社員の既得権益化した待遇を見直すことが不可欠となる。非正規の待遇を正社員並に引き上げることは現実的ではないし、それをやれば日本の企業のほとんどが国際競争力を完全に失うことになる。賃金差是正のためには年功序列を壊し、成果主義を導入した上で、複数のキャリアパスを用意することが必要だと城氏は語る。つまり、キャリアアップしてどんどん上に上がりたい人にはそういうキャリアパスを、賃金はそれほど伸びなくてもいいので、仕事はほどほどにして、趣味や自分の時間を大切にしたい人にはそういうキャリアパスがあっていいはずだと言うのだ。
 しかし、日本において企業が、長年、共同体としての役割を果たしてきたことも事実だ。年功序列・終身雇用のもとで、企業が単なる株主のための利潤追求団体以上の役割を果たしてきた企業のシステムを明日からいきなり崩して成果主義に移行した場合、どのような影響が出るのだろうか。成果主義の導入によって急激に所得が減る人に対しては、暫定的に国が所得の減額分の一部を補填するくらいの思い切った措置が必要になると城氏は説くが、そもそもそれは可能なのだろうか。
 今週は城氏とともに、派遣切りの裏に潜む正社員の既得権益の実態と、未だに「昭和型」から脱却できない日本的雇用の問題点、そしてそれを改善するための方策などを議論した。その上で、日本の文化に適した成果主義とはどのようなものなのかを考えてみた。

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-02-14 - 22:39:12
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第409回(2009年02月07日)
世界の魚を食い尽くす日本人の胃袋
ゲスト:井田徹治氏(共同通信科学部編集委員)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_409_pre.asx


