4つ下に掲載した仲正・宮台対談本の資料の続きは、こちらです。
「オン・ザ・ブリッジ」第56回
掲載誌『ダ・ヴィンチ』2005年1月号
漫画家の小林よしのり氏を交えて、サイゾーM2では沖縄論を二回(たぶん)にわたって連載します。
今回は前半が掲載されています。いつもより1頁増。そこでの私の発言のさわりだけ抜粋しましょう。
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宮台■沖縄問題は三つある。第一は「構造的貧困問題」。第二は「島内差別問題」。第三は「本土の犠牲問題」。現実には基地問題に象徴される第三の「本土の犠牲問題」ばかり喧伝される。悪者は本土。本土が悔い改めろと。あり得ない。
第一の「構造的貧困問題」は、スーザン・ジョージが『なぜ世界の半分は飢えるのか』で提起し、ウォラーステインら従属理論家が継承した。豊かになろうとして貧しくなる自発的従属問題です。貧しい国は近代化したい。外貨が必要で換金作物に作付けを替える。国際市場に巻き込まれて買い叩かれる。結局豊かになれない。でも元に戻ろうにも自立経済圏を支えた生態系や社会資本が破壊されている。故に永久に貧困に甘んじるしかないと。
第二の「島内差別問題」。市町村合併がもたらす弊害として現れる。例えば辺野古問題。名護市長がヘリポートを作るなら人口の少ない辺野古が良いと言う。名護市の辺野古は元は久志村。名護市に併合されてさえいなければ村として反対できるのにと地元は悔しがった。小単位が大単位に吸収されると結局しわ寄せを食うという問題です
第三の「本土の犠牲問題」。基地問題に象徴されるが、「犠牲をなくせ」じゃ済まない。昔は「核抜き本土並み」が沖縄返還スローガン。でも返還後の本土並み化で、沖縄は本土と入替え可能な場所になりつつある。沖縄のミュージシャンが自覚するように、琉球・ヤマト・明朝・米国の流れがクレオール化して、琉球アイデンティティーがある。基地は明らかに負の要素。でも単に取り去ると、本土並み化で薄れた琉球アイデンティティーが最終的に死滅する。馬鹿カルスタが想定する「強者が弱者を虐げる」図式じゃ捉えられない。
・・・・・・・・・中略・・・・・・・・
宮台■論壇の馬鹿保守は困りもの。だいいち日米同盟が大笑いだぜ。吉田茂が言うように米国に追従するにしろ「日本を高く売る」のが大切です。それには、まず異論をいい、次に交渉する。当然交渉力が必要ですが、基本は相手が嫌がるカードを持つこと。僕も年来言ってきたし、先日対談した久間章夫自民党総務会長も言うけど、具体的には中国カード。韓国の現政権を支える愛国世論も同じ内容です。
今の沖縄が置かれた状況は戦後日本の縮図。「くに」の自立にはどんな道を選ぶべきか、自立で幸せになるとはどういう中身かが問われてる。明治の日本には亜細亜主義者がいて、富国強兵を目指す単純欧化主義のみでは日本は平らな場所になると危惧した。近代化で自立するにせよ、平らにならない道を選べ。入替え可能性を断固拒否し得るオルタナティブな近代を選べ。この右翼の本義を理解する知能と教養が小泉にはない。琉球の人々も小泉並みの知能と教養じゃ幸せになれないよ。