 日本政府は1月30日、マグロ漁の国際的な漁獲規制が強化されたことを受け、国内のマグロはえ縄漁船の数を1~2割減らす方針を明らかにした。乱獲によるマグロの資源枯渇という事態を受け、昨年11月の大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)、12月の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)と、相次いでマグロの漁獲量の削減が国際的に決まっていた。
 巷では、こうしたニュースを受けて、いずれ日本人が大好きなマグロが食べられなくなる日が近づいているかのような不安を煽る言説が、メディアを中心に流布されている。確かに、マグロのみならず、世界の漁業資源は急速に枯渇に向かっているし、これまでのように好きな魚がふんだんに手に入らなくなる可能性も、日に日に高まっているのは事実だ。しかし、メディアが報じていないもう一つの重大な問題がある。それは、われわれ日本人こそが、世界の漁業資源を食い尽くしている張本人であるという紛れもない事実だ。
 今、マグロの中で最も枯渇が懸念されているのは高級魚のクロマグロとミナミマグロだが、現在世界に流通するクロマグロの何と8割、ミナミマグロにいたってはそのほぼ10割を日本が消費している。メバチマグロやビンナガマグロ、キハダマグロなどを含めたマグロ全体でも、世界人口の60分の1に過ぎない1億2千万人の日本が、世界の年間漁獲量の3割を消費しているのが実情だ。
 これはマグロに限ったことではない。日本は全世界で消費されるウナギの7割、たこの3分の2、いかの3分の1を消費するいずれも世界最大の消費国だ。魚全般で見ても、03年の世界の一人当たりの水産物消費量が年間約16kgであるのに対し、日本人は毎年一人当たり約65kgもの魚を消費している。消費量の総量では日本の10倍以上の人口を抱え、急速に豊かになる中国に世界一の座を譲ってはいるが、国民一人当たりでは、モルジブやアイスランドなど消費量が極端に少ない国を除けば、日本は文句無しに世界一のシーフード消費大国なのだ。マグロの漁獲制限に見られるような世界的な潮流は、早い話が、日本人の胃袋が人類共有の資源である魚を食い尽くしてしまうのを、黙って見ているわけにはいかないとの問題意識から生じていると言っても、決して過言ではないのだ。
 もちろんそのような基本的な情報がメディアに流れないのも重大な問題だが、多くの日本人は自分たちこそが、世界中の漁業資源を食い尽くしている張本人であることを知らずに、日々スーパーマーケットや回転寿司で魚の消費を続けていることになる。
 地球環境の視点から漁業問題を長年取材してきた共同通信科学部編集委員の井田徹治氏は、基本的には商業ベースの乱獲に問題があることを指摘すると同時に、かつて庶民にとって貴重品だったトロやウナギ、エビといった高級食材が、今やスーパーや回転寿司で安値で売られるようになっていることに対して、何の疑問も感じずにそれを受け入れ、欲しいままにそれを享受してきたわれわれ日本人の消費者としての感覚にも問題があると語る。
 言うまでもなく漁業資源は、貴重な地球の天然資源だ。持続性を超えて消費をすれば、時間の問題で資源は枯渇する。もともと魚は、そのような商業ベースの大量生産・大量消費に耐えうる資源ではなかったのだ。しかし、魚を獲ってくれば高く売れる状態が続いたため、乱獲にも、そして大量消費にも歯止めがかかることはついぞなかった。そして、いよいよ外部から強制的に制限を受けるところまで事態が悪化してしまったというのが、今日のマグロ規制の意味するところなのだ。
 今日、資源枯渇と漁業規制に挟まれて、魚が獲れなくなった日本は、大量の魚類を海外から輸入するようになっている。既に魚類の自給率も5割台まで落ち込んでいる。しかも、輸入クロマグロでは半分以上が、畜養と呼ばれる、海外で養殖されたマグロが占めるようになっている。しかし、産卵前の稚魚や幼魚を大量に捕獲して育てる畜養は、環境負荷も高いことに加え、安全性にも疑問符が付けられている。
 現状では、外的な規制が次第に厳しくなるのを座して待つか、もしくは消費者の自覚に期待するかのいずれかしかないが、情報が十分に公開されていない中では、消費者が賢明な選択をするのも難しい。そうした中にあって、井田氏は消費者の助けとなる好ましい動きも出てきているとして、海のエコラベルとも呼ぶべきMSC(海洋管理協議会)の認証マークを紹介する。これは、資源の枯渇を招くような捕獲方法を用いたり、環境に大きな負荷をかけていないことを証明する国際的な証明書で、日本でも徐々にではある
が、普及が始まっているという。
 今週は井田氏とともに、マグロ規制が示している日本人の異常とも言える現在の魚の消費のあり方と、それが招いた世界の漁業資源の現状、そして、そうした状況とわれわれは今後どうつきあっていけばいいのかなどを、考え直してみた。

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-02-08 - 11:17:33
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第408回(2009年01月31日)
それでも裁判員制度は必要だ
ゲスト:河合幹雄氏(桐蔭横浜大学教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_408_pre.asx

 賛成、反対の双方のゲストをそれぞれ招き、2回シリーズでお送りしている裁判員制度の再検証企画。裁判員制度に反対する新潟大学大学院教授の西野喜一氏を招いての第1回目(第398回・08年11月15日放送)に続き、2回目となる今回は、裁判員制度の導入を支持する法社会学者の河合幹雄氏を招いて、なぜ氏がさまざまな問題点が指摘される裁判員制度の導入を支持しているのかを中心に議論した。
 河合氏は、刑事司法という狭い範囲ではなく、日本の民主主義全体のメリットを考えたときに、裁判員制度は必要との考えを示す。氏は、現在の日本の最大の問題は、市民一人一人が社会を支えているという自覚に欠けていることであるとの考えを示した上で、裁判員制度の導入によって、市民が否が応でも社会参加を強いられれば、それはひいては日本の民主主義の成長に寄与するだろうという考え方を示す。 
 指摘されている裁判員制度の様々な問題点について河合氏は、かなりの部分が運用次第のため、それほど懸念には値しないとの考えを示す。例えば、裁判員制度を導入すると、情緒に流された判決が出やすくなるため、これまでの判例を無視した重罰化の流れが進むのではないかとの懸念については、日本人の気質として、普段はいい加減そうに見える人でも、裁判員に選ばれれば非常に真面目に取り組むので心配はないだろうと言う。そのため、とんでもない判決が出るよりも、むしろ旧来の制度よりも無罪が多くなる「弊害」を懸念すべきだと言う。
 また、透明性を欠いた公判前整理手続や、厳しい守秘義務については、裁判員制度の対象となる殺人事件などは年間で約3000件あるが、被告人が犯行を否認し事実が争われる事件は少ないことを指摘した上で、事実が争われない裁判では、公判前整理手続は重要とならないとの見方を示す。また、裁判員に課せられた厳しい守秘義務についても、詳細が決められていないため、これも運用次第では問題になり得るが、それほど懸念には値しないとの立場を取る。しかし、もしも本当に問題があれば、裁判員は守秘義務を破ってでも民主主義のために声をあげるべきと河合氏は語る。
 河合氏は、裁判員の感情に影響を与える可能性のある被害者の裁判への参加制度には問題があるとの考えを示す。総論で導入に賛成の河合氏から見ても、各論レベルでは裁判員制度にはまだかなり改善の余地は残されているようだ。また、運用次第でやってみなければわからないという部分がかなり多いことも見えてきた。
 それでも裁判員制度は必要との立場を取る河合氏に、制度導入の経緯も含め、ここまで明らかになった裁判員制度の問題点をぶつけた。
(今週は5金にあたりますが、1月は第一週目の放送をお休みしたため、通常の放送を行
います。)


<今週のニュース・コメンタリー>

・かんぽの宿、オリックスへの一括譲渡見直し

・ネット書き込みで名誉毀損、逆転有罪


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド第398回(2008年11月15日)
今あらためて問う、この裁判員制度で本当にいいのか
ゲスト:西野喜一氏(新潟大学大学院教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第332回(2007年08月10日)
見えてきた裁判員制度の危うい実態
ゲスト:保坂展人氏(衆議院議員)

■インタビューズ (2008年11月11日)
人が人を裁くとはどういうことか 作家・高村薫氏インタビュー

■インタビューズ (2008年11月13日)
今の裁判制度のままでは市民の信頼を得られない
一橋大学大学院後藤昭教授インタビュー

■インタビューズ (2008年11月14日)
裁判員制度は現行司法制度の問題を解決できない
梓澤和幸弁護士インタビュー
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-02-02 - 19:16:03
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第407回(2009年01月24日)
無法地帯化する霞ヶ関
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_407_pre.asx

 霞が関の官僚たちは一体何を考えているのだろう。
 先々週の国会では、麻生首相は、既に発効している法律を実質的に書き換えるような政令を閣議決定したことを野党から厳しく追及され、答えに詰まる場面が、繰り返しテレビで放送された。安部政権下での国家公務員法の改正で、省庁による官僚の再就職の斡旋、すなわち天下りが実質的に禁止され、経過措置として3年間は新設される再就職等監視委員会が承認した場合に限り、天下りが認められることになっていた。しかし、ねじれ国会でこの再就職等監視委員会の人事が進まないのをいいことに、麻生政権はその間首相に天下りを承認する権限を与える政令を作ってしまった。国会で成立した法律の本則に反する行為を、法律よりも下位にある政令で可能にしてしまうというのだ。これは明らかに法律違反であり、「霞ヶ関のクーデター」(仙谷由人衆議院議員)と批判されてもしかたがないほどの暴挙だった。
 安倍政権で公務員制度改革を設計した東洋大学の高橋洋一教授は、これを官僚による露骨な天下り禁止法案の切り崩しと説明する。何とか天下りを続けたい官僚たちが、なりふり構わぬ既得権益の防衛に乗り出した結果だというのだ。
 しかし、官僚の権謀術数を知り尽くしている高橋氏は、「このような露骨なやり方は考えられない」と、官僚が利権維持のために法律違反まで犯すようになったことを嘆く。同じく安倍内閣で行政改革担当大臣として公務員制度改革を断行した渡辺喜美衆議院議員も、この政令の撤回を麻生首相に求めたが受け入れられなかったために、自民党を離党している。
 しかもこの政令には、一旦天下りした公務員OBの再就職を斡旋する、いわゆる「渡り」を容認する条項まで盛り込まれており、官僚たちは麻生政権が迷走を続ける間に、天下りを禁じた改正国家公務員法を完全に骨抜きにするばかりか、どさくさに紛れて、これまで法律で認められていなかった行為までも政令に押し込んでしまったようだ。
 それにしても、なぜ官僚はここまで露骨に権益擁護に乗り出さなければならないのか。これまでも官僚は、官僚にしかわからないような独特な霞ヶ関用語を法案の条文や大臣談話に滑り込ませることで、政治家の決定を骨抜きにするなどして、政治を巧みにコントロールしてきた。しかし、今回の政令のような露骨な手法は、これまで例をみない。
 また、仮に民主党が政権の座についても、霞ヶ関をコントロールできなければ、有効な施策を打つことはできない。若い議員が多く、官僚の手練手管を熟知していない民主党に、官僚支配を打ち破ることができるのか。高橋氏は民主党が政権についた時、今回の政令作成に関わった官僚たちを厳しく処分できるかどうかが、最初の試金石になるとの考えを示す。
 官僚たちは単に公共心を失ってしまったのか。あるいは、世論の突き上げで少しずつ特権を失い、いよいよここまでやらなければ、自分たちの権益を守れなくなってきているということなのか。今、霞ヶ関で何が起きているのかを、官僚の世界を裏の裏まで知り尽くした高橋氏に聞いた。
(途中、渡辺喜美衆議院議員の電話出演あり)


<今週のニュース・コメンタリー>

・オバマ大統領が政令第一号に署名

・消費税増税をめぐる国会論戦

・渡辺喜美氏らが政策集団を立ち上げ

・裁判への被害者参加の意味


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド第393回(2008年10月11日)
民主党マニフェストと霞ヶ関埋蔵金
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド第359回(2008年02月16日)
官僚の思い通りにはさせない
ゲスト:渡辺喜美氏(金融担当大臣)

■プレスクラブ (2009年01月13日)
渡辺喜美衆議院議員 離党表明記者会見
投稿者:miyadai
投稿日時:2009-01-25 - 09:41:18
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■マル激トーク・オン・ディマンド 第405回(2009年01月07日)
だから男はみんなできそこないなんだ
ゲスト:福岡伸一氏(青山学院大学理工学部教授)

<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_405_pre.asx

 2009年最初のマル激は、「男はみんなできそこない」という、正月早々穏やかならざ
る話でスタートする。ゲストは『生物と無生物のあいだ』で昨年1月にマル激に登場し
てくれた分子生物学者の福岡伸一氏。
 聖書ではアダムの肋骨の欠片からイブが作られたことになっているし、現代にいたっ
ても、多くの国で男女の社会的な上下関係ではいつも男が上位にいる場合が多い。しか
し、昨年『できそこないの男たち』を著した福岡氏は、生物学的にはどうみても女が人
間の基本仕様であり、男は女を作り変えて(少しできを悪くして)できあがったもので
あることに、疑いの余地はないと言う。しかも、男は単に遺伝子を運ぶため、つまり女
の使い走りをするために、便宜的に作られた動物だと言うのだ。
 これは、生物全体に共通した事実だと福岡氏は言う。たとえばアリマキ(アブラムシ)
は、普段はメスしか存在しないが、秋になり気温が下がってくると突如オスを産み、交
尾をして、寒い冬を越えるために固い殻に守られた卵を産む。しかし、春が来てその卵
から孵るのは、すべてメスだという。つまり明らかにオスは冬を越えるために交尾をす
る必要性から一時的に作られた「遺伝子の運び屋」でしかないということだ。
 人間の場合もアリマキ同様、女が基本仕様となる。受精後、母胎の中で人間は皆、女
としてその命をスタートさせる。しかし、受精後7週間目に、男になる運命の遺伝子を授
かった胎児は、女になるはずだった体を無理やり男に作り替える作業が始まるという。
 このときの無理な作り替えの痕跡が、男の体の方々に残っていると福岡氏は言う。ま
た、平均寿命を見ても、がんの罹患率を見ても、男は女よりも弱い。
 福岡氏は、男が社会を支配している理由は、社会は遺伝子を運ぶこと以外に存在意義
のない男が自分探しの結果作り出した虚構だからではないかとの考えを示す。生物学的
に、女性には「子どもを産む」という自明の存在意義がある一方で、男は女の使い走り
であり、遺伝子の交換により多様性を生むことには貢献するが、自明の存在意義はない。
その男が自らの存在意義を見いだすために作ったのがこの社会である以上、当然そこで
は男が支配的な地位を握ろうとするというのが、福岡氏の分析だ。
 性を決定するSRY遺伝子発見までのドラマや、生物学的に見た男系男子の皇統維持の持
つ意味、科学の専門知識に踊らされないために必要な「科学リテラシー」についてなど、
男がいかにできそこないであるかを入り口に、福岡氏と議論した。


<今週のニュース・コメンタリー>

・「年越し派遣村」問題をどう見るか

・年末番組に見るテレビの現状と今後

・司法制度改革相次ぐ


<関連番組>

■マル激トーク・オン・ディマンド 第353回(2008年01月05日)
生命について
ゲスト:福岡伸一氏(青山学院大学理工学部教授)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第378回(2008年06月28日)
死ぬか殺すかまで若者を追いつめる労働現場の現実とは
ゲスト:雨宮処凛氏(作家)

■マル激トーク・オン・ディマンド 第339回(2007年09月27日)
貧困は自己責任でいいのか
ゲスト:湯浅誠氏(NPO自立生活サポートセンター・もやい事務局長)

投稿者:miyadai
投稿日時:2009-01-11 - 01:23:52
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マル激トーク・オン・ディマンド更新しました

マル激トーク・オン・ディマンド 第402回(2008年12月13日)
WTOと日本の農業政策を再考する
ゲスト:山下一仁氏(経済産業研究所上席研究員)


<プレビュー>
http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki_402_pre.asx




 スイスのレマン湖畔で、日本の農業や食料自給に大きな影響を与える重要な交渉が続いている。WTOのドーハ・ラウンドだ。ドーハ・ラウンドは、関税の大幅引き下げなどをめぐるぎりぎりの交渉がジュネーブのWTO本部で続いているが、早ければ13日にも開かれる見通しだった閣僚会合が、17日以降に延期され、現時点で見通しはたっていない。
 しかし、いずれにしても対立点は絞られてきており、7年に及んだドーハ・ラウンド交渉は、関税の大幅引き下げなど、日本の主張が一顧だにされない、日本にとっては非常に厳しい内容となることが避けられない状況だ。
 農水省でガット室長などの貿易交渉ポストを長年経験してきた山下一仁氏は、コメをはじめとする「重要品目」を関税引き下げの対象から外し、あくまで高い関税で国内市場を守ろうとする日本政府の交渉スタンスを批判する。「重要品目」は高い関税の維持を認めてもらう代わりに、最低輸入義務(ミニマム・アクセス)を受け入れなければならないが、それが結果として必要以上のコメの輸入を拡大させることになり、日本の食料自給率の更なる低下が避けられないとの理由からだ。
 ドーハ・ラウンドが妥結すれば、日本はコメの関税を778%に維持することへの代償として、現在毎年77万トンの最低輸入義務(ミニマム・アクセス)が課せられているコメの輸入を、さらに増やさなければならない。水田の4割を減反して生産量を抑えておきながら輸入量が増えるという、矛盾した結果となるが、多数の高関税品目を持つ日本が関税の引き下げを行えば、そうでなくでも苦境にある日本の農家が大打撃を受けるというのが、政府やJAの主張だ。
 しかし、山下氏は、折からの穀物価格高騰で国際市場でのコメの価格も上昇しており、日本は現在の関税を大幅に引き下げても、輸入米と十分競争していけると主張する。関税引き下げを免除してもらうことの引き替えにミニマムアクセスを受け入れるよりも、競争原理を受け入れた方が、結果的にコメの輸入量が増えないばかりか、将来的にはコメの輸出さえ可能になるというのが、山下氏の主張だ。
 自由貿易の推進を目的に95年に発足したWTOでの決定は、強制力を持つため、加盟国の産業や経済を大きく左右する。農産物や鉱工業品の関税削減などの貿易ルールの合意をめざすドーハ・ラウンドは、今年7月にインドと米国が対立したために決裂したが、9月の金融危機後、自国の産業を守る保護主義への回帰が懸念され、再度合意に向けての調整が行われることとなった。
 日本は工業製品の分野では、自由貿易の恩恵をもっとも受けてきた国の一つであり、WTOにおいても工業製品の分野では一貫して関税の撤廃を推進する立場をとっているが、農業については、コメ市場を守ろうとするあまり、頑なに高い関税を死守する政策に拘泥している。しかし、アメリカやEUが、農家への直接支払いによって国内農業を保護していく政策に転換する中、どうも関税で国内市場を保護する日本の政策は国際社会の中で正当性を失いつつあるようだ。
 もとより工業製品と同じように農業を扱うことはできないが、日本の農業政策は、ともすれば日本の農業を守るというよりも、日本の農協(JA)、そしてそれが代表する兼業農家を守る政策にすり替わっているきらいがある。そして、それを支えているのが、農協、農水省、自民党農水族の「農水鉄のトライアングル」だと、山下氏は説明する。
 現在の日本政府の農業政策は、本気で農業をやろうとする主業(専業)農家のためにも、消費者のためにもなっていないと、農水省の政策を批判し、省を辞職して間もない山下氏とともに、WTO農業交渉から見えてくる日本の農政の問題点を議論した。また、スーザン・ジョージ氏のインタビューなどを通じて、WTOが進めてきた自由貿易の問題点なども再考した。

今週のニュース・コメンタリー
米ビッグ3救済法案廃案
広島県女児殺害事件 無期懲役判決を差し戻し
宮内庁、天皇陛下が「心労」と発表
政局動向
関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第399回(2008年11月22日)
日本農業再生の道
ゲスト:神門善久氏(明治学院大学教授)

マル激トーク・オン・ディマンド 第180回(2004年09月03日)
遺伝子組み換え食品とアメリカの世界食糧戦略
ゲスト:天笠啓祐氏 (市民バイオテクノロジー情報室代表)

インタビューズ (2008年12月11日)
WTOのマイナス面についても評価が必要
NGO「環境・持続社会」研究センター代表理事・古沢広祐氏インタビュー

プロフィール
山下 一仁やました かずひと
(経済産業研究所上席研究員)
1955年岡山県生まれ。77年東京大学法学部卒業。同年農林省入省。82年ミシガン大学大学院応用経済学、行政学修士課程修了。応用経済学、行政学修士。05年東京大学大学院農学生命科学研究科農業・資源経済学専攻で農学博士取得。農水省ガット室長、地域振興課長、食糧庁総務課長などを歴任の後、08年3月農水省を退職。08年4月より現職。現在東京財団上席研究員等を兼任。09年1月に『農協の大罪』(宝島社新書)を刊行予定。
投稿者:miyadai
投稿日時:2008-12-16 - 13:32:06
